研究集会報告
第10回 回路とシステム軽井沢ワークショップ 奨励賞受賞者実行委員長 牧野 光則 (中央大) |
昨年 4 月に開催された「第10回 回路とシステム軽井沢ワークショップ」の 奨励賞受賞者が下記 5 名に決定し, 第11回ワークショップの懇親会席上で表 彰されました.
◇ 三好 徹哉 (宇都宮大)
「あるストレンジアトラクタに見られるカオスとトーラスの共存」
本論文ではカオス的振る舞いとトーラス的振る舞いが共存する興味深い ストレンジアトラクタをある回路に見いだしたことを報告している. ポアンカレ写像を用いて, このアトラクタには, 1個の正のリアプノ フ指数と1個の0のリアプノフ指数を見積もることができることを示 し, アトラクタのamplitude directionとphase directionにそれぞれ, カオス的, トーラス的に振る舞うことを明らかにしている. このよう に本論文の内容は今後の非線形回路の振る舞いの研究に示唆を与える 研究だと考えられ, 発表, 質疑応答とも優れており本ワークショップ の奨励賞にふさわしいと判断する.
◇ 坂井 丈泰 (運輸省 電子航法研究所)
「フローティングゲートを用いるアナログ積和演算回路とその応用について」
本論文ではフローティングゲートを利用した差動増幅器を提案し, これを用いてアナログ演算器を実現している.提案された演算器で は従来の演算器に比べて消費電力が抑えられる,演算器の特性を容 易に制御できるなどの利点を有する.さらにこの回路の特長を生か した画像処理用のビジョンチップを構成している. このように本論文の内容は創造性に富み, 将来性のある研究だと考 えられ, 発表, 質疑応答とも優れており 本ワークショップの奨励 賞に推薦する.
◇ 小暮 央 (東京工業大学)
「アドレスレジスタの±2以内の更新命令によるアドレス配置の最適化手法」
さまざまな工業製品に利用されているDSPにおいて, アドレスレジ スタの自由度を高めることにより, その高速処理能力を損なうこと のないアドレス配置の最適化手法を提案している. ますます高速化 が期待されている通信・制御の分野で有効な研究の成果が得られて おり, 今後の発展も期待ができる. 発表においても分かりやすく講 演しており, 質問に対しても的確に応じていた. 以上より, 本研究 発表は本ワークショップの奨励賞にふさわしいと判断する.
◇ 高島 康裕 (北陸先端科学技術大学院大学)
「総隣接並走距離最小化問題」
本論文はディープサブミクロンVLSIレイアウト設計において重要な 問題の1つである配線間のクロストークを考慮した配線問題に対す る理論的考察として, 与えられたn本の線分を隣接する配線の並走距 離の総和が最小となるようにn個の水平トラックに割り当てる問題を 考察し, 多項式時間最適アルゴリズムを与えた.クロストークを考 慮した配線問題については, これまでにわずかな理論的成果しか知 られておらず, 本研究の成果は注目に値する.実際の配線問題への 応用も期待でき, 奨励賞に値する研究と考えられる.
◇ 加藤 尚玄 (沖電気)
「MSCで記述された要求仕様のペトリネットによる検証」
本発表は, 通信システムのソフトウェア設計で現実に使われるMSC (Message Sequece Chart) で記述された動作仕様を, それと等価な ペトリネットに変換し, 効率的に(線形時間で)検証を行うアルゴリ ズムを示したものである. 本発表内容は, 現実の設計現場のニーズ に立脚しており, 理論と応用の両面から高く評価できるものである. また, 発表自体も明解であり, 奨励賞に値する質の高いものであっ た.