街plus探訪
イランカラプテ!「札幌」へ ようこそ
はじめに
北海道大学(以下,北大)は2026年8月に創基150周年を迎えます.そして,偶然にも2026年電子情報通信学会ソサイエティ大会が北大で開催されます.私は北大工学部4年生の頃からずっと,電子情報通信学会にお世話になってきました.近頃は好奇心も,頭の回転もすっかり衰えましたが,せめてもの御恩返しとして,この機会に北大を中心とした街案内をさせて頂きます.ちょっとした気分転換になれば幸いです.
まずは「イランカラプテ」から
新千歳空港からJR北海道の快速エアポートに乗車された方は,自動アナウンスでこの言葉を聞いたことがあると思います.「イランカラプテ」は先住民族であるアイヌの人々の「こんにちは」に当たります(1).北大では,アイヌの人々の歴史や文化への理解を広めるべく,アイヌ民族との共生に向けた研修や学生への教育,市民講座の開講を行っています.ここではそのほんの一端として,挨拶の言葉のみ記します.皆様の記憶に残りますように.
北大に来たなら是非ここへ
北大に仕事で来られた方は多いと思いますが,会場と学生食堂以外は余り訪れたことがないのではないでしょうか.ここでは,独断と偏見に基づくお勧めを御紹介します.
まずは「創基150周年」事業の一つである,「こども本の森 札幌・北大」です.「こども本の森」は,著名な建築家・安藤忠雄氏が発案した子供のための公共図書施設であり,設計・建築費を自ら負担し大阪市など五つの市に寄贈してきました.2026年夏には,札幌市に寄贈した施設が札幌キャンパスに開館します(2).間違いなく,すばらしい施設になると思いますので,是非,外観だけでも御覧下さい.ちなみに名誉館長は漫画家・文筆家・画家のヤマザキマリ氏だそうです.
続いては,札幌農学校(北大の前身)開校当時のイメージが残る第2農場の建物群(図1)です.ここで「総合博物館」webページ(3)の紹介文を引用しましょう.
「札幌農学校第2農場は,明治10年に建設されたW. ホイラー設計の模範家畜房,W. P. ブルックスが設計した穀物庫を中心とした一連の畜産経営の施設を備えて,一軒の畜産農家を模した実績・模範農場として発足しました.(中略)当時の酪農経営の形態を知る上で,札幌農学校第2農場は大変貴重な建築物となっています」

図1 第2農場の建物(北海道大学総合博物館提供)
とても静かな場所ですので,息抜きを兼ねて是非訪ねてみてはいかがでしょうか.なお,札幌農学校開校当時の校舎は札幌市の観光名所である時計台(旧札幌農学校演武場,図2)付近の位置にあったそうです(4).この時計台も第2農場の建物と同じくバルーンフレーム構造(「2×4(ツーバイフォー)工法」の原点とも言える構造で,柱の少ない広い空間を実現可能)を有していますので,比較してみるのも一興です.
また,有名なクラーク像の裏手に広がる「中央ローン」と呼ばれる芝生の広場(図3)は,市民の憩いの場になっています.その中央を流れる小川は扇状地端の湧水を源とする「サクシュコトニ川」を再現したもので,かつては鮭も遡上する川だったそうです.ちなみに,NHK番組「ブラタモリ」(2015年11月7日放送)でも紹介されました.天気が良ければ,ここでお弁当を広げるのもお勧めです.
図2 札幌市時計台
図3 春の中央ローン
最後に紹介するのは,食事・休憩場所です.札幌キャンパス内には,北大生協が運営する学生食堂が7店舗あります.どこかの大学生協を利用したことがあれば既視感満載ですが,低価格で食事を楽しめます.ここでは,学生食堂以外の施設3か所を一気に御紹介しましょう.
一つ目は北大正門そばのインフォメーションセンター「エルムの森」内にある「カフェdeごはん」(図4)です.軽食・ランチ・ディナーメニューをそろえてお待ちしています.併設ショップでは北大オリジナルグッズを販売しています.
二つ目は北大正門から少し進んだところにある「百年記念会館」内の「北大マルシェCafé & Labo」(図5)です.北大農場の乳牛から搾った牛乳が飲めるだけでなく,その牛乳を使用した料理も味わえます.
図4 カフェdeごはん
図5 北大マルシェCafé & Labo
最後は「総合博物館」内の「ミュージアムカフェぽらす」(図6)です.軽食・ランチやデザートメニューをそろえています.ここでも北大農場牛乳が楽しめるほか,「西興部村ソフトクリー夢」もありますので,観光気分が味わえます.学生食堂に飽きたら是非どうぞ.
番外編として紹介したいのが,北海道のワイン産業発展に資することを目指した「北海道ワイン教育研究センター」(図7)です.同センター内には「北大ワインテイスティング・ラボ」があり,通常金曜日から月曜日まで週4日有料で道産ワインのテイスティング(5)ができます.ソサイエティ大会開催期間中ですと,金曜日のみが対象となりますが,興味と時間がある方は是非お立ち寄り下さい.
なお,以上で紹介したレストラン等は御利用前に営業日・時間等をWebで検索するのをお忘れなく.
図6 ミュージアムカフェぽらす
図7 北海道ワイン教育研究センター
ちょっと足を延ばせば
札幌キャンパスから少し離れてはいますが,「北海道大学植物園」もお勧めです.残念ながらビジターの皆様は有料ですが,420円(2026年1月現在)で入園できます.通常4月29日から11月3日まで開園(6)(通常月曜休園)しており,広さ13.3 haの園内で様々な植物を見ることができます.
更に,園内の博物館には,第1次南極観測隊(1956~57年)に同行・生還したカラフト犬の1頭であるタロの剥製が展示されています.2013年5月までは東京タワーの入り口に南極観測で活躍したカラフト犬ブロンズ像があったので,当時,電子情報通信学会に通っていた方々にはなじみがあるはずです.北大は南極観測開始当初から積極的に観測活動に協力してきました.ちなみに2025年12月に成田空港を出発した第67次南極地域観測隊の青木茂隊長は北大低温科学研究所教授です.このような背景から,タロは北大で,生還したもう1頭のジロは南極観測の中核をなす国立極地研究所で,大切に保管・展示されているのです.
植物園のすぐ近くには観光名所で知られる「北海道庁旧本庁舎」(図8)があります.2025年7月に5年に渡る令和の大改修を終え,赤れんがの堂々たるたたずまいを再び見られるようになりました.レストランやお土産ショップを備えるとともに,これまで非公開だった八角塔展望バルコニーに登る(有料・要予約)こともできます.植物園とセットでお楽しみ下さい.

