論文賞 推薦の辞
Opportunistic Scheduling for Hybrid Network Coding and Cooperative Relaying Techniques in Wireless Networks
単  麟 ・ 村田英一  ・ Sonia AISSA ・ 吉田 進
(英文論文誌B 平成24年5月号掲載)
単  麟 村田英一 Sonia AISSA 吉田 進    
 本論文は無線マルチホップネットワークを対象として,特に双方向通信の総スループットを向上させるために協力中継(Cooperative Relaying)及びネットワーク符号化(Network Coding)を用いる適応的な中継技術を提案している.これは,双方向のトラヒック比やチャネル状態に応じて適応的に中継方式の選択と無線資源の割当を行うものである.
 双方向のトラヒックが対称であればネットワーク符号化技術は協力中継技術の2倍程度のスループットを達成できる.しかし,双方向のトラヒックが非対称なときに双方向通信の総スループットが大きく低下してしまう.本論文では,無線マルチホップネットワークとして送受信局2ノードと中継局1ノードから成る3ノード双方向ネットワークを対象として,協力中継とX-OR(mod 2)演算を仮定したネットワーク符号化の伝送容量について考察を行っている.その結果,双方向トラヒックが非対称であっても高いスループットが維持できるよう,向きが異なる二つの協力中継とネットワーク符号化の3中継方式の中から,瞬時的なチャネル状態に応じて伝送フレーム単位で最適な方式を選択する中継スケジューリング法が提案されている.提案手法は,比例公平性(proportional fairness)スケジューリング法の特徴を生かし,中継方式の選択基準及び双方向トラヒック比の制御パラメータなどに新たな工夫を導入している.また,アルゴリズムの計算量も従来方式と遜色のない効率的なスケジューリング法である.計算機シミュレーションにより,中継局の位置及び双方向トラヒック比が双方向通信の総スループットに与える影響について検討を行った結果,提案手法は非対称トラヒックに対応しつつ,従来方式より高い総スループットを達成できることが示されている.
 このように本論文は,将来の無線マルチホップネットワークの展開にあたって不可欠な適応的な無線資源の割当手法について研究を行い,無線分散ネットワークの性能改善につながる有用な幾つかの知見を与えたものであり,本研究分野の更なる可能性を示している点で,当該研究分野の発展に貢献する優れた論文である.

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