論文賞 推薦の辞
Secret Sharing Schemes Based on Linear Codes Can Be Precisely Characterized by the Relative Generalized Hamming Weight
栗原 淳 ・ 植松 友彦 ・ 松本 隆太郎
(英文論文誌A 平成24年11月号掲載)

栗原 淳 植松 友彦 松本 隆太郎
 秘密分散法とは,秘密を複数のシェア(情報片)に符号化し,シェアの特定の組合せからのみ秘密の復元を許す情報セキュリティ技術であり,分散ストレージシステム等に応用されている.なかでも,線形符号の組から構成できるランプ型線形秘密分散法はシェアのサイズを一定にしたまま秘密のサイズを幾らでも大きくできる利点を有するが,ランプ型線形秘密分散法を符号理論の観点から考察した研究は従来ほとんどなされてこなかった.
 本論文では,まず任意のm個のシェアと秘密Sの相互情報量の最大値が,線形符号のRelative Dimension/Length Profile(RDLP)と一致することを明らかにしている.更に,どのm個のシェアもSの情報を一切与えないmの最大値t1,及びどのm個のシェアからもSの一意復元を常に可能とするmの最小値t2を,Relative Generalized Hamming Weight(RGHW)で正確に表せることを明らかにしている.加えて本論文では,漏えいしたm個のシェアと,ベクトルで表されたSの各要素の任意のα-m+1個の組合せの相互情報量が,任意のmについて常にゼロとなる,秘密分散法の「α強安全性」を山本の定義を拡張して提案している.そして,αの最大値もまたRGHWによって正確に表せることを明らかにしている.
 以上のように本論文は,ランプ型線形秘密分散法に対する符号理論を用いたアプローチを新たに切り開くとともに,Forneyの提案したDLPやWeiの提案したGHWに比べて従来,余り注目されず研究されてこなかったRDLPやRGHWに新たな意味付けと研究の動機付けを提供しており,これらの点から高く評価できる.

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