信学英文論文誌の参照の仕方

今井 浩 (東大, 英文A論文誌編集幹事)

基礎・境界ソサイエティの英文A論文誌については,

IEICE Trans. Fundamentals
が正しい表記法であることを今一度ご認識頂き, 幅広くさまざまなジャーナル でこの略称を定着化させ, 英文A論文誌の認知度を上げることにご貢献頂けれ ば幸いである.

論文の参照の仕方は, 論文データベース・オンラインジャーナルの充実ととも に, 従来よりさらに重要になりつつある. 本稿では, 関連した話題として Journal Citation ReportsのImpact Factorにも触れながら, 信学英文論文誌 参照に関するお願いをしたい.

まず, 簡単に論文誌のソサイエティ制度のもとでの位置づけに触れると, 現在 の信学ソサイエティ制のもとでは, 基礎・境界ソサイエティの発行する和文・ 英文論文誌を購読することが, 即基礎・境界ソサイエティに属することを意味 し, 論文誌はこの点でソサイエティの顔であり, これまでにソサイエティ会員 を中心としたサポートで着実な発展を遂げてきた.

特に, 英文論文誌については, 1991年1月に信学英文論文誌が4分冊に分かれ, 1992年からは実際に各分冊が独立な印刷雑誌として発行されるようになって以 来, 歴代編集委員会が基礎・境界ソサイエティ様々な企画・研究促進を行って 信学英文論文誌4誌の先頭を切ってきた. このような活動の結果, 英文論文誌 投稿数は増大して特集号への投稿も含めた全体では和文論文誌以上の投稿数に なっている. 掲載数でも, 近年では年間約300の論文が掲載されている. また, 英文論文誌として国際化も着実に図られつつあり, 通信ソサイエティ論文誌な どと同じく海外からの投稿数が増加しており, その数がRegular Sectionでは 半数を越える勢いにある. Special Section (特集号)については, 国際会議を 母体にした特集号があることも特徴である.

英文論文誌の特徴の1つは、もちろん国際性にある. その国際性から, 英文論 文誌は全世界の英文論文誌と比較されることになる. 昨今では, アメリカの ISI社などのデータベース構築により, 論文の参照に関するデータベースも整 備され, それを活用して論文誌に掲載された論文が他の論文からどれくらい参 照されたかで, それを論文誌の活動状況の1つの指標としようということがさ れている. その1つがImpact Factorと呼ばれるもので, ISI社のJournal Citation Reports 1997年版では, 各論文誌について1995, 1996年(前2年)に発 行された論文が, 1997年(当該年)に発行された多くの論文誌(ISI社が対象とす る論文誌すべて)で平均何回されたかという指標である. 信学英文Aの場合を式 で書くと,

論文参照数 A:
信学英文A論文誌1995, 1996年に発行された論文が1997年発 行された全論文で参照された総数) 33+22=55,
総論分数 B:
1995, 1996年に英文 A に掲載された 論文数 = 291,
Impact Factor = A/B = 0.189
となる. 信学英文4誌の1997年までの4年分の数値を上げると, 表 1 のようになっている. ただ, この数値にはどう考えてもおか しい数値が含まれており, また後に述べるようにこれらの値が実際の値よりか なり小さくなっていると思われる. 英文Aについては, 1994年頃の数値は分冊 の影響できちんとした数字になっていないと思われ, 1996年頃からの値が改善 されたものになっているが, 問題点はまだある.

表 1: Impact Factorの推移

1994199519961997
IEICE Trans. Fundamentals 0.088 0.090 0.210 0.189
IEICE Trans. Commun. 0.247 0.312 0.3580.350

IEICE Trans. Electron. 0.170 0.198 0.1260.009
IEICE Trans. Inf. Syst. 0.004 0.027 0.0370.003

さて, この数値はどうみればいいのだろうか? 大体, この数値はあっているの だろうか? 傾向としてはこの数値が大きい方が参照される度合いが高いという ことで活発なジャーナルとも言えるわけだが, 対象分野によって参照の度数は 基本的に異なっており, 違った分野のジャーナルのこのような指標を比較する ことはあまり意味がないとか, 注意点が多数ある(実際, そのような問題点は ISI社のホームページ http://www.isinet.com/ でもまとめら れている). 一方, このようにひとたび指標が出てくると, それが一人歩きす る傾向もある.

そのような意味で, こういった指標を盲信する必要はないわけだが, 一方で論 文誌の質を向上させ, またそのことがこういった数値化の正確さを向上させる ことがあるなら, 実践するにしくはない. 実際, そのようなことの1つが, 本 稿の表題の信学論文誌の参照の仕方である. ちなみに, 英文A論文誌は非常に 長い論文誌名で,

IEICE Transactions on Fundamentals of Electronics, Communications and Computer Sciences
であるが, 信学論文誌の中で参照する際の表記としては
IEICE Trans. Fundamentals
とすることになっている. 信学論文誌では, 表記の揺れを修正する編集など 力を入れて行われていて, このような参照法もチェック点になっているが, それはあくまでも用語編集レベルでのものであって, 専門家なら英文A論文誌 とわかる参照法でも編集だけではとらえられないものもある. 実際、英文 Aを少し調べるだけでも, たとえば
IEICE Trans., Vol. E81-A
などとなっているものがある. これは和文A論文誌がたとえば信学論Aと略される 類推で書かれたものと思われるが, これではきちんと巻数・発行年まで見ないと 英文A論文誌であることがわからない. また,
IEICE Trans. A
は英文論文誌で和文論文誌の電子情報通信学会論文誌(A)を参照する略語となっ ている. したがって, そんな専門知識がない人がデータベース化した場合には, 英文Aを参照していたものが認識されなくなってしまう. 自らの雑誌内での参 照はその雑誌の責任なので, 自らのミスとして直す必要がある.

さらに, 本当の問題は他の雑誌で信学英文論文誌が参照された場合で, その場 合にはその雑誌でIEICE Trans. Fundamentalsを略称として使うことも指定さ れていないので, より多くの表記の揺れがあると思われる. 実際, ISI社の Journal Citation Reportsで英文Aを参照している論文リストを出すと, 何と 自分自身内で参照しているものまでIEICE T FundamentとかIEICE T Fundmenと かいう風に, そのデータベース化の中で導入された表記の揺れで英文Aが認識 されていない点も見えてくるぐらいなのだ.

英文論文誌の認知度というのは, 今の国際化の流れの中でジャーナルのオンラ イン化でさらに重要性が増す. 実際, 既に1997年の英文論文誌掲載論文につい ては, 学会ホームページで公開されており, 引き続いてオンライン化がさらに 充実される予定である. オンライン化により, 順次全文検索が可能になるわけ であるが, 実はこのような表記の揺れは検索性能に悪影響を与えるものでもあ るのだ(裏を返せば, オンライン化により自らこのような調査をできる環境が 整うことになる). また, ソサイエティ制度の根幹でもある会員制度について も, 海外会員が検討されており, 英文論文誌はそのような会員にとって, まさ しくソサイエティからの顔となる.

ということで, 従来以上にさらに重要性をましつつある論文参照での一貫した 表記を実現するため, 和文論文誌の略し方と違い, 基礎・境界ソサイエティの 英文A論文誌については,

IEICE Trans. Fundamentals
が正しい表記法であることを今一度ご認識頂き, 信学内部のみ励行するだけで なく, 幅広くさまざまなジャーナルでこの略称を定着化させ, 英文A論文誌の 認知度を上げることにご貢献頂ければ幸いである.