速報
第12回 回路とシステム(軽井沢)ワークショップ奨励賞授賞者発表実行委員長 田口 亮 (武蔵工大) |
第12回 回路とシステム(軽井沢)ワークショップ(主催:システムと信号処理サ ブソサイエティおよび非線形問題研究専門委員会)実行委員会では, このたび奨励賞 授賞者を選出致しましたので発表・報告させて頂きます. 皆様方もご存知のように, 本ワークショップは若手研究者の研究発表を通じた交流 の場であり, 若手研究者の研究への意欲, 動機付けをさらに高める場でもあります. その主旨を遂行するための一つの方策として論文発表を行った若手研究者の中から特 に優れた方々を奨励賞として選出しております. 本年も実行委員会におきまして厳正 に選考を行い6名の方を選出致しました. 以下に, 6名の方々を研究概要(推薦文)と 共に紹介させて頂きます.
渡辺 貴之(静岡大): FDTD法による3次元形状配線の時間域モデル化手法の高速化 微細デバイスのLSI設計や高速プリント基板設計で問題となる電磁現象を解析する ための高周波配線シミレータを, FDTD法に基づく線路の高精度なモデル化手法を 発展させ, 実用化に近いレベルで構築している. 本論文は, 講演者らの提案にによる 高速化技法をより一般化したものであり, 継続的な研究努力の成果である. 今回提案 された手法では, 配線モデリングの前提と結論に至る過程に無理がなく, 単純な方法 で大きな効果が得られている点で大きく評価できる. 提案法の効果を検証するための 例題の説明もわかりやすく, 今後の展開にも期待が持てる. 本技術の有効性, 完成度 はともに高く奨励賞にふさわしい内容である.
田村 貴裕(宇都宮大): 微小高調波外力印加によるTaming Chaosのメカニズム
カオスの制御・抑制を実現する手法の一つに, 微少高調波外力によるTaming Chaosが
ある. これは非自律系の周期外力に微少高調波を重畳することで, カオス軌道を周期
軌道に安定化するものである. 数値実験によるTaming Chaosの検討は海外で活発に行
われてきたが, その抑制メカニズムは解明されず, Taming Chaosを応用する上で大き
な障壁となっていた. 本論文では, 独自の回路に発生するカオスの消去メカニズムを
1次元マップで詳細に検討し, Taming Chaosの正体がサドルノード分岐であることを
理論的に証明している. このように本論文の内容は世界的にも注目される可能性を有
しており, かつ発表方法も申し分なかった. 以上より, 本講演は奨励賞に値するもの
と考え, ここに推薦する.
弓仲 康史(群馬大): スペクトル拡散を用いた高効率情報伝送に基づくVLSIシステム
通信分野で用いられるスペクトル拡散技術をVLSIシステムに応用するもので, 画像処
理LSI内部の, 雑音の多い帯域制限された伝送路環境において高品質な画像データ伝送
を可能にする技術として, 本手法の有用性を示している. さらに電子透かしへの適用
でもその実用性を示した. 講演及び質疑応答は, メリット/デメリットを明確にしたわ
かりやすい説明で行われた. 情報処理の新しい分野を創造し得る将来性豊かな内容で
あり, 奨励賞にふさわしい論文である.
土井 章充(広島大): 特異値分解を用いた複素係数3次元FIRフィルタの最適設計法 本論文では,動画像処理などに有効な複素係数3次元FIRフィルタに対して,煩雑な計 算を必要としない最適設計法について,提案している.3次元FIRフィルタの設計にお いて,計算量の削減は大きな問題であり,これを解決している点は評価できる.また ,準等リップル設計への拡張を示唆している点も興味深い.講演も理解しやすいもの であり,質問に対して的確な対応を行っていた. 以上より,本発表は奨励賞に値する ものと考えられる.
伊藤 真紀子(阪大): マイクロ動作記述からの合成可能パイプライン・プロセッサHDL記述生成手法の提案 本論文は, 命令形式とリソースの定義および各命令のクロック単位の動作記述から, 論理合成可能なプロセッサのVHDL記述を生成する手法について提案している. 動作記 述にパイプラインプロセッサモデルを組み合わせることで, プロセッサ設計に必要な 解析を容易にしており, 実現性が高い手法である. 実用アーキテクチャを使った実験 でも本手法の効果が実証されており完成度も高い. 発表も明確でわかりやすく, 質疑 応答も的確であった. 短期間でのプロセッサ開発への道を開く研究として今後の展開 が期待でき, 奨励賞に十分に値する論文としてここに推薦する.
磯部 祥尚(電総研):プロセス代数における最小不動点 著者らによって提案されたプロセス代数μLOTOSを仕様記述に用い, 複数の仕様の無矛 盾性の直接的検証, 合接仕様の直接的合成の方法を考察している. 従来の方法に対す る本手法の優位性が明確に示されている. 柔軟に記述された仕様を満たすプロセスの 自動生成について今後の発展が期待できる独創的で興味深い研究であり, 発表もわか りやすく質疑応答も的確であった. 以上の理由より奨励賞にふさわしい研究発表である.