平成10年度基礎・境界ソサイエティ会長挨拶

今井 秀樹 (東京大学)


1998年度ソサイエティ会長
今井 秀樹 (東京大学)

歴代会長をはじめ多くの方々の努力により, ソサイエティ制は揺籃期を脱し, 発展期に入ろうとしています.予算を含め, ソサイエティ運営のほとんどをソ サイエティが自主的に管理できるようになってきました. しかし, それはまた, ソサイエティの責任が重くなったことを意味します. ソサイエティの運営は, ボランティアに依存する部分がどうしても多くなります. もちろん, 事務局の 助けがなければ, ソサイエティ運営は成り立たないのですが, ソサイエティ制 に移行してから確実にボランティアへの依存度が増していますし, 今後, ソサ イエティが発展していくに伴って, その依存度はさらに高くならざるを得ない でしょう. というよりも, ボランティアが得られなければ, ソサイエティは発 展しませんし, 消滅してしまうかも知れないのです.

そこで問題となるのは, ボランティアとしての学会活動と研究活動の両立です. 学会活動と言えども, 研究時間を奪うものであることは確かです. そこから研 究のための有形・無形の資産が得られるのですが, 少しの時間も惜しい研究者 にとっては, 大きな負担です. 研究者の貴重な時間を奪うような学会活動はす べきではない, 研究業績ではなく学会活動で名を売るのは研究者として恥ずべ きことだという意見はよく理解できますし, ボランティアが得られず, 学会活 動ができないならそれでもよい, IEEEのソサイエティがある, というのも一理 あります. このボーダレス時代, 本学会のソサイエティ存続の意義が厳しく問 われているのです.

しかし, ボータレス時代だからこそ, 地方自治がますます重要となるように, 本学会ソサイエティの担うべき役割も大きくなっていくと思います. これまで, 私は国内外の多くの学会活動に関わってきました. その中で, 学んだことは, 学会活動を継続発展させることは苦しいけれども, それを放棄すると, 必ず後 悔するということでした. 継続は力となりますし, 学会活動の中から, 新たな 研究の機会が生まれることも少なくないのです. 学会を人任せにしてしまうと, ただ乗りしているような居心地の悪さが付きまといますし, いつまでもただ乗 りが許される訳もありません.

基礎・境界ソサイエティを, 会員誰もが積極的に学会活動に参加でき, 参加す るような, そういうソサイエティにしたいというのが私の夢です. そのために, 学会から与えられるサービスを当然と受け止め, サービスが不十分だと不平を 言うのではなく, 誰もが自分から積極的にサービスを受けに行き, またサービ スをするという, 文化が作れればよいと思っています. 研究者のボランティア 活動で支えられているソサイエティなのですから, たとえサービスが不十分で も, 他の研究者を非難し, その時間を奪うのではなく, 自分で改善していくべ きなのです. そのような文化の中からこそ, ソサイエティの新たな発展が生ま れるでしょう. ケネディではないのですが, ソサイエティがあなたに何をして くれるかを問うのではなく, あなたがソサイエティに何ができるかを問うこと が, 今, 求められている, と思うのです.