``情報通信倫理''から``情報文化と倫理''への道

情報通信倫理研究専門委員会
委員長 笠原 正雄

平成 10 年 7 月 21 日開催された理事会で標記のような名称の変更が認 められました. 本年 5 月以降は, この名称のもとに活動致します.

情報通信倫理研究. その夜明け前.

「情報通信倫理研究会」の歴史は非常に浅く, その前身であった同名の第三種 研究会の発足から数えてみても, 平成 11 年 2 月 25 日の時点で, やっと 5 年 9 ヶ月, 小学一年生にも達しない年令です. 最初の 2 年間は東京で 3 回, 京都で 1 回の研究討論会を開催致しましたが, この活動を通して, コンピュー タ倫理の土屋俊先生 (千葉大学) との討論, 西田哲学第一人者である大橋良介 先生 (京都工芸繊維大学) の技術論, 宗教学の秋富克哉先生 (京都工芸繊維大 学) との質疑応答, 情報倫理綱領をめぐる IFIP (International Federation for Information Processing) の活動にお詳しい黒川恒雄先生(國學院大学)の お話等々を中心に議論を重ね, 情報通信倫理の重要性を強く認識しました.

FACEの誕生

平成 7 年 5 月から, 現在の「情報通信倫理研究会」はスタートしましたが, 通称, FACE です. この英語名のゴッドファーザーは初代委員長の辻井重男先 生 (中央大学)でした. FACE ?? 誰しもが初めは, 少し首を傾げるでしょ う. この名前に対し, 当時の基礎・境界ソサイエティ会長で顔学の創始者でも ある原島博先生 (東京大学) が「人間は顔が見えないと邪心を起こすという意 味が含まれているのか?」とおっしゃったそうです. 辻井先生はこの解釈を容 認され, 以後そういうことにされているとのことです (情報システムソサイエ ティ誌, 3, 2, 通巻 11 号). 因みに, FACEは Forum on Advanced Communication Ethics に由来します.

FACEの悩みは?

(1) 年間 5 回の定期研究会での論文集めに関係者は苦心しています. よく考 えてみますと電子情報通信学会80年を越える歴史の中で, 技術者は額に汗して 黙々として働き, ラジオやテレビ, コンピュータ, そして情報ネットワークを 造り出して きました. それが実社会で, どのように使われるか. 光と影は? こんなことは, 長い間, 学会の場では余り話題にならなかったように思います. 全て使う人のモラルに任せるという姿勢が一般で, 「情報通信倫理について何 かお話いただけませんか?」と声をかけても, 尻込みされるのが普通です. ま して, 自から発表を申し込んで下さる方は非常に少ない状況で, これが関係者 の大きな悩みの一つです.

(2) 研究会開催をお引き受けいただいた先生方は, 近隣あるいはご自身の大学 に, 話題提供者を探して下さいますが, まずは電子情報通信学会とは何か, FACEとは何か, といった説明から始めなければならず, その苦労は大変で す. しかし, これは境界領域にあるテーマを追求する際には当然の責務と言え ましょう. しかし, 苦労ばかりではありません. その結果, インターネット等 を含むネットワークに関わる経済, 法律をはじめ, 医の倫理, コンピュータ・ リテラシィ, 技術倫理等々について, 充実した内容のお話を伺うこととなりま す. .....しかし, このことがまた, 新たな問題になります. お話にひきづり 込まれるあまりに, 10 分ないし 15 分間の質問時間では短か過ぎるのです!! フロアーは欲求不満の状態になります. 学部生の世代から米寿に近い大先生迄, あらゆる世代からのご質問の数々をおさめるには 15 分間という時間は余りに も短かすぎ, 司会の方を悩ませることになります.

(3) ある程度予想はしていましたけれど, 企業からの参加者が非常に少ないこ と. これが大きな悩みです. しかし, 米国企業が西暦 2000 年から技術倫理に 関する一定の単位を取得しなかった大学生を採用しない等の注目すべき方針を 打ち出したことを受けて, 我国企業からも積極的参加者が漸次増加することが 期待されます.

倫理綱領の制定

IEEE はじめ欧米の学会では綱領が制定されて久しくなります. 情報処理学会 も本会に一歩先じて, これを制定しています. 電子情報通信学会の倫理綱領は 1997 年 1 月より本格的に作業を開始しましたが, 上園忠弘先生(城西国際大 学)の卓越したリーダーシップのもと, 数え切れないほどの会合を重ね, そし て基礎・境界ソサイエティの関係者, 本学会に所属する全ての専門委員会から のご支援, ご教示を得て制定にいたったものでした. ことの発端は, 実は, 東 京渋谷の蟹料理店でした. 辻井先生, 長尾先生(京都大学)ほか数名の方との話 し合いの席で, 長尾先生が「電子情報通信学会にも, そろそろ倫理綱領が必要 ですね」と仰ったことに始まると記憶しています. 以来, 中央大学会議室をメ インの舞台にして1年半近く作業を重ねました.

FACEの新しい目標

情報通信の世界を包み込んだもっと大きな世界, 情報文化の世界が21世紀に幕 を開きます. 我々この技術に携わる者は, その将来をしっかり見据える目を持 つべきと考えます. FACE 研究会は, 第三種から第一種へ, そして「情報文化と 倫理研究会」へ, いわばホップ, ステップを経て, 21 世紀電子情報通信の世界 へとジャンプします. FACE研究会は基礎・境界ソサイエティの中でも, 一層, 学際的色彩を強めて活動したく存じます. 最後に本音ですが…,

`` 是非, 是非, 一度, 顔を見せて下さい!!''

以上, 皆様からのあたたかいご支援をお願い致します.