DEWS2002論文集刊行にあたって

ワークショップ委員長:吉川 正俊(奈良先端科学技術大学院大学)
プログラム委員長:横田 一正 (岡山県立大学)


データ工学ワークショップ(DEWS)は,データ工学に関する広範かつ重要な研究テーマを対象として毎年開催されているワークショップです.本ワークショップは,従来より若手研究者による研究の奨励を重要なテーマとしてきました.回を重ねることに本ワークショップの趣旨が浸透し,若手研究者の活発な議論と交流の場として定着してまいりました.今回は,シリーズでは第13回目となり,岡山県倉敷市の美観地区の倉敷国際ホテルで開催されました.参加者数は200名,発表論文は100件を超え,参加者数および一般論文発表件数はDEWS始まって以来の最多の記録となりました.これはデータ工学分野における若手研究者の活動の高まりを象徴するものと考えられます.今回の会場となった倉敷国際ホテルは,倉敷駅から徒歩で10分,新幹線の岡山駅からは電車と徒歩で25分と交通の便がよく,またホテルが市街地の中心地にあり,会議の休憩時間には,美観地区の散策やショッピングを楽しむことができたのではないでしょうか.

プログラム中の一般論文は,これまでと同様,プログラム委員会による審査に基づき編成いたしました.今回も昨年と同様,フルペーパ投稿とエクステンディド・アブストラクト投稿の二つのカテゴリを設けました.論文募集の結果,フルペーパ58編,エクステンディド・アブストラクト62編,両者合わせて120編という多くの論文投稿申込をいただきました.実際に投稿された論文数は,フルペーパ56編,エクステンデッド・アブストラクト56編の合わせて112編でした.今回は,昨年以上にフルペーパの割合が高くなったのも一つの特徴であります(昨年はフルペーパ41編,一昨年は18編).各投稿論文に対して,2名のプログラム委員による査読を行ないました.昨年までと異なっているのは,発表に long (30分),regular (20分),ポスター (5分) の3種類を設け,ポスターは発表以外にポスターセッションの場を設けたことです.ポスター採録論文にも発表の場を設けたのは,若手研究者の奨励の意図からでした.long 9編,regular 72編,ポスター29編の110件の発表論文を採択いたしました.内容的にも,Web,XML,電子商取引,マルチメディア,データマイニング,空間,情報放送,分散環境などを含む,時宜にかない,かつデータ工学の多様な領域をカバーする多くの論文が集まりました.若手研究者が主体とは言え,レベルの高い論文が多く含まれております.また,データ工学の今後の新しい展開が予想できるような注目すべき内容もたくさん見受けられます.今回の新しい試みとして,質問時間を long 15分,regular 10分と,発表時間の半分を割り当てました.これは従来質問時間が不足するという状況を考えて行なったもので,活発な議論が例年以上に行なえたと考えています.今回は発表論文数が多かったため,優秀論文賞と優秀プレゼンテーション賞を各2件選定しました.

一般論文発表に加えて,今回のワークショップでは,招待講演として,アリゾナ大学のBongki Moon教授に XML: New Challenges and Opportunities for DB Research と題した講演をお願いしました.また,チュートリアル講演では,マイクロソフト社の方にWebとXMLに焦点をあてた「.NETアーキテクチャ」を解説して頂きました.さらに,DEWS2001優秀論文賞・優秀プレゼンテーション賞受賞者による「ブロードバンド時代における情報フィルタリング」および「デジタルコンテンツの受動的閲覧と環境適応」に関するミニサーベイも大変興味深い内容でした.パネルとしては,「日本のデータベースコミュニティの今後」と題して,上林弥彦先生(京都大),喜連川優先生(東京大),清木康先生(慶應大),田中克己先生(京都大),西尾章治郎先生(大阪大),増永良文先生(お茶の水大)にパネラーとして参加頂き,そして吉川正俊(奈良先端大)と横田一正(岡山県大)がそれぞれパネラーと司会で加わりました.内容的には「日本データベース学会の提案」など,表題にふさわしいパネルとなりました.また,2日目の夜には,研究成果のデモ展示セッションを開催しましたが,20件近いデモが出展され,懇親会後にもかかわらず,多くの参加者がデモを囲んで熱心に議論を交わしていたのは印象的でした.

会議の準備に当たって,今回の論文投稿はすべて電子的な投稿になりました.今回,投稿件数が多かった要因の一つとして,電子投稿により,締切直前まで論文作成作業ができたこともあるかと思います.実際,全体の投稿の約8割が締切日1日だけで行われています.投稿受付は,電子投稿でのトラブルも考え紙投稿も用意していましたが,実際には紙投稿はありませんでした.電子投稿により,論文査読および編集などの作業においても効率化を図ることができました.また今回は,昨年同様Webによる事前電子論文配付をおこないました.このため,発表者にも電子原稿の事前提出をできるだけお願いするよういたしました.参加者が事前に論文をダウンロードする時間を確保するため,ワークショップ開催の5日前までには電子原稿を提出していただくこととしました.今回は事前の広報が十分であったため,ほぼ100%電子原稿を集ねることができました.

今回から,論文集はCD-ROMの形態で出版することをやめ,ISSNを取得した正規の出版物として電子情報通信学会のホームページの下に置くことにしました.昨年までのCD-ROM同様,招待講演,チュートリアル,ミニサーベイ,パネルも含めた全プログラムをカバーする内容を収録してあります.また,収録した論文原稿は,発表時の質疑などをベースに再度修正をしていただいたものですが,その6割については,発表時のプレゼンテーション資料も収めてあります.ただし写真や動画などは肖像権の関係で収録することができませんでした.正規の出版物となったので,論文等で参照が可能になりました.

第13回データ工学ワークショップを通じて,データ工学研究の今後の進展に有益な様々な成果が得られたと確信しております.また,そこでの最新の成果をこのような論文集としてまとめられましたことは,本ワークショップのオーガナイザとして喜びにたえません.本論文集が皆様方の今後のご研究に役立つことを切に願っております.

最後になりますが,今回のワークショップ開催に際しまして多くの方々にご支援・ご協力をいただきました.招待講演者,チュートリアル講師ならびにミニサーベイ講師の方々には,ご多忙のところ貴重なご講演をいただきました.プログラム委員諸氏,チュートリアル委員長の宮崎収兄先生,パネル委員長の高倉弘喜先生,パネルおよびデモ担当の鈴木伸崇先生,ローカルアレンジメントおよび財務担当の國島丈生先生には,ワークショップの準備と実施に当たり多くの貴重な時間を割いていただきました.電子出版にあたっては劉渤江先生と國島丈生先生には,本論文集の取りまとめ,Webを使った電子論文配付およびアブストラクト集の作成に大変ご尽力いただきました.ここに,心よりお礼申し上げます.また,論文投稿をいただいた研究者各位,ならびに本論文集の編集にご協力いただいた各位に,深く感謝いたします.


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