解説論文
無線電力伝送と通信の融合によるミリ波帯中継器
小特集
カーボンニュートラルと分散電源と次世代エネルギー
Summery 無線通信の高周波化が進み,5G(第5世代移動通信システム)では28 GHz帯,将来的には6Gで100 GHz超の利用も視野に入っている.キャリヤ周波数の高周波化により通信速度は向上するが,伝搬損の増大や強い直進性により基地局当りの通信カバレージが狭くなるため,中継器の高密度な設置が不可欠となる.しかし,電源や光ファイバの制約から設置場所の確保が困難であること,加えて基地局における消費電力が大幅に増加してしまう.そこで,本稿では無線電力伝送(WPT)を用いた低消費電力かつ自由な場所に設置可能な中継器を提案する.WPT信号を活用して電力供給と周波数変換,ビームフォーミングを同時に行うことで,周波数シンセサイザやアクティブ回路が不要となり,中継器に必要な機能を飛躍的に低い消費電力で実現する.初期のプロトタイプであるCMOSプロセスを用いた24 GHz帯WPT型中継器,GaAsダイオードによる256素子大規模・大電力生成可能な中継器,また5.7 GHz帯の利用による長距離化やDバンドを利用した中継器の高速化について紹介し,今後の無線電力伝送型中継器の展開について論じる.
Key Words Wireless Power Transfer, Wireless Communication, Integrated Circuits, Phased Array, 5G
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はじめに
1.1 無線通信の高周波化
無線通信に利用するキャリヤ周波数は,通信速度の向上とともに高くなってきている.現在移行期にある4G LTEにおいては,sub6と呼ばれる6 GHz未満の周波数帯が利用されているが,5Gシステムにおいては,一桁高い周波数の28 GHz帯を利用したサービスが始まっている.移動体通信システムの発展を10年単位で考えると,現在は,次世代の6Gの開始を見込んでいる2030年に対して折り返し地点にきている.6Gにおいては,5Gで導入されたミリ波帯よりも更に高い周波数の利用も検討されており,100 GHzを超えるような周波数帯を利用して,更なる通信の高速化を目指している.
一般に,周波数を高くしていけば,通信速度は向上する一方で,通信カバレージは狭くなってしまう.5Gの28 GHz帯では,1チャネルの帯域幅が400 MHzと,Sub6と比べて10倍以上広いため,帯域幅に応じた高速化が可能となる.更に,6Gにおいては,より高い周波数を利用することで,10 GHzを超える帯域幅の無線通信の実現が期待されている.しかし,周波数の向上に伴い,自由空間伝搬損が大きくなる.加えて電波の直進性が高くなり,見通し外での通信が困難になる.
ミリ波帯通信のカバレージを広げるためには,きめ細やかな基地局の設置,そして無線中継器の配置が重要である.これまでのSub6周波数の基地局は,比較的低い伝搬損や電波の回込みによって,1台の基地局で数km以上の範囲をカバーすることができた.ミリ波帯では,最大でも数百mであり,より多くの基地局,無線中継器が必要となる.
1.2 ミリ波帯中継器の課題
ミリ波帯通信の普及に向けた大きな課題の一つが,基地局や中継器の設置場所である.従来の周波数帯に比べ,飛躍的に高い密度で設置していく必要があるため,新たに基地局や中継器を設置する場所を確保することが難しくなってきている.基地局等を設置するためには,電源の確保や光ファイバの敷設が必要であり,設置できる場所は限られる.
もう一つの大きな課題が,高速化が進む無線通信ネットワークが消費する電力である.5Gにおいては,ミリ波帯を利用することで10 Gbit/sを超える通信速度を実現し,6Gにおいては更なる高速化が期待されている.我々が利用するデータ量は指数関数的に増大してきており,それを支えるモバイル通信のトラヒックも急激に増加している.データトラ
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東京科学大学,東京都
Institute of Science Tokyo,Tokyo,152-8552 Japan