名誉員 推薦の辞
安 田  浩
  安田 浩君は,1972年に東京大学大学院工学系研究科博士課程を修了され,同年日本電信電話公社(現日本電信電話株式会社,NTT)に入社,画像情報通信の研究に従事されました.1987年同社ヒューマンインターフェース研究所画像メディア研究部長,1995年情報通信研究所長を経て,1997年4月に東京大学先端科学技術研究センター教授に着任されました.1998年同大学国際・産学協同研究センター教授,2003〜2005年に同センター長を務められ,2007年4月に東京電機大学未来科学部情報メディア学科教授に着任されました.その後,同大学未来科学部長に就任され,現在に至っております.
 同君は画像圧縮に取り組まれ,適応予測符号化,フレーム間符号化による画像符号化技術について先導的な研究を行われました.また,同技術の応用として,ISDNの2B+Dチャネルを用いたテレビ電話・会議システムの研究開発を主導,ディジタル画像通信の実用化に貢献されました.更にISOにおいて,自ら開発した画像符号化技術を基にした国際標準化に取り組まれ,議長を務めるISO/IEC JTC 1/SC 29から,今日世界中で使われているJPEGやMPEG等,ディジタルメディア普及の礎となる国際標準を生み出されました.これらの標準は情報通信技術による産業の振興に大きく貢献しています.
 同君は更に,ディジタルメディアの流通にも取り組まれ,ATMを用いたB-ISDN等の高速ネットワークにおける映像配信システムを標準化するDAVICのプレジデント,流通の健全性を確保するための管理・保護技術を推進するコンテンツIDフォーラムの会長として活動され,システム構築に必要な技術の開発と普及啓発に貢献されました.また,誰でも映像を制作できるCGアニメーションの自動生成等,コンテンツの創生に関する研究開発を推進されました.
 更にネットワークにおけるセキュリティの分野において,認証やアクセス管理技術の開発に取り組まれるとともに,安心・安全インターネット推進協議会の会長,安心空間コンソーシアムの副会長及び日本スマートフォンセキュリティ協会会長として,同分野における技術開発の推進や提言を行われました.
 省庁との連携では,総務省情報通信審議会専門委員,同省住民基本台帳ネットワークシステム調査委員会座長,内閣府高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部員,内閣官房情報セキュリティ政策会議セキュリティ対策会議委員等としての提言や産官学連携プロジェクトの先導により,情報通信技術の発展に貢献されています.
 本会では,画像工学研究専門委員会委員長,東京支部長,評議員,副会長,会長を歴任され,近年はCEATECと連携したシンポジウム等による学会の活性化,本会の一般社団法人への移行等に多大な貢献をされました.更に,画像電子学会副会長,同会長,映像情報メディア学会評議員などの要職,IEEEにおけるエディタ,数多くのパネルや基調講演等の活動により,学術の発展に大きく寄与されました.
 これらの業績に対し,本会から論文賞,業績賞,フェロー等の各賞,情報処理学会フェロー,テレビジョン学会業績賞,映像情報メディア学会功績賞,高柳記念賞,IEEEフェロー,同Charles Proteus Steinmetz Award,米国テレビ芸術科学アカデミーからエミー賞,セキュリティ分野の貢献で内閣官房長官個人功労賞,総務大臣表彰等を受賞されています.また,東京大学名誉教授の称号,紫綬褒章を授与されています.
 以上,本会並びに国内外の関連学会,国際標準化やコンソーシアム,産官学連携における主導的活動を通じて産業と社会に貢献し,電子情報通信技術の発展に寄与された功績は極めて顕著であり,ここに本会の名誉員として推薦致します.

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