子どもに教えたい通信のしくみ 
液晶ディスプレイの仕組み

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液晶ディスプレイの仕組み

工学院大学 工藤幸寛 高橋泰樹
Yukihiro Kudoh Taiju Takahashi

1. はじめに

ディスプレイはコンピュータやネットワークと人をつなぐ重要なインタフェースである.現在ではスマートフォンやタブレット端末,パソコン,ゲーム機,テレビなど身近な機器の多くに液晶ディスプレイが使われている.液晶ディスプレイの構造は図1に示すように様々な部材で成り立っているが,基本となるのはガラス基板で「液晶材料」をサンドイッチのように挟んだ構造である.本稿では,液晶ディスプレイの基本的な仕組みについて分かりやすく解説する.

図1 液晶ディスプレイの基本構造

図1 液晶ディスプレイの基本構造

2. 液晶とは

一般的な物質は固体・液体・気体の3状態をとるが,一部の物質は固体と液体の間でそれぞれの性質を併せ持った第4の状態をとる.これが液晶である.液晶は液体のような流動性を持ちながら,固体(結晶)の特徴である分子が一定方向に配列するという特徴を持っている(図2).

液晶にも幾つか種類があるが,一般的なディスプレイで用いられるのは「ネマティック液晶」である.ネマティック液晶は棒状の分子で,自然な状態では同じ方向に並ぼうとする性質を有する.そのため,図では液晶分子をだ円形で示しているが,実際の見た目は油のような液体である.面白いことに,液晶に電圧をかけると電界に沿って分子の向きが変化する.この分子の向きが変化する性質が,光をコントロールする上で重要な役割を果たす.

図2 液晶とは

図2 液晶とは

3. 表示の基本原理

液晶そのものは自分で発光することができない.そのため,液晶ディスプレイは「非発光ディスプレイ」と呼ばれる.したがって,ディスプレイに応用する際は,光源となるバックライトを背面に設置する必要がある.あるいは,周囲の光を利用するための反射板を設置する場合もある.液晶はあくまで光を透過させる量をコントロールして表示を行う素子である.

光の透過量をコントロールする方式は「表示モード」と呼ばれ,Twisted Nematic(TN),Vertical Alignment (VA),In-Plane Switching(IPS)など幾つかあるが,どの方式も光の偏光状態を制御することが基本となる.「偏光」というのは光の振動方向のことである.通常の光は360°,様々な方向に振動する光が混在している.これは,バックライトに使われるLEDの光も同様である.そのため,特定方向に振動する光だけを取り出す「偏光板」が必要になる.

4. TN方式の原理

ここでは,比較的原理が理解しやすい「TN方式」について説明する(図3).TN方式の特徴は,電圧がかかっていない状態では液晶の配列(配向)がねじれていることである.液晶配向は,基板表面につけた「配向膜」と呼ばれる高分子膜により決定される.高分子膜を布などで一方向にこすると,その方向に液晶が並ぶ性質を利用して特定の方向に液晶を並べている.

TN方式の場合は,こすった方向が90°異なるように,ガラス基板を向かい合わせて貼り合わせた構造をしている.このガラス間に液晶を注入すると,液晶は周囲の液晶と同じ方向に並ぶ性質があるため,徐々にねじれた配向が得られる.バックライトからの光はまず偏光板を通って,特定の方向に振動する光だけが取り出され液晶に入射する.ねじれた液晶配向が持つ光をねじる性質(旋光性)により偏光の状態が90°ねじれる.この結果,2枚目の偏光板は1枚目と透過軸が90°異なる(「クロスニコル」と呼ばれる状態)が,旋光性により光が通り抜け画面は明るく見える.

この状態で上下基板間に電圧をかけると,電界に沿って液晶が立ち上がり,ねじれが解消される.すると旋光性も失われ偏光の状態は変化せず,2枚目の偏光板で光が吸収され画面は黒く見える.

このようにして,電圧「ON/OFF」で光を「遮る/通す」をコントロールすることが可能となる.これを小さな区画ごとに行うことでディスプレイは文字や画像を表現している.

図3 TN方式の原理

図3 TN方式の原理

5. カラー表示のしくみ

色は光の波長により決まるが,ディスプレイは直接表示する光の波長を制御し表示しているわけではない.人の眼の中には短波長・中波長・長波長に感度のピークを持つ3種類の錐体細胞があり,それぞれが光の強さを脳に送っている.これらの光の強さの組合せから,どのような波長分布を持った光か脳が類推して色を知覚している.つまり,3種類の細胞をそれぞれ刺激してあげればよく,効率が良いのが光の三原色である赤・青・緑の3色となる.ディスプレイはこれを利用し,この三原色をそれぞれ表示する点(ドット)を1セット(画素)として,それぞれのドットの明るさを変えることで画素ごとに色を表示している.液晶ディスプレイの場合は「カラーフィルター」と呼ばれる色のついた半透明の層を介することで,白色の光に三原色それぞれの色をドットにつけている.

図4は白色の画面に「イ」を表示している液晶ディスプレイの画面を拡大した写真である.「イ」の周りは赤・青・緑のドットが全て点灯,つまりバックライトの光を透過し白を表示している.このとき,人の視力ではドットを認識できずぼやけて色が混ざって見える.一方で,「イ」の部分は光を遮断し黒く見えている状態である.

図4 液晶ディスプレイを拡大した写真(白地に黒で「イ」を表示している様子)

図4 液晶ディスプレイを拡大した写真
(白地に黒で「イ」を表示している様子)

6. おわりに

今日では広く普及している液晶ディスプレイであるが,非常に多くの部材が使われており,多くの工夫と技術の結晶で成り立っている.近年ではメガネやゴーグル型の装置で映像を表示するAR(拡張現実)やVR(仮想現実)に注目が集まっている.このような用途では,ディスプレイが目に近いため,テレビを小指の先よりも小さなディスプレイにするような高度な技術が求められている.また,有機ELに比べて液晶ディスプレイは明るい画面が得意なため,光が大きく減衰してしまう複雑な光学系と組み合わせて使用でき,より薄型のVRゴーグルが作れるなどの利点もある.今後も液晶ディスプレイの発展に是非注目してほしい.

工藤幸寛
工藤幸寛

2012工学院大・工学研究科電気・電子工学専攻修士課程了.2015同大学院博士後期課程了.博士(工学).2015から同大学工学部情報通信工学科助教.現在,同大学情報学部情報通信工学科准教授.液晶素子をはじめとする光学素子の研究に従事.

高橋泰樹
高橋泰樹

1991工学院大学大学院了.スタンレー電気株式会社技術研究所を経て,1998長岡技科大にて博士号取得.博士(工学).その後,山口東京理科大研究員を経て,1999工学院大学専任講師.現在,同大学情報学部情報通信工学科教授.液晶,電子ディスプレイ,電子ペーパー等の研究に従事.