図8 北海道庁旧庁舎
市内観光なら
続いて,札幌市内のお勧め観光スポットを御紹介しましょう.私は高いところからの景色が大好きです.隣の研究室の部屋からは図9のようなきれいな眺めが見られますが,私の居室からは校舎群しか見えません.JR札幌駅に隣接するJRタワーの展望室「T38」(有料)なら,高さ160 m,周囲360度の景色が楽しめます.

図9 情報科学研究院棟11階からの眺め
また,大通公園には2025年3月に国の登録有形文化財に認定された「さっぽろテレビ塔」(図10,高さ144 m,有料展望台は高さ約90 m)があります.今は送信タワーの役目を終えましたが,歴史あるランドマークとして市民に親しまれています.運が良ければ「テレビ父さん」(図10)に会えるかも.

図10 さっぽろテレビ塔と「テレビ父さん」
もっと高いところを御所望なら,藻岩山(標高531 m)の「山頂展望台」に行きましょう.夜景の美しさ(図11)は太鼓判です.市電と無料シャトルバス(平日夜と土日曜・祝日運行)を使えばロープウェイ山麓駅まで気軽にアクセスできます.(ほかの公共交通機関ルートもあります.)

図11 藻岩山山頂展望台からの夜景
個人的なお勧めは「大倉山展望台」です.ラージヒルジャンプ台スタート地点から大通公園を遠くに望む眺め(図12)は,ほかでは味わえません.ジャンプ競技場までは札幌市営地下鉄東西線「円山公園駅」からバスを御利用下さい.展望台まではリフトで登れますのでご安心を.年配の方なら併設された「札幌オリンピックミュージアム」もお勧めです.

図12 大倉山展望台からの眺め
もうちょっと足を延ばせるなら
2023年に北海道日本ハムファイターズのホーム球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」(図13)が札幌市に隣接する北広島市にオープンしました.新千歳空港からJR北海道を利用して札幌に向かうなら,進行方向左手を御覧下さい.JR北広島駅を過ぎたところでその威容が姿を表します.試合がない日はスタジアムツアー(有料,事前予約推奨)がありますし,外野エリアなら無料で入場できます.ダルビッシュ有選手と大谷翔平選手の壁画などで記念写真をどうぞ.北広島駅からシャトルバス(有料)でアクセスできます.

図13 エスコンフィールドHOKKAIDO
おわりに
創基150周年を迎える北大を皮切りに,幾つかの見所・観光スポットを御紹介しました.2026年ソサイエティ大会で札幌に来られる方々に,少しでも参考になれば幸いです.誌面の都合で「泣く泣く」省いたスープカレーやジンギスカン,生寿司(北海道では握り寿司のことをなぜか生寿司と呼びます.)などの「鉄板グルメ」もありますので,皆様の御参加を心待ちにしております.
なお,ハイキング好きの方々も多いと思いますが,2025年は円山動物園など札幌市内の各所でヒグマが目撃されました.学内の知人の御自宅付近でも,図14のような注意看板が見られたそうです.山に近いエリアに行かれる場合は,くれぐれも御注意下さい(7).
謝辞 図3,図9を御提供頂いた山本学先生と図14を提供頂いた先生に感謝申し上げます.

図14 住宅地の注意看板
文 献
大鐘武雄 (正員:フェロー)
北海道大学大学院情報科学研究院教授.昭59北大・工・電子卒.昭61同大学院修士課程了.昭61郵政省電波研究所(現情報通信研究機構)技官.平4(株)ATR光電波通信研究所研究員.平7北大大学院工学研究科助教授.平27同大学院情報科学研究科教授.無線通信信号処理に関する研究に従事.博士(工学).