ソサイエティ大会 パネル討論報告

パネル討論「高齢社会を豊かにする情報システム」報告

仲谷 美江 (福祉マンションをつくる会)

 ヒューマンコミュニケーション基礎研究会では、高 齢者問題に対する社会的感心の高まりを受けて, 上記 テーマでパネルディスカッションを企画しました. パ ネルでは, 介護現場の第一線で情報化を進めている研 究者, 開発者の方々から, 福祉情報化の考え方やシス テム構築のポイント, 課題について講演していただき ました. 各パネラーの講演内容を以下にまとめます.
・生田 正幸 (龍谷大学)
 福祉は人間の手で行うもの, 情報化システムは業務 を効率化するためのもの, と考えられがちです. しか し, 福祉サービスを提供するときには, ニーズ情報と シーズ情報を最適にマッチングすることが重要になっ てきます. 福祉の情報化を考えるとき, コンピュータ 化することよりまず, 情報を活用するための組織のあ り方, 業務のあり方, 人間のあり方について考える必 要があります。
・須永 誠 (東京都社会福祉協議会)
・大平 正博 (象印マホービン株式会社)
 お二人は, 一人暮らしの高齢者を電気ポットで見守 るシステムを開発しました. 多くの監視システムは異 常を発見する方式で, その通報のほとんどが誤報です. この電気ポットシステムは, 異常ではなく日常の利用 状況をモニタし, 長期間利用されていないと様子を見 に行く仕組みになっています. このようなアプローチ は使用感がなく, 誤報も少なく, 高齢者に受け入れら れています.
・石川 治江 (ケアセンターやわらぎ)
・白石 昌二郎 (情報環境デザイン株式会社)
 お二人で協同で開発されたケアスタッフ支援システ ムは, 従来の業務支援システムやケアプランシステム と異なり, ユーザ主導で開発された典型的なユーザ参 加型設計です. ケアスタッフが時間をかけてデータを 構造化し, 業務分析して作り上げたもので, 計算機で も紙でも同じ作業ができ, 併用できる柔軟なシステム になっています. ユーザが設計に関わることで, 計算 機と人間がうまく役割分担できるシステムになってい ます.
・仲谷 美江 (三菱電機)
 公的介護保険によって, 利用者主体のサービスにな ると言われていますが, 介護の情報や知識はまだま だ普及しておらず, 一般の人が介護サービスを適切に 選択, 評価することは難しいことです. ここでは, い くつかの質問から利用者のニーズを診断し, サービス 内容をアドバイスするシステムを紹介します.
・伊藤博之 (日本IBM)
 日本全国の介護サービス情報ネットワークを構築し ています. 中央サーバと地方サーバを用意し, 全国共 通情報の上に地域性をのせることを特徴としています. 情報は各自治体に公開し, 地域特性をいかした利用が なされています.
 今回のパネルは介護現場でのエピソードを交え, 密 度の濃い, 示唆深い内容となりました. 上にあげた情 報化のアプローチは, 福祉だけでなく人間支援の様々 なシステムにあてはまるものです. 技術者は, 生活者 の視点に立つことが重要と考えさせられました.
 福祉は, もっとも電子化の遅れた分野と言われてき ましたが, 公的介護保険は社会保険として初めて, 情 報システム導入が前提になっており, 今後急速に情報 化が進み, 通信技術, 計算機技術の出番がもっと増え てくることが予測されます.