1998年総合大会ソサイエティ特別企画

パネル討論「情報通信倫理は実際にはどのように捉えられているのか?」の報告

田崎 三郎 (愛媛大)

情報通信倫理研究会では, 情報通信倫理についての議論を深めると共に情報通 信倫理綱領の策定を目指して活動を行ってきている. この綱領試案は綱領策定 ワーキンググループにより先般まとめられたが, これを「電子情報通信学会と しての情報通信倫理綱領」とするためにはさらに意見を幅広く汲み上げること が不可欠と考えている. 特に, ワ−キンググループの中核となって活動を行っ たきたメンバーの大半は経験豊富な研究者であった. この為, 今後は若手の意 見にも耳を傾け, それらも綱領成案作成に反映していくべきであると言える. そこで, 日頃研究会に熱心に参加していただいている若手4名と本研究会副委 員長のベテラン2名に講演者及びパネリストとなって頂き, 講演とパネル討論 を通してそれぞれの本音を明らかにすることを試みた. 以下に講演題目, 及び その要旨を掲げる.

  1. 古原和邦: 「情報通信システムにおける個人情報収集に関する意識調査」

    では, 個人情報の収集が世の中一般にどのように捉えられているかを調べ, 悪 用の問題などについての提言がなされた.

  2. 辰巳丈夫: 「情報通信倫理教育と学生の実状」

    では, 「情報倫理」の中 身の検討, 並びに学校におけるカリキュラムのあり方について提言があった.

  3. 山根信二: 「ハッカーの倫理, RFCにおける倫理, そしてローカルルール」

    では, コンピュータネットワークの分野で倫理と呼ばれてきている考え方 は, 公序良俗や法とは別の概念であることが主張された.

  4. 上園忠弘: 「企業人の情報通信倫理---ホイッスルブローイングに寄せて---」

    では, 専門的技能または内部知識などに基づいて知り得た情報につ いて警告を発すること. これを情報通信倫理の出発点の一つと考えた議論がな された.

  5. 武田圭史: 「情報通信倫理に関する認識と期待される役割」

    では, 情報通信の世界において固有の倫理が存在し得るという認識が一般に普 及しているとは言い難い, との指摘をもとに, 利用者としての倫理と専門家の 職業倫理が議論された.

  6. 笠原正雄: 「情報通信倫理が21世紀地球社会にもたらすもの---情報通信倫理をネットワーク社会の安全性確保のための 「攻めの技術」としてとらえる---」

    では, 情報通信倫理問題を考えることは決して負の投資ではないこ とを, 私達の基本姿勢とすべきだ, との主張があった.

続いて行われたパネル討論とフロアーからの意見から, 世代を越えた議論が情 報通信倫理綱領作成に当たっては今後とも必要であると総括された.