フェロー記念講演報告・総合大会企画
総合大会「VLD フェロー記念講演」報告(VLSI設計技術専門委員会 幹事 石浦 菜岐佐 (阪大)) |
渡部和先生 (創価大学), 白川功先生 (大阪大学), 大附辰雄先生 (早稲田大学) が, 昨年10月に本学会フェロー称号を受けられたのを記念し, 2001年の総合大会の一企画として, 3月27日(火) 午後に記念講演を開催させて頂きました.
三先生とも, 多岐にわたる話題で, その含蓄の深さは圧巻でしたが, それゆえ に, 御講演内容やその意図を正確に報告することは, 極めて困難となってしま いました. そこで本文は, 御本人の目に触れることがないことを祈りつつ, 「一聴衆として私はこう感じた」という観点でまとめさせて頂きましたので, どうぞ御了承下さい.
「設計は, いずれも欠くことのできない三要素: 理論, 設計手法, そして道具 より成る」ことを, 先生の, 櫨波器の設計, トランジスタ論理回路の設計, LSI の回路設計等の現体験を通じて紹介され, 他ソサイエティに対してこの三 要素を提供し, 横断的に支える場を提供するのが基礎・境界ソサイエティの役 割であると結ばれていたと思います.
理論と実設計が必要というお話は多くの方が話しておられます. しかし, 「道 具」がそれにもまして不可欠という視点が, 私には大変新鮮でした. 特に, 「設計のために優れた道具を開発したことによって, 他の人にはできない研究 成果を次々に上げることができた」あるいは「普通のエンジニアはモノを作り, 優れたエンジニアはそのための道具を作る」というお話は大変印象に残り, 自 分達の研究もそのような視点から一度見直してみるとどうなるかと考えさせら れました.
白川先生が最近産学連携のベンチャーを起業されたことは, 多くの方がご存知 だと思いますが, 今回は, このベンチャーを興すに至った背景を, 半導体産業 の世界動向, 設計技術の変革, 情報家電の需要, 大学の体制, のみならず産業 構造や社会システムの変化にまで踏み込んでお話頂きました.
今回じっくりお話を伺い, 先生が「たまたまある筋道で考えてこのベンチャー に至った」のではなく, 産業構造の変化, 設計手法の変革, 情報家電の動向, 大学における学生の現状等々, 全ての背景を考えると「必然的に導出される解 がこのベンチャーであった」のではないかということが, 今回初めて見えて来 たように思いました. 恥ずかしながら.
それもさることながら, IP (Intellectual Property; 設計資産の再利用を意 味) は実は ``Intense Pain,'' Plug \& Play は ``Plug \& Pray,'' 「収穫 逓増原理」, 「オセロの法則」等の色々な小さな話題も面白く聞かせて頂きま した.
大きく 3 つのお話を頂きました. 一つは, 非線形抵抗回路の解析に関する研 究の回想で, 解の存在の証明と, 収束を保証した求解アルゴリズムの話題を, 藤澤先生の思い出も交えてお話頂きました. 二つ目回路網理論の立場から見た 電子回路の基礎教育に関する考察で, 三番目は回路とシステムの研究分野の過 去, 現状と展望でした.
最後のお話は, 私には少々ショッキングに感じられました. 1960年までは RLC 回路構成論やアナログ通信技術が主流の中, 日本人研究者も多く活躍して いたが, CMOS VLSI やディジタル情報通信技術が主流となった現在では, 学会 でも「non-author participants$\cong$ 0」という状況で, クロストーク等の いわゆる「deep sub $\mu$ の問題」も複雑な微分方程式の魑魅魍魎となり, 回路理論の復活には結び付いていないとの分析です. 将来展望としては, microlithography の限界が訪れる時のの二つのシナリオ披露されました: 一 つは, 三次元化などの集積技術の工夫により集積化が依然続く場合で, この場 合には, 回路理論は復活しないだろうとのこと. 一方, 分子レベルの計算素 子や量子計算が発展する場合には, 再び回路理論が脚光を浴びるだろうとのこ とでした. 私自身, 回路理論を直接研究しているものではありませんが, やはり, 見たい将来はシナリオ 2 だと思いました.
当日の出席者は 100 人を越え, 大変盛会でした.
長時間の講演は御準備が大変と考え, お一人 45 分とさせて頂いたのですが, 三先生とも, 持っておられる話題が質・量とも豊富で, 時間の方が全く不足し てしまいました. フェローの先生には, 一つの小さな話題からも多くのコメ ントや裏話をお話し頂けますし, またこの部分に格別の面白さがあります. 今 後, このような講演を企画させて頂く際には, 時間は (こっそり) 多めに準備 させて頂くべきと思いました.
最後になりましたが, お忙しい中にもかかわらず御講演を頂いた渡部先生, 白 川先生, 大附先生, どうも有難うございました.