2021年度電子情報通信学会技術と社会・倫理研究会(SITE研究会)は、数理・データサイエンス・AIの科学と技術にかかわる倫理的・法的・社会的側面(ELSI: Ethical, Legal, and Social Implications)とその教育に関する連続講演およびシンポジウムを実施することとしました。
日常的に生成される大量のデータを収集し分析して価値を取り出すデータサイエンスの研究と実践は、各地の大学で学部・学科・コースが設置されるなど、社会的ニーズが高まっています。一方、2000年代になって、ハードウェア技術の向上によってディープラーニングなどの機械学習が飛躍的進歩を遂げ、社会的応用が進むとともに、研究開発も継続的に進展しています。これらの科学・技術の背景には、統計学的手法の応用があり、数理科学の工学的応用の社会的インパクトはきわめて大きなものとなってきています。
文部科学省は、各大学に対して数理・データサイエンス・AI教育の取組みを奨励し、数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度を開始しました。放送大学は、この動きに対応して、数理・データサイエンス・AI講座を開設し、この分野に関心をもつ受講生のニーズにこたえるだけでなく、大学設置基準19条の解釈によって、上記プログラム認定制度に関心を持つものの、スタッフ等の制約からプログラム実施が難しい大学に対して、同講座を活用してカリキュラムを編成する支援を行い始めています。
技術と社会・倫理とのかかわりに関して研究を行ってきたSITE研究会は、このような社会的なニーズを受けて、数理・データサイエンス・AIを包摂する「データの科学・技術のELSIとその教育」に関して、次のような連続講演・シンポジウムを企画しました。電子情報通信学会員でなくても聴講ができます(有料:前日までのオンライン決済4950円)。会員になると、価格は相当下がりますので(前日までのオンライン決済で3300円)、ぜひこの機会に入会をご検討ください。なお、学生は無料での聴講が可能です(論文のダウンロード権なし)。
SITE研究会2021年度連続講演・シンポジウムシリーズ:「データの科学・技術のELSIとその教育」の第3回目として、来る11月の研究会の企画セッションとして、電子情報通信技術におけるELSIの実践と教育、そしてその橋渡しに関するシンポジウムを開催します。詳細は下記のとおりです。参加費・聴講費などにつきましては、下記をご覧下さい。なお、同研究会は、電子情報通信学会技術と社会・倫理研究会(SITE)/情報セキュリティ研究会(ISEC)/ライフインテリジェンスとオフィス情報システム研究会 (LOIS) の共催です。
本シンポジウムは、人工知能やデータサイエンスなどの電子情報通信技術(ICT)分野におけるELSI(倫理的・法的・社会的側面)の教育と実践、およびその橋渡しについて総合的に検討します。
「第6期科学技術・イノベーション基本計画」において、「ELSI」ということばがキーワードの一つとして登場しました。科学技術論・科学技術政策分野以外では、「ELSI」ということばはやや耳慣れないかもしれません。本シンポジウムは、ICTにおけるELSIをどのように実践し、教育すべきか、そして、その橋渡しをどのように行うか講演とディスカッションを通じて理解を深めることを目的としています。
このシンポジウムでは、実際にELSIの教育と実践にかかわる活動を進めてきた3名の先生方をお招きしてご講演をいただき、議論します。岸本充生先生(大阪大学)からは、産学連携によって企業活動のELSI対応を支援してきたご経験から、大学の企業のELSIの実践への貢献についてご講演をいただきます。浜田良樹先生(旭川工業高等専門学校)には、カードゲームを活用するELSI教育にかかわる話題も含め、科学技術をめぐる合意形成についてご講演いただきます。村上祐子先生(立教大学)には、ディスカッションを活用する大学院レベルの先端科学技術のELSI教育についてご講演をいただきます。
3名の先生方のご講演を踏まえて、ICT分野におけるELSIの教育と実践をどう橋渡ししていくか、ディスカッションを行います。
※聴講には、参加費が必要です。参加費は、会員・非会員等の区別によって変わります。
※各講演の講演時間等、詳細なプログラムにつきましては 、こちらをご覧ください。
趣旨説明・講演(招待講演): 15:30 〜 16:55
17:05 〜 17:30
オンライン懇親会を予定しています。上記の講演申込をいただいた方にはURLをお送りします。
大学における教育プログラムの認定制度の開始など、数理・データサイエンス・人工知能の教育への社会的期待とニーズは高いものである。とくに、学際的分野である「心得」編に関しては、いわゆる文系・理系にまたがる知識・知見が求められることから、どのように教育を行うべきか頭を悩ませる教育関係者も多いかもしれない。
この「心得」が扱う範囲は、科学技術の倫理的・法的・社会的課題--ELSI(Ethical, Legal, Social Issues)と呼ばれる領域と重なる。1990年米国において開始されたヒトゲノム解読計画で、はじめてELSI研究プログラムが設けられた。ヒトゲノム解読計画のなかでは、研究計画全体の3%~5%の予算が与えられることとなった。
