功績賞 推薦の辞
小 柴 正 則
  小柴正則君は,1976年北海道大学大学院工学研究科電子工学専攻博士課程を修了し,同年北見工業大学の講師に任用され,1977年には助教授に昇任されました.1979年北海道大学工学部電子工学科の助教授,1987年には教授に昇任されました.また,2006年から2010年まで北海道大学大学院情報科学研究科の研究科長を務められ,2012年には北海道大学キャリアセンター長に就任され,現在に至っておられます.
 同君は,光ファイバ科学,光エレクトロニクス,ナノフォトニクスなどの分野において,独創的で高精度な数値解析技術を開発するとともに,この数値解析技術を新構造光ファイバや集積光デバイス・回路設計にいち早く導入し,光・電波科学や電磁界理論の分野における新たな学問領域の開拓に大きく貢献してこられました.
 具体的には,波動解析のための有限要素法の高度化に尽力され,携帯電話に必須の表面弾性波デバイスを皮切りに,マイクロ波・ミリ波回路,光ファイバ,光導波路デバイスなど,多くの光・波動デバイスの設計に有限要素法が普遍的に適用できることを実証されました.とりわけ有限要素法の普及に大きな障害となっていたスプリアス解と呼ばれる非物理解の除去法を発見したことは,その後の有限要素法の発展に大きく貢献することになりました.同君が開発されたスプリアスフリーな要素は湾曲境界を有する構造物に対する適合性にも優れているため,特に光ファイバ科学やナノフォトニクスなどの分野において,国の内外を問わず,広く利用されるようになっています.最近では,既存の光ファイバの限界を打ち破る革新的光ファイバの研究開発を推進し,この分野で先導的な役割を果たしておられます.2012年の9月,北海道大学を含む研究チームが,限界とされていた100テラ(100Tbit/s)を上回る1ペタ(1Pbit/s)の世界最高速光伝送実験に成功し,世界的に大きな注目を集めましたが,同君は,この実験で使用された円環状12コア光ファイバの設計を担当し,世界初となる1ペタ伝送の実現に大きく貢献されました.
 同君は,光・電波科学や電磁界理論の分野における新たな学問領域を開拓したパイオニア的存在であり,500編を超える論文を,本会をはじめ,IEEE,OSAなどの著名な論文誌に発表してこられました.こうした業績によって,本会から論文賞(1987年,1997年,1999年),業績賞(2004年)を受賞されるとともに,本会フェロー(2002年),IEEEフェロー(2003年),OSAフェロー(2005年)の称号も授与されています.
 本会においては,エレクトロニクスソサイエティ会長(1999年度),調査理事(2003〜2004年度),光エレクトロニクス研究専門委員会委員長(2005年度),北海道支部長(2008年度),副会長(2009〜2010年度)などを歴任され,本会の発展に尽力されました.また,大学評価・学位授与機構学位審査会専門委員(2001〜2006年),文部科学省科学技術・学術審議会専門委員(2004〜2006年),日本放送協会経営委員(2004〜2007年),日本学術会議連携会員(任期中)などを務められ,専門的立場からの社会貢献にも尽力されました.
 以上のように,同君の本会並びに電子情報通信分野における貢献は極めて顕著であり,本会の功績賞を贈るにふさわしい方であると確信致します.

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