嵩 忠雄先生のシャノン賞受賞

菊野 亨 (阪大)

シャノン(Claude E. Shannon)先生のかの有名な 論文「A Mathematical Theory of Communication」が 1948年の BSTJ (Bell System Technical Journal) に掲載されてから50年になるというので,昨年は電子情報通信学会 においても本誌10月号で特別企画``情報理論50年の歩みと21世紀への展望 --- シャノンから50年 ---''が組まれました.この特別企画と同時進行で, IEEEの情報理論ソサイエティから1999年シャノン賞が嵩 忠雄先生 (大阪大学名誉教授, 奈良先端科学技術大学院大学名誉教授, 広島市立大学教授)に授与されるという 喜ばしい ニュースが情報理論国際シンポジウムに出席中の今井秀樹先生(東京大学教授) から届きました.

(1)シャノン賞

この賞は情報理論の創始者であるシャノンの 業績を称えて,IEEEの情報理論ソサイエティが1973年に創設したもので, 同ソサイエティ最高の賞であります. 第1回目の受賞者はシャノン先生です. 各年の受賞者は高々1名で,嵩忠雄先生は21人目の受賞者です. これまでの受賞者はほとんどが米国人で,アジアからは初めて の受賞となります.

(2)嵩 忠雄先生の業績

シャノン賞は情報理論に対する長期間一貫した深い意味のある貢献 (原文では consistent and profound contributionとなっている) に対して授与されるものです. 今回は次のような貢献が高く評価されての受賞であると聞いております.

・符号理論 … 線形符号の重み構造の解明,バースト誤り訂正符号の構成, 巡回符号の復号法の考案など.

・形式言語理論 … 文脈自由言語の認識アルゴリズム(CYKアルゴリズム) の開発, 文脈自由文法の部分クラスの解析複雑度の解明など.

(3)授与・記念講演

正式には,2000年6月の最終週に,イタリアのソレント市で開催される 次回の情報理論国際シンポジウムで,シャノン賞 の授与ならびに嵩先生による記念講演が 行われます.

(4)受賞決定記念講演会

嵩忠雄先生シャノン賞受賞決定記念講演会が昨年12月1日に 大阪大学コンベンションセンターで開催されました. 本講演会の主催は大阪大学大学院基礎工学研究科, 大阪大学大学院工学研究科, 奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科, 広島市立大学情報科学部で, 協賛としてIEEE東京セクション,電子情報通信学会, 情報理論とその応用学会,澪電会が入っています.

講演会では先ず, 今井秀樹先生と小林欣吾先生(電気通信大学教授)からの祝辞があり, 引き続いて藤原融先生(大阪大学教授)による 「衛星通信向け符号化技術」と題する基本的な解説, 尾上孝雄先生(大阪大学講師)による 「衛星通信向けVLSIの設計」と題する実用的な解説がありました. 最後に,嵩忠雄先生が「冗長の利用技術」と題する講演を行われました. 講演では,「冗長」という考え方が衛星通信などの現代科学の最先端の分野で極 めて重要な役割を果たしていることが,具体的な事例を挙げて述べられました. 講演のまとめで,一般の大規模情報処理系について その利用効率と信頼性とのトレード・オフ関係に基づく興味深い提言もなされ ました.

約400人の参加者からは,講演中にも熱心な質問が飛び交い,終始和やかな雰囲気で 約4時間の講演会が終了しました. 嵩先生の人望がうかがえる講演会でした.

最後に,執筆の機会を与えていただいた基礎・境界の ソサイエティ編集委員長の笠原正雄先生, 同編集委員会幹事の石浦菜岐佐先生に深謝致します.