論文賞 推薦の辞
Monolithically Integrated Wavelength-Routing Switch Using Tunable Wavelength Converters with Double-Ring-Resonator Tunable Lasers
瀬川  徹  ・ 松尾 慎治  ・ 硴塚 孝明 ・ 柴田 泰夫
佐藤 具就  ・ 川口 悦弘 ・ 近藤 康洋 ・ 高橋  亮
(英文論文誌C 平成23年9月号掲載)
 インターネット及び関連サービスの急速な発展に伴い、通信トラフィックが急激に増大しており、電気ルータの膨大な電力消費量が大きな問題となっている。この問題を解決するため、光技術を導入した光パケットルータ及びそれを用いた光パケットスイッチネットワーク(OPS-NW)の研究が活発に行われている。しかし、光パケットルータの実現には、光パケットを光のまま転送可能なN入力N出力型(N×N)光スイッチが不可欠である。これまでにN×N光スイッチに関して多くの研究が行われているが、OPS-NWの要求に対し、高速化、低消費電力化、大規模化、小型化等の多くの課題があった。近年、これらの課題を解決するため、光の波長を利用した波長ルーティング型光スイッチの研究が活発である。
  波長ルーティング型光スイッチは、波長可変レーザと光論理ゲート素子とで構成される可変波長変換器(Tunable Wavelength Converter:TWC)をアレイ導波路回折格子(Arrayed-Waveguide Grating:AWG)に接続することで実現可能である。波長可変レーザは、パケット単位で波長切り替えを行う必要があるため、ナノ秒オーダーの高速性が求められる。また、大規模化のために、広い波長可変特性と発振波長の安定性が要求される。本論文では、筆者らが提案・実証した二重リング共振器型波長可変レーザを採用することで高速性、低電流駆動、広帯域性、波長安定性を実現している。リング共振器は透過型フィルタのため、レーザキャビティを実現するミラー作製技術を開拓している。また、光ゲート素子は対称マッハツェンダ干渉計の両アームに半導体光増幅器を並列配置することで、入力信号光と波長変換光の分離が可能なTWCを実現している。さらに、TWCとAWGを1チップ集積することで2.1×4.8 mm2という超小型な8×8光スイッチを作製し、切り替え時間10 ns以下という高速な1×8波長ルーティング動作を実証している。
  以上のように、本論文の成果は、筆者らの先行研究を発展させて得られた独創性の高いものである。現在の電気ルータが抱えている消費電力やサイズ等の深刻な問題を改善し、経済的で柔軟な大容量ネットワークを実現する技術として高く評価される。

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