功績賞 推薦の辞
西尾 章治郎
 西尾章治郎君は,1980年京都大学大学院工学研究科博士後期課程を修了し,工学博士の学位を取得されました.その後,1980年京都大学工学部助手,1988年大阪大学基礎工学部助教授,1992年同大学工学部教授,2002年同大学大学院情報科学研究科教授に就任され,現在に至っておられます.その間,大阪大学において,サイバーメディアセンター長(2000〜2003年,及び2013年〜現在),大学院情報科学研究科長(2003〜2007年),理事・副学長(2007〜2011年)を歴任されています.
 近年,電子化された超大量のデータ(ビッグデータ)を社会・経済・文化活動,科学技術・学術振興,更には日常生活等に有効利用するための「データ工学」の研究の重要性が非常に高まっています.この分野において,同君は,急速な発展を続ける情報システム・ネットワーク環境における「データ管理技術」,「データベースモデル化」,大量データからの「データ発掘技術」の三つの重要課題を中心に世界的に顕著な研究業績を上げ,この分野で永年にわたる人材育成を通じて,国際的に活躍する多くの研究者を輩出してこられました.特に,最近のクラウドコンピューティング環境を予見したデータ管理技術,最も強力なデータベースモデルとしての「演繹オブジェクト指向データベース」に関する先駆的な研究など,一貫してパラダイムシフトを先導する優れた研究業績を上げてこられました.その成果の多くは,定説的な概念を覆し,しかも現実システムに立脚した創造性豊かなものであり,データ工学分野の新たな地平をひらくと同時に,実社会における情報システム構築に関わる有用な指針を与えています.
 このような卓越した研究業績に対して,紫綬褒章をはじめ,本会業績賞及び論文賞,情報処理学会功績賞及び論文賞(3度),日本データベース学会功労賞及び論文賞,立石賞功績賞等の表彰を受けておられます.また,本会,情報処理学会,IEEEからフェローの称号が授与されています.
 同君は,本会データ工学研究専門委員長として該当分野の発展に大きく寄与すると同時に,情報処理学会副会長,日本データベース学会会長として国内における情報通信分野の研究振興に多大な貢献をされてきました.特に,本会情報・システムソサイエティと情報処理学会の双方に関わる情報科学技術フォーラム運営委員長として,両会の連携強化の促進に尽力されました.国際的な貢献度も卓越しており,特に,ACM SIGMOD日本支部の創設に尽力され,IEEE Computer Societyデータ工学技術委員会アジア代表実行委員,Very Large DataBases国際会議運営委員会理事をはじめ,多数の著名な国際会議のプログラム委員長,組織委員,プログラム委員,更に,IEEE,ACM等が発行する多くの国際的な論文誌の編集委員を務められました.
 また同君は,文部科学省科学官,日本学術会議会員(第22期情報学委員長),内閣府総合科学技術会議専門委員のほか,文部科学省科学技術・学術審議会関連の多くの委員会・部会の委員,独立行政法人科学技術振興機構研究主監,独立行政法人日本学術振興会産学協力総合研究連絡会議委員などの要職を歴任あるいは現在任務遂行中であり,我が国の電子情報通信分野の研究・教育の振興,産学連携分野の発展に大きな役割を果たしてこられました.
 以上のように,同君の学会活動を含めた電子情報通信分野の発展及び国際化への功績は,極めて顕著であり,本会の功績賞を贈るにふさわしい方であると確信致します.

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