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第43回 福祉情報工学研究会

更新:2008年9月27日(土)
電子情報通信学会 福祉情報工学研究会 (WIT)
専門委員会の役職と氏名
  • 委 員 長:中山 剛
  • 副委員長:樋口 宜男, 渡辺 哲也
  • 幹 事:西本 卓也, 河野 純大
  • 幹事補佐:今井 篤, 竹内 晃一
開催概要
テーマ

福祉情報工学一般

日程
  • 研究会1日目:2008年7月27日(日) 13時00分~17時00分
  • 研究会2日目:2008年7月28日(月) 10時00分~14時30分
会場

朱鷺メッセ(新潟コンベンションセンター)会議室:303および304

  • 所在地

    〒950-0078 新潟市中央区万代島6番1号

情報保障

本研究会では視覚や聴覚等に障害がある方でも参加・発表できるように情報保障を行っております。
・手話通訳(事前にご要望をいただいた場合)
・要約筆記(事前にご要望をいただいた場合)
・点字資料(プログラムと概要のみ)
・発表原稿の電子ファイル(視覚障害者用):PDF(電子投稿データ)またはテキストデータ(著者に作成を依頼)

備考

1件の発表時間は講演および質疑応答を合わせて30分です。

研究会1日目:2008年7月27日(日) 13時00分~17時00分

2008年7月27日(日) : セッション1 (13:00~15:00)

(1) 利用者に適したポインタ操作代替画面走査法の選択支援 (WIT2008-20 pp.1-6)

  • 発表者:石川真伍(新潟大)
  • 著者名:石川真伍・小山堅治・林 豊彦(新潟大)・中村康雄(同志社大)・若林佑子(日本ALS協会)・遁所直樹(自立生活センター)

(2) 直流結合増幅眼電図を用いたポインティングデバイスの開発 (WIT2008-21 pp.7-12)

  • 発表者:内富寛隆(新潟大)
  • 著者名:内富寛隆・堀 潤一(新潟大)

(3) 認知障害者の日常生活・就労支援を目的とした情報技術活用に関する研究 (WIT2008-22 pp.13-18)

  • 発表者:中山 剛(国リハ)
  • 著者名:中山 剛・加藤誠志(国リハ)・上田典之・野村隆幸(職リハ)・岡谷和典・大元郁子(吉備職リハ)・植松 浩・長澤芳樹(明電ソフト)

(4) 汎用コミュニケーションエイドVCAN/1Aのカスタマイズ支援システム (WIT2008-23 pp.19-24)

  • 発表者:松本謙之(新潟大)
  • 著者名:松本謙之・菅谷彰子・紀 蓮釧(新潟大)・相場有希子(はまぐみ)・林 豊彦(新潟大)・中村康雄(同志社大)・久保田 健(新潟県立高等養護学校)・朝妻裕祐・廣川豊士・井口貴雄(新潟大附属特別学校)・藤田真実(新潟市立養護学校)・青木さつき(ことばクリニック)・入山満恵子(明倫短期大)

2008年7月27日(日) : セッション2 (15:30~17:00)

(5) 地域連携による汎用コミュニケーションエイドの研究開発と知的障がい児・発達障がい児の教育支援 (パネル討論)

パネリスト:
林 豊彦(新潟大学工学部・福祉人間工学科 教授)
久保田 健(新潟県立高等養護学校 教諭)
青木さつき(明倫短期大学附属歯科診療所・ことばクリニック 言語聴覚士)
相場有希子(新潟県はまぐみ小児療育センター 作業療法士)

