「IT時代のデバイス分野の強化を学会で」
                   機構デバイス研究専門委員会委員長 
                              井上浩
                              秋田大学
 エレクトロニクスソサイエティ会員の皆様には,機構デバイス研究会は,その長い歴史
と従来の研究内容で良く知られていると思います。機構デバイス研究会に改称して以来,
研究専門委員会で扱うテーマを,電気信号の接続技術関係に,光接続・実装技術,音響・
超音波デバイス・アクチュエータなどの機械−電気変換デバイスなどを加えて来ています。
最近では,“環境調和設計技術”へと範囲を広げてきました。いわば,従来電子情報通信学
会の他の研究専門委員会では扱われていないような情報通信機器の実装にかかわる周辺技
術分野の新領域を取り入れてきたということが出来ます。
 最近の情報技術(IT)の進歩には,我々の夢を実現するハードウエアおよびソフトウエ
ア技術の進歩が欠かせないものであることは,良くご存知のことと思います。特に,情報
通信機器の小型化と応用範囲の拡大は,これまでにない小型なマイクロ化した機構デバイ
スを要求してきました。小さな装置の周辺は外部接続機器とのコネクタやスイッチで満た
されています。また,従来の電気信号に対し光通信信号技術が家庭内にまで入る込んでく
る近い将来には,光接続・実装技術の重要性もますます増していると考えられます。産業
においても,ハードウエアの中での機構デバイス研究専門委員会の扱う分野は変化しなが
らも減少しないことが,知られています。
 一方,これまでほとんど研究し尽くしたと思われていた,はんだ接続技術や電気接点用
材料の分野でも幾つかのうねりが感じられます。その理由は環境問題です。鉛フリーはん
だ,カドミウムフリーの電気接点材料などが必要になってきたからです。また,機器や部
品にはリサイクルが義務付けられるようになってきました。すなわち,機器・部品のレデ
ュース(reduce),リユース(reuse),リサイクル(recycle)の3Rをデバイス設計から
考えなければならないことになります。また,電子機器の高周波化・小型化・高密度化か
ら生じる電磁環境問題も機構デバイスの分野での環境調和設計としての重要な要素になっ
てきました。これらの内容は企業の努力が相当必要ですが,本学会の研究会としても扱っ
ていき,学問レベルの向上を図ることが必要になってきたと考えています。
 さて,本研究会では11年前から,若手の活躍特に学生の研究の活性化を図りたいと,
“卒論・修論発表会”を2月末に企画してきました。関係する大学・高専の教官のご努力
で毎年15件を越す学生の発表があり盛会に開催されています。学生を学会に参加させる
良い機会となっています。また,7月には4研究会(機構デバイス,電子ディスプレイ,電
子部品・材料,有機エレクトロニクス)が共催する“サマーミーティング”を企画し,異分
野との交流を図って参りました。いずれも10回を越し,定着して来ています。それらに
加えて,今年は9月27,28日に月例の研究会を“国際セッション”として,外国との交流
も加えていきたいと考えています。
 情報機器の進歩とともに電子機器内に使用されているあらゆるタイプのデバイスの研究
は重要性を増していると考えられます。会員の皆様の積極的な異分野交流や活発な発表が
期待されています。

著者略歴
 昭44東北大・工・電子卒。昭50同大学大学院博士課程退。工博。昭50東北大助手。
昭55秋田大学講師,助教授を経て平4教授。現在,工学資源学部教授。平2より平3イ
リノイ大客員助教授。この間接点開離開離時アーク放電のノイズ,デバイスノイズ,超音
波応用計測,生体信号の計測などの研究に従事。平成12年より機構デバイス研究専門委
員会委員長。