論文賞 推薦の辞 | ||||||||||||
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キャビティ装荷円偏波アンテナは高利得,低サイドローブ,低軸比といった優れた放射特性を有しており,通信用,衛星搭載用アンテナとして広く用いられている.クロスダイポールを励振素子とする従来のキャビティ装荷円偏波アンテナは給電構造が複雑であり,キャビティ底面に実装する円偏波励振回路(90°ハイブリッドや逆相励振回路)の配置に制約があるため,中心周波数以外の励振位相誤差が増大し軸比の周波数特性が劣化するという課題があった. 本論文では,4本のL字型励振素子とキャビティからなる簡易な構成で低軸比かつ広帯域特性を有する円偏波アンテナを提案している.広帯域特性を得る工夫として,L字型励振素子の一部をキャビティの側面に近接配置させて伝送線路とし,インピーダンス変成器として動作させている.これにより,整合回路を新たに設けることなくインピーダンス広帯域化を実現している.更に,L字型励振素子がキャビティの側面近傍に配置されることから,キャビティ底面に設ける円偏波励振回路との接続性が良いという利点がある.この特長を生かし,本アンテナに用いられる円偏波励振回路では,逆相分配回路,90°ハイブリッド,各励振素子の給電点間を接続する線路が全て対称に構成されている.これにより,中心周波数以外での励振位相誤差を緩和し,軸比の広帯域化を実現している.また,L字型励振素子の水平部分から成るモノポールアンテナのアクティブインピーダンスを算出すれば,L字型励振素子の設計パラメータを容易に決定できる点も本アンテナの特徴である. 以上のように,本論文で示されたキャビティ装荷円偏波アンテナは,広帯域にわたって優れた放射特性,インピーダンス特性を有している.簡素な構造で実用上も有効であり,高く評価できる. |
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