チュートリアル講演:TAB-1
「CDMA移動通信の基礎」
9月4日 9:00〜11:45 56号館 101教室

吉田 進 (京大)

本チュートリアルでは、次世代の移動体通信方式として、世界的に注目を集め ているCDMA(code division multiple access)移動体通信を取り上げ専門 家による解説講演を予定しています。すなわち、従来のアナログ移動電話が採 用している周波数分割多元接続方式(FDMA)や、これまでのディジタル移 動電話が採用してきた時分割多元接続(TDMA)とは異なり、意図的に広帯 域に拡散された同一周波数帯を用いて多数のユーザが同時通話可能な符号分割 多元接続(CDMA)通信方式が注目されています。CDMAではお互いに直 交する各ユーザ固有の拡散符号系列を準備しておき、送信時にそのユーザ固有 の符号を乗積し、受信側で逆操作を行うことにより元のユーザ情報が混信する ことなく伝送できます。

従来は特殊目的の通信に使われていただけでしたが、比較的最近になってから、 米国で移動体通信に適していることが再発見され、ここ数年あまり世界的な注 目を集めてきました。移動体通信への応用が可能となった背景には、電子回路 やLSIの急激な進歩に伴い高度な信号処理や適応制御が可能になってきたこ とが挙げられます。具体的には、従来問題となっていた遠近問題(遠くの所望 局の信号が近くにある干渉局の信号にマスクされてしまう問題)が、きめ細か な送信電力制御を用いて解決できるようになってきたこと、マルチパス信号を 分離受信して最大比合成するRAKE受信や一種の基地局ダイバーシチ受信で あるソフトハンドオフ技術、さらには強力な誤り訂正符号が利用できるように なってきたことなどが挙げられます。

CDMAでは低速から高速までの様々な速度の情報伝送に適しているためマル チメディア伝送に向いていると言われています。また、スペクトルが広帯域に 拡散されるために、本質的に様々な干渉に強く、また狭帯域受信機に与える影 響も小さい。セクター化セルを用いることにより、加入者容量でも従来のFDMA やTDMAを上回る方式として期待されています。

既に韓国では拡散周波数帯域幅が比較的狭い商用CDMAが導入されているほ か、日本でも来年度から同方式の導入が予定されています。一方、拡散周波数 帯域幅をより広くした広帯域CDMAの開発が世界的に進んでおり、次世代の 世界標準システムの有力候補と見なされるまでになっています。2000年過ぎに は日本でも広帯域CDMAの導入が始まる見込みです。そこで、本チュートリ アルでは、一般の通信技術者を対象として、CDMA移動体通信を支える基本 的な技術や具体的なシステムについて 4名の専門家にわかりやすく解説して いただく予定です。具体的な講演題目、講師、講演要旨は以下の通りです。

1. CDMAの基礎 ... 横山光雄 (豊橋技科大)
「CDMAがどのような原理で動作するのか」を紹介したあと、それを実現する ための個別技術を、「符号」、「同期」、「測距」、「多重路対策」、 「干渉制限対策」に分けて説明する。

2. CDMA技術の特徴 ... 古谷之綱(NEC)
「CDMAの基礎」を受けて、CDMA技術は他の多重化技術、特にTDMA と比較してどのような特徴があるかを定性的に論じる。さらに、CDMA技術が どのような利用環境に適しているかを考察する。最後に、CDMAの特性を 向上させる将来技術について述べ、CDMA技術の将来性について論じる。

3. 商用CDMAシステム(IS-95)の構成と性能 ... 金井敏仁 (日本モトローラ)
CDMA移動通信技術の応用例として、商用CDMAセルラーシステムである cdmaOne(IS-95方式)の構成技術と性能について紹介する。主要な構成 技術としては、まず拡散符号をどのように使用してチャネルを識別している のかについて説明し、必須技術である送信電力制御およびソフトハンドオフ の具体的方法について述べる。性能については、加入者容量およびその シミュレーションによる評価方法と音声品質について紹介する。

4. 次世代に向けたW-CDMA無線アクセス ... 安達文幸 (NTT DoCoMo)
現在、日欧米で広帯域CDMAの研究開発が行われている。次世代移動通信 システムの技術目標、なぜ広帯域CDMAなのか?具体的な無線リンク構成と その特性について述べ、また、有望な将来技術として干渉キャンセラや 適応アンテナ技術の 適用可能性についても触れる。さらに、現在、東京で伝送実験を実施しており、 移動中で2Mbpsの伝送実験に成功している。実験の概要も紹介する。