「わが国の”もの作り”と”若手技術者の育成”」
                   機構デバイス研究専門委員会委員長 
                              谷口正成
                              東北文化学園大学大学院
 機構デバイス研究会は昭和37 年(1962 年)10 月に発足した機構部品研究会をさらに発展、
活性化を目的として、平成4年(1992 年)、現名称に変更され、40 年以上の歴史を有して
おります。本研究会では、発足当時から、主に、スイッチ、コネクタ、ならびに、電磁リ
レーなどの接触・接続の信頼性に関する研究、開発が取り上げられ、わが国の高度成長を
遂げる中で、この分野の技術の発展に大きく貢献して参りました。
 とくに、本研究会では、接触・接続技術は“もの作り”の原点であると認識し、さらに、
最も奥の深い技術であると理解して参りました。しかし、これらには、多くの問題を含み、
これを早急に解決しなければならず、また新しい技術の創成も急務です。この意味から本
研究会では、わが国の工業製品とくに電気・電子・情報・通信機器の性能と寿命信頼性に
致命的影響を及ぼす電気的接触・接合に関する諸問題の学術・技術にかかわる研究レベル
の向上に多大な刺激を与え、これによりこれら機器の更なる性能向上が促進されて参りま
した。
 「機構デバイス」に関する技術はあらゆる産業分野で必要とされる基幹的・中枢的技術
であると同時に来るべき高度情報化社会のキーテクノロジーであることから社会的需要は
著しく高く、また、社会的需要として、ソフトウェア技術者は言うに及ばず、あらゆる分
野の技術者のもとで、超微細加工、電子デバイスを基盤とする知能デバイスや多機能シス
テムの新しいハードウェアへと拡大しております。さらに、近年、産業界の重要な課題と
なっている産業構造の変化、新規分野の開拓が望まれております。
 一方、わが国内の関連産業の益々の発展が促されるとともに、関連諸国との交流・交易
の更なる展開が不可欠となって参りました。これに伴って、本研究会では、平成12 年(2000
年)に国際セッションの研究会(International Session on Electro-mechanical Devices:
IS-EMD) を開催し、その後、毎回、国外からの研究者、技術者の論文発表、参加者数は
増加の傾向にあります。IS-EMDはIEEE 主催のHolm Conference と比較して、論文発
表件数、参加者数が上回り、世界的な研究集会となりつつあり、国際的にも高く評価され
ております。また、平成18 年(2006 年)には、仙台で接点国際会議(International Conference
on Electrical Contacts:ICEC2006)の開催が予定されております。
 しかし、わが国の産業面で見ると、この分野で世界をリードする産業が必ずしも育って
いません。また、わが国の産業を育てるために行政面でも、現在いろいろな政策が提案さ
れてはいますが、それにはどうしてもその政策を実現する若い人材の育成が必須でありま
す。とくに、世界的視野に立って、創造性豊かな企業家精神をもち、地域の風土と文化を
背景に、地域特有な生産技術の発展にも貢献できる郷土愛の豊かな若手研究者や技術者を
育てることが重要な課題と思われます。
 本研究会では、若手技術者・研究者を育成するため平成4年の研究会の名称変更ととも
に第2種機構デバイス研究会「卒論・修論研究発表会」を開催し、毎年、年度末に開催し
て参りました。本研究会では、大学院生、大学学部学生、高等専門学校生、その他の教育
機関の若手研究者を対象に「機構デバイス」に関する最新技術の紹介、情報交換を行って
参りました。その結果、毎回、発表件数、参加者は増加し、さらに、発表内容のレベルが
向上し、前年度から、第1種研究会「機構デバイス研究会・ショートノート(卒論・修論
特集)」として開催すこととなりました。今後、さらに、若手研究者、技術者を育成するた
め、その中から、和文論文誌に「若手研究者特集論文」として、掲載を計画しております。

著者略歴:
昭和39 年名城大学卒業。同年、名城大学助手。同大学講師を経て、平成12 年東北文化学
園大学教授。平成15 年同大学院教授。この間、機構デバイスの信頼性評価、ホログラフ
ィ技術の信頼性評価への応用、ならびに、赤外放射技術の生体・医療診断への応用に関す
る研究等に従事。平成14 年より機構デバイス研究専門委員会副委員長、平成16 年同委員
長。