論文賞 推薦の辞
対表面照射型比感度12.7倍1670万枚/秒 31万画素裏面照射型超高速度CCD撮像素子
新井 俊希 ・ 米内 淳  ・ 林田 哲哉 ・ 大竹 浩 ・ バン クイク ハリー ・ 江藤 剛治
(和文論文誌C 平成25年7月号掲載)

新井 俊希

米内 淳

林田 哲哉

大竹 浩

バン クイク ハリー

江藤 剛治
 肉眼では捉えられない一瞬の現象を鮮明に撮像することができる高速度カメラの開発が行われている.これらの高速度カメラは,高速現象を撮像しスローモーション映像として再生することができるので,スポーツ中継や科学番組など様々な場面で放送番組に使用されている.これまでに著者らは,最高撮像速度200万枚/秒の30万画素超高速度CCDと,これを用いた単板式超高速度カラーカメラを開発している.超高速度撮像においては1フレーム当りの露光時間が短くなるので,超高速度撮像素子には同時に高感度化が必要である.そこで超高速度CCDの高感度化のため裏面照射型に着目し,裏面照射型を適用した構造について検討している.
 本論文では,表面照射型に比べ感度12.7倍で最高撮像速度1670万枚/秒の31万画素裏面照射型超高速度CCDを開発した結果について述べている.超高速度CCDは,光電変換部と読出し用垂直転送路の間に,1画素ごとに100個以上のCCDメモリを配置した特殊な構造から構成され,全画素一斉の並列記録動作により信号電荷をCCDメモリに記録することで超高速度撮像が可能になる.裏面照射型では,光開口率100%,光利用率向上及び時間開口率100%を実現できるので高感度化が可能であり,表面照射型で遮光膜であった金属層を配線として使用することで配線抵抗低減を実現できるので更なる高速度化が可能である.駆動評価実験の結果,感度は表面照射型に比べ12.7倍であり,垂直解像度は410TV本で画素分離されており,最高撮像速度は1,670万枚/秒を実現したことを確認している.高速度撮像素子の性能指標として使用される画素数と最高撮像速度の積で比較すると,本成果は研究発表時において世界最高性能である.
 以上のように著者らは,超高速度CCDを裏面照射型にすることにより高感度化と高速度化を同時に実現しており,性能指標である画素数と最高撮像速度の積で世界最高性能を達成している.本研究分野の指針の一つと優れた成果を示している点で,当該研究分野の発展に貢献する優れた論文である.

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