論文賞 推薦の辞
MgO : LiNbO3周期分極反転構造電気光学 ブラッグ偏向型一次元空間光変調器
井上 敏之 ・ 栖原 敏明
(和文論文誌C 平成25年4月号掲載)

井上 敏之

栖原 敏明
 本論文では,レーザディスプレイやレーザ描画装置等への応用を目指した,新たなMgO添加LiNbO3・周期分極反転構造電気光学ブラッグ偏向型光変調器を用いた一次元空間光変調器が実証されている.
 電気光学ブラッグ偏向型一次元空間光変調器の構成及び設計について述べられ,高画素密度を実現するために満たすべき画素電極サイズ,電極ギャップ幅,分極反転周期等の条件について考察がなされている.分極反転周期を適切に決定すると画素間隔を小さくでき,画素密度を大きくできることが明らかにされている.MgO添加LiNbO3周期分極反転構造の作製方法,及び変調器作製方法が示され,変調器の基本単位(一次元空間光変調器における1画素分)の変調特性の評価が行われている.青紫色レーザ光変調時に顕著な緩和現象が生じ,周期分極反転構造形成後に600℃の酸素雰囲気中で2時間結晶アニーリングを施すことにより緩和現象が低減できることが独自に見いだされている.青紫色レーザ光変調において最大回折効率97%が達成され,理論効率100%に非常に近い高効率が得られている.またMgO添加LiNbO3電気光学ブラッグ偏向型光変調器を用いた紫外レーザ光の強度変調が初めて実証されている.更に,一次元空間光変調器のプロトタイプの作製が行われ,回折光の一次元光強度パターン生成に成功している.
 以上のように,本論文ではMgO添加LiNbO3周期分極反転構造を用いた電気光学ブラッグ偏向型一次元空間光変調器の設計・作製・評価について非常に綿密に論じられているだけでなく,将来のディスプレイや描画装置等への応用可能性を示す良好な結果が得られており,論文賞にふさわしい成果であると言える.

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