こののち、ナノテクノロジーや脳科学、コンピュータ科学など、人や社会、自然環境への影響が懸念され、その規制や方向づけが問題となるテクノロジーのELSIについて、テクノロジーの研究開発と併せて、考察・検討が行われてきた。
データサイエンスや人工知能にも、さまざまなELSIが存在する。たとえば、その使い方によって人々の差別や偏見を増幅する可能性があるほか、人々の自由な選択を阻害したり、その選択の前提となる世界の認識をゆがめたりする危険性があることが知られている。また、自動運転車のように、人間の制御の手を離れて、機械が社会の中で自律的に作動するとき、その結果生じた危害の責任は誰が負うかという問題も議論が継続している。上記の数理・データサイエンス・AI教育プログラムの「心得」編では、こうした問題が扱われることが期待される。
ところが、身の回りを見ると人工知能やデータサイエンスを応用した製品やサービスがすでに社会に多く出回りつつあることがわかる。自動運転はまだ十分な自律性を有した製品・サービスは一般に登場してはいないものの、人工知能やデータサイエンスを応用して人間の選択を支援する、つまり人間の選択に影響を与えるサービスはすでに数多く存在し、学習データの性質によっては、その選択におけるバイアスや差別を増幅する可能性が常にある。これは、有名ICT企業における採用面接によるバイアス問題などで、一般によく知られている。
そうすると、大学教育に限らず、初等中等教育における人工知能・データサイエンスのELSI教育もすでに必要な時代に突入したと考えてよいだろう。
本シンポジウムでは、放送大学の数理・データサイエンス・AIリテラシー講座「心得」編の2人の講師に加え、初中等教育における人工知能のELSI問題に取り組む論者を迎えて、初中等教育および大学教育において、データサイエンス・人工知能のELSIについて何をどのように教育すべきかを考察する。
電子情報通信学会技術と社会・倫理研究会(SITE研究会)は、2021年度電子情報通信学会連続講演・シンポジウムシリーズ「データの科学・技術のELSIとその教育」として、一連の講演・シンポジウムを開催してきました。
このシリーズの最終回として、本シンポジウムは、人に由来するデータを扱う科学として発展しつつある電子情報通信技術の倫理的・法的・社会的問題について、広い分野から識者を集めて議論・検討することを目的とする。
電子情報通信技術の発展と社会的浸透にともなって、従来の質問票調査によらずとも、さまざまな手法で人由来のデータを入手できるようになりつつある。たとえば、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)などのインターネット上のコミュニケーションの痕跡を取得して分析したり、モノのインターネット(IoT)の発展と普及によって、行動や身体的・心理的状態に関するデータを直接人から取得したりすることが可能となっている。医療データの社会的活用に関しては、医療費のコストダウンに加えて、生活習慣病や遺伝的基盤を有する病気の治療やケアへの活用のため推進されつつある。これらのデータは、機械学習(いわゆるAI)の学習データとして活用させることで、医師の診断支援やセルフメディケーションへの活用も期待される。
ところが、こうした人由来のデータの取得・保存・利用活用には、広く法的・倫理的・社会的問題が存在することが知られている。医学生物学分野における人を対象とする研究は直接身体的・精神的侵襲が懸念され、その倫理や規制は、ニュルンベルク綱領以来着実に整備が進んできた。また、心理学や社会学、歴史(オーラルヒストリー)、文化人類学などの人文・社会科学分野の研究においても、人由来のデータの不適切な取扱いによる心理的・社会的危害の問題は指摘され、その対応が行われてきている。個人情報保護法や著作権法などの法的対応だけでは、十分な研究対象者・被験者・関係者の保護ができないことも知られてきた。医学生物学や心理学の研究倫理を厳格に適用した場合、社会科学的研究の実施が困難になる可能性も指摘されている。
そうすると規制を厳格にする、研究倫理が整備された分野の規制をほかの分野に転用して適用するだけでは研究が不可能になる可能性がある一方で、ELSIに関する配慮のない研究は被験者や研究対象者・関係者に社会的利益や彼らが得られる利益を上回る苦痛・苦悩を与える一方的なものとなったり、社会に対して思わぬ悪影響を与えたりする可能性がある。身勝手な研究推進は、研究対象者や公衆の信頼を失うことで、結果として研究資源の獲得・確保に支障をきたして研究を実施することができなくなる可能性がある。研究におけるELSIへの配慮は、健全な研究を実現し、研究分野に対する広く社会の信頼を構築・維持し、持続可能性がある健全な研究環境を整備するためにも不可欠のものとなっている。
本シンポジウムは、上記のような状況に照らして、幅広く現代における電子情報通信技術分野における人を対象とする研究に関して、そのELSIと教育に関して考察をする。 放送大学数理・データサイエンス・AI講座の「心得」編の講師陣に加えて、医療データの活用や、インターネット研究倫理ガイドラインにかかわる倫理・法の専門家を迎えて、総合的に、人を対象とし、または人由来のデータを研究する数理・データサイエンス・AIのELSIとその教育について、総合的に考察・議論を行う。
聴講には、参加費が必要です。参加費は、会員・非会員等の区別によって変わります。
各講演の講演時間等、詳細なプログラムにつきましては 、こちらをご覧ください。