功績賞 推薦の辞
安田 浩
 安田 浩君は,1972年東京大学大学院工学系研究科電子工学博士課程を修了し,同年,日本電信電話公社(現日本電信電話株式会社,NTT)横須賀電気通信研究所に入所されました.1978〜1979年米国ジェット推進研究所(JPL)客員研究員を務められ,1987年NTTヒューマンインタフェース研究所画像メディア研究部長,1992年NTT企業通信システム本部開発部長,1995年NTT理事・情報通信研究所長を経て,1997年東京大学先端科学技術研究センター教授に就任されました.2003年東京大学国際・産学共同研究センター長,2007年東京電機大学未来科学部情報メディア学科教授に就任され,同年東京大学名誉教授の称号を与えられました.2008年東京電機大学総合メディアセンター長,2011年東京電機大学未来科学部長を経て,現在に至っておられます.
 同君は特にディジタルコンテンツ流通,具体的には画像符号化技術,コンテンツIDとそれを用いたコンテンツ検索・管理保護技術,ネットワークセキュリティ技術,ディジタルコンテンツ作成支援技術等で数多くの功績を上げ,日本のみならず世界の情報通信分野の発展に多大なる貢献を果たしました.
 画像符号化の分野では,後の静止画像符号化標準JPEGや動画像符号化標準MPEGの必須技術となる,複数の予測器から予測誤差最小となる適応予測方式の発明,世界初となるフレーム間符号化方式の開発等,世界最先端の成果を上げました.この業績により1991年に画像符号化の国際標準化組織ISO/IEC JTC1/WG8(現SC29)議長に就任され,JPEG及びMPEG策定の中心的・先導的役割を果たしました.国際標準方式は唯一であるべきとの信念を貫き,国や企業の利害を超えて一切の妥協を許さず統一方式を国際標準として定めた結果,JPEGはディジタルカメラ,MPEG-2はDVDや地上波/衛星ディジタル放送,MPEG-4AVC/H.264はBluray Disk,ワンセグ放送やIPTVに広く用いられ,まさしく世界が統一標準の恩恵に預かっています.
 ディジタルコンテンツ流通の分野では,ネットワーク上での映像配信技術の標準化を推進するDigital Audio Visual Council(DAVIC)プレジデント,コンテンツの健全な流通のための管理・保護を目的としたコンテンツIDフォーラム会長等を歴任し,映像配信ビジネスの立ち上げに大きく寄与しました.また2005年に[(ISC)2]CISSPを取得しセキュリティ専門家としての活動も開始し,内閣官房情報セキュリティ政策会議セキュリティ文化専門委員会委員長等,政府関係の要職を歴任しました.
 これらの功績により,1996年米国テレビ技術科学アカデミーエミー賞(技術開発部門),1998年IEEEフェロー(2010年ライフフェロー),2000年IEEE Charles Proteus Steinmetz賞,2002年情報通信月間総務大臣表彰,2009年紫綬褒章,2013年高柳記念賞など,数々の著名な賞・褒章を授与されています.本会では,1995年業績賞,2000年フェロー,2013年名誉員を授与されています.また,1987〜1988年度編集特別幹事,2001〜2002年度会計理事,2006〜2007年度副会長,更には2011年度会長を歴任され,本会活動の発展に尽力されました.
 以上のように,同君の情報通信分野並びに本会における貢献は極めて顕著であり,本会の功績賞を贈るにふさわしい方であると確信致します.

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