巻頭言

小特集 Special Issue

小特集発行にあたって

小特集 Special Issue

編集チームリーダ干川 尚人Naoto Hoshikawa

大規模言語モデルと生成AI技術が開く未来

昨今,生成AIは急速な発展を遂げ,アイデア創出や文章作成の支援にとどまらず,研究活動や組織における業務プロセスの中にも着実に浸透し始めています.その一方で,生成物の信頼性,入力情報の機密保持,悪用・誤用への備え,更には権利関係といった論点は,利活用の広がりとともに,その重要性が高まっています.技術の進展そのものだけでなく,「どのように使い,どのように守り,どのように学ぶか」という実務的視点が,今,強く求められていると言えるでしょう.

本小特集では,こうした課題意識の下,「大規模言語モデルと生成AI技術が開く未来」を見据えつつ,その可能性と留意点を多面的に整理することを目的として,6件の解説記事を企画しました.これらの記事は,各分野で実践と考察を重ねておられる方々に御執筆頂いたものです.

まず,大規模言語モデル(LLM)の仕組みや発展の流れをはじめ,世界の潮流と日本における動向を俯瞰し,「LLM技術の現在地」を明らかにして頂きます.続いて,小規模言語モデル(SLM)とエージェントAIを取り上げ,手元の計算資源や閉じた環境での運用といった選択肢が,今後の利活用の在り方をどのように変え得るかを論じて頂きます.

生成AIのセキュリティについては,二つの観点から取り上げます.一つは,生成AIセキュリティの全体像を踏まえつつ,リスクと攻撃手法を整理した上で,多層的な対策とガバナンスの考え方を解説して頂くものです.もう一つは,AIを活用したサイバーセキュリティ教育に関するユニークな取組みを紹介して頂き,人材育成の現場において何が可能となり,何が課題となるのか,将来への展望を示して頂くものです.

また,実践的な活用事例として,大学におけるAI活用の変遷と展望を取り上げ,組織導入のプロセスや運用上の論点を共有して頂きます.最後に,著作権法上の課題を学習・生成・利用の各段階から整理し,技術の進歩を社会の安心へとつなげるための視座を提示して頂きます.

生成AIをめぐる技術と社会の動きは極めて速く,本小特集が発行される頃には,既に新たな進歩や論点が現れていることでしょう.それでも,本小特集が,そうした急速な変化の中で立ち位置を確かめ,今後の方向性を考えるための手掛かりとなれば幸いです.研究者,技術者,学生,そして実務家の皆様にとって,生成AIの責任ある活用に向けた議論を深める一助となることを願っております.

末筆ながら,本小特集の発行にあたり,御執筆頂いた皆様,査読・校閲に御協力頂いた皆様,並びに編集作業に御尽力頂いた皆様に,心から感謝申し上げます.

Special Issue

小特集編集チーム
干川尚人,上野貴弘,太田真衣,櫻井利昭
道後千尋,中野雄介,中村光貴