日本技術者教育認定機構(JABEE)対応委員会発足についてJABEE対応委員会幹事 牧野 光則 (中央大) |
1998年11月19日に日本技術者教育認定機構(Japan Accrediation Board for Engineering Education, JABEE)の設立総会が開催され, 正式にスタートした. 電子情報通信学会は他の学会と同様に安田会長が設立発起人として参加すると 共に, 正式発足後は理事として運営に加わっている. 本会では従来より「国際 的に通用するエンジニア教育」資格検討委員会(委員長:秋山稔(芝浦工大), 幹事:篠田庄司(中大))を設置し, 検討を進めてきた. JABEEの正式発足に合わ せ, 日本技術者教育認定機構(JABEE)対応委員会(委員長:秋山稔, 副委員長: 篠田庄司, 幹事:2名, 委員:11名, 顧問1名)に改組し, 現在に至っている.
JABEEは何をするのか?
JABEEは, 「統一的基準に基づいて高等教育機関における技術者教育プログラ ムの認定を行い, その国際的な同等性を確保するとともに, 技術者教育の向上 と国際的に通用する技術者の育成を通じて社会と産業の発展に寄与する」こと を目的としている(JABEE定款第3条より). この目的を達成するために, 技術者 教育プログラムの(1)認定作業, (2)審査基準の策定, (3)認定事業に関する普 及・啓発, (4)認定に関する調査・研究, (5)審査に当たる専門家の養成, (6) 認定に関して海外への情報発信, (7)ワシントン協定に関する連絡と調整, を 行うこととなっている. 特に(1)(2)では, 対象プログラムに設置されている科 目をチェックするだけではなく, 対象プログラムを通じて国際的に通用する技 術者として必要な能力が身に付く教育が継続的になされているかを重視する見 込である.
JABEEで電子情報通信学会は何をするのか?
JABEEは大学・短大・高専から申請があった工学系のプログラム(学科単位とは 限らず, 学科横断的なプログラムや, 1学科で複数プログラムを申請可能)に対 して, 審査を担当する学協会を選定・依頼する. 当該学協会からは審査団を派 遣し, 書面・現地審査の上JABEEに報告する. JABEEは報告をもとに最終認定結 果を申請大学等に通知する. すなわち, 本会は電子情報通信分野のプログラム に対して, 審査・認定に必要な基準の作成ならびに審査員の養成・派遣の実質 的部分の担当が予定されている.
本会ではJABEEの正式発足前からこの問題に取り組んでおり, 1999年総合大会 において, 大会委員会企画「国際的に通用するエンジニア教育の現状紹介と諸 問題」を開催し, JABEE設立に向けた動きの紹介, アメリカにおけるComputer Science教育プログラムの審査・認定の取り組みの報告などを受け, 活発な質 疑が交わされた. また, 先日の2000年総合大会では, 大会委員会特別企画「国 際的に通用する技術者教育---日本の大学は生き残れるか?」と題して, (1)JABEEの現状, (2)本会の取り組み状況, (3)電子情報通信分野のカリキュラ ムの検討状況, の3点が報告された(本稿は大会前に執筆しているので, 大会の 状況は別の機会に報告したい).
今後の予定は?
2000〜2001年度の2年間は試行期間と位置付けられている. すなわち, 審査基 準案の策定, 審査員の養成, 協力校にお願いして実施する審査・認定の試行, を行い, 2002年度からの本格実施に備える. 本会ではJABEE対応委員会を中心 に準備を進めており, 本会の担当予定分野で2000年度中に2プログラム程度の 試行が予定されている.
また, JABEEは本格実施に合わせて, 技術者教育プログラムの国際相互認定協 定であるワシントン協定(Washington Accord, WA)への加入を計画している. WAには現在, 米国(ABET), 英国(Eng.C), カナダ(CEAB), アイルランド(IEI), ニュージーランド(IPNZ), オーストラリア(IEAust)の6ヶ国の技術者教育プロ グラム認定機関が加入している. JABEEはABETから担当者を招いて審査員養成 等も計画している. 加入へは言語の問題等課題が多いが, JABEEの試行はこれ を意識して行う予定である.
また, JABEEにより認定されたプログラムを修めた学生は国際的に通用するエ ンジニア教育を受けていることが保証されるが, 本人がそのようなエンジニア かどうかは資格で証明する必要がある. 現在, APECでは地域内の技術者資格を 相互承認することで, 地域内に通用するAPEC Engineer資格の創設を準備中で ある. 日本では「技術士」制度を改革することで対応する模様であるが, 本年 2月23日に技術士審議会(科学技術庁長官の諮問機関)が答申した「技術士制度 の改善方策について」によれば, JABEE認定プログラム修了者に対して一次試 験の学科試験の免除等の優遇措置が検討事項とされている.
その他の外部評価機関との関係は?
学位授与機構がこの4月より「大学評価・学位授与機構」に改組され, 国立大 学等の外部評価を行う予定である. これに対してJABEEは民間の評価・認定機 関であり, 直接の関係はない. 外部評価機関が複数存在することは, 審査を受 ける大学等にとって困惑と作業の煩雑化が予想されるが, JABEEはあくまでも 「国際的に相互承認可能な技術者教育がなされているか」の観点から審査・評 価を行う, とのことである.
紙面の都合でJABEEならびに本会の取り組みを十分紹介できないのは残念であ る. JABEEのホームページが, http://www.jabee.org/ にあるので是非ご覧頂 きたい. また, 本会におけるJABEEに対応する活動は大会等で折にふれ紹介・ 報告できるものと思われるので, 今後にご注目頂きたい.
電子情報通信学会ならびに会員はこれまで電子情報通信分野に対して主に研究・ 開発・規格の面で重要な貢献をされてきた. 今後はJABEEへの対応や, 小・中・ 高生への実験教室等を通じて教育面にも関与することになる. 当該分野の学科 や卒業生が活躍する企業数が多いことは, 教育が本会活動の新たな重要な柱に なることが予想される. これまで以上に会員諸氏のご協力をお願いしたい.