概要:
知的障がい児および発達障がい児は、言語によるコミュニケーションにも障がいをもっている場合がある。それを補う方法論のひとつに拡大・代替コミュニケーション(AAC, Augmentative and Alternative Communication)があり、そのための具体的な機器のひとつに音声出力型コミュニケーションエイド(VOCA, Voice Output Communication Aid)がある。この装置は、一般に絵や文字が描かれたスイッチを手指で押すことにより、登録された音声を出力する機器である。
このようなAAC機器は、教育的、言語発達的、作業療法的に検討された個人教育プログラムに基づいて慎重に適用されなければならない。そこで我々は、教師、保護者、および地域の言語聴覚士、作業療法士、リハビリテーション技術者からなる支援チームを組織した。その検討会議において支援方針と具体的な支援策を検討し、個人用のPDA型VOCAを設計製作した。何人かの児童・生徒に対して適用した結果、VOCAを月1回の検討会議の結果に基づいて頻繁に改訂・機能拡張することにより、使用者のコミュニケーション能力を短期間で改善することができた。さらに、VOCAを設計製作・改訂した経験に基づいて、柔軟かつ多様にカスタマイできる“汎用コミュニケーションエイド”VCAN/1Aを開発した。

研究会2日目:2008年7月28日(月) 10時00分~14時30分

2008年7月28日(月) : セッション1 (10:00~12:00)

(6) 視覚障害者用位置情報提供システムにおける案内情報提供方式 (WIT2008-24 pp.25-30)

  • 発表者:小西孝史(新潟大)
  • 著者名:小西孝史・前田義信(新潟大)・田野英一(能開大)・牧野秀夫(新潟大)

(7) 視覚障害者用スクリーンリーダのフォネティック読みに関する研究 ~ 小学生の語彙を考慮した仮名説明単語の選定 (WIT2008-25 pp.31-37)

  • 発表者:渡辺哲也(特総研)
  • 著者名:渡辺哲也(特総研)・佐々木朋美(仙台市立岩切小)・青木成美・永井伸幸(宮教大)

(8) Webページ間の関係に着目した大規模サイトの構造化の調査 ~ 音声ブラウザ利用におけるアクセシビリティの検討 ~ (WIT2008-26 pp.39-44)

  • 発表者:大瀧万希子(千葉大)
  • 著者名:大瀧万希子・堀内靖雄・西田昌史・黒岩眞吾(千葉大)

(9) ネットワーク経由で電子楽譜から点字楽譜を生成する自動翻訳システム (WIT2008-27 pp.45-51)

  • 発表者:後藤敏行(横浜国大)
  • 著者名:後藤敏行・山田慎也・田村直良(横浜国大)

2008年7月28日(月) : セッション2 (13:00~14:30)

(10) 講義の情報保障におけるキーワード提示タイミングに関する基礎的検討 (WIT2008-28 pp.51-56)

  • 発表者:加藤伸子(筑波技大)
  • 著者名:加藤伸子・河野純大・若月大輔・塩野目剛亮・黒木速人・村上裕史・西岡知之・皆川洋喜・白澤麻弓・三好茂樹・内藤一郎(筑波技大)

(11) 立体映像を用いた遠隔手話通訳システムに関する研究 (WIT2008-29 pp.57-60)

  • 発表者:若月大輔(筑波技大)
  • 著者名:若月大輔・塩野目剛亮・加藤伸子・河野純大・村上裕史・皆川洋喜・西岡知之・内藤一郎(筑波技大)

(12) 手話テキストからの手話文字SignWritingの自動生成 (WIT2008-30 pp.61-66)

  • 発表者:松本忠博(岐阜大)
  • 著者名:松本忠博(岐阜大)・加藤三保子(豊橋技科大)・池田尚志(岐阜大)

報告

報告者:西本卓也(WIT企画幹事)
お断り:本報告は研究会の様子を多くの方にご紹介するためのものであり、文責は報告者にあります。
研究の詳細については予稿集(技術報告)に記載されている連絡先にお問い合わせください。
本報告についてのお問い合わせ先:nishi アットマークを入れる hil.t.u-tokyo.ac.jp

第43回福祉情報工学研究会は新潟市・朱鷺メッセにて開催された。
今回の開催に先立って、参加者の方に開催地・テーマ・企