巻頭言
電気は単にエネルギーを伝送するだけでなく,半導体を含む種々の電気・電子部品を使って高速かつ高度に制御可能であることから,19世紀にエジソンが電気事業を開始して以来,普及と発展を続け,現代では人々の生活になくてはならないものとなっています.本小特集では電気が支えるカーボンニュートラル技術として,分散電源や太陽光発電・風力発電といった次世代エネルギーに焦点を当てて,それを取り巻く政策・標準化動向,関連技術について解説します.
カーボンニュートラル実現に必要な技術の一つとして挙げられているのが,分散電源を活用したデマンドレスポンスです.ここで言う分散電源とは,送電網上に分散している太陽光発電・風力発電といった再生可能エネルギー(再エネ)や蓄電設備,能動的な制御により電力消費を調整可能な電力消費者(需要家)を総称したものです.デマンドレスポンスでは,日照や風況などの自然環境に左右されやすい再エネ電力を,送電網上の分散電源がリアルタイムに電力を入出力制御することで需要と供給を成立させます.デマンドレスポンスが実現された送電網は,もはや通信網そのものであり,そこには分散電源同士が互いに情報を正しくやり取りするためのプロトコルや標準規格が必要不可欠です.本小特集で紹介する3件の解説記事では,こうしたプロトコルや標準規格の国内外動向,実際の通信規格の動作を取り扱っています.
また,2件の解説記事では電力伝送制御に関する次世代技術として「ワット・ビット連携」と「無線電力伝送」という二つのテーマを紹介します.ワット・ビット連携とは,地理的に分散したデータセンター間で計算量(ビット)を調整することで電力消費(ワット)を調整可能な分散電源として機能させるという技術です.
本小特集を通してカーボンニュートラルを中心にエネルギー分野に起きている技術革新と動向を知って頂ければ幸いです.
最後に,小特集の発行にあたり,御執筆頂いた皆様,編集委員の皆様,査読・校閲で御協力頂いた皆様に心から感謝致します.
小特集編集チーム
早馬道也,内田大輔,中西孝行,松室尭之,水野 修