概要

移動通信環境における受信信号強度の変動は、その発生メカニズム、および、その結果としてその変動の空間的スケールにより、(1)瞬時変動(マルチパスフェージング)、(2)短空間中央値変動(シャドウイング)、(3)長区間変動(距離特性)、の3要素に分類できる。

(1)瞬時変動:短区間(数波長区間)内における受信信号強度の瞬時値の変動であり,到来するマルチパス到来波(多重波)および,多重波どうしの位相関係が変化することにより多重波の合成として得られる受信信号強度に変動が生じる。図2中の“移動①”によって観測することができる。

(2)短区間中央値変動:長区間(数十~100 m程度の区間)内における瞬時値の短区間中央値(もしくは平均値)の変動であり、送受信点間の距離の変化以外の伝搬路状況(シャドウイング状況)の変化により変動が生じる。図2中の“移動②”によって観測される受信信号強度の変動から、短区間中央値(もしくは平均値)を算出することにより求めることができる。

(3)長区間変動:短区間中央値の長区間内中央値(もしくは平均値)の変動であり、送受信点間距離に起因する変動である。図2中の“移動③”によって観測される受信信号強度の変動から、短区間中央値(もしくは平均値)を求め、さらにそれらの長区間中央値(もしくは平均値)を算出することにより求めることが出来る。

図1 移動による受信信号強度の変動
図2 多重波伝搬環境
図3 移動による受信信号強度の変動と変動に含まれる三要素

参照

[1] 電波伝搬ハンドブック,リアライズ社,1999.

[2] 岩井誠人,移動通信における電波伝搬 -無線通信シミュレーションのための基礎知識-, コロナ社, 2012.

[3] 今井哲郎, 電波伝搬解析のためのレイトレーシング法, コロナ社, 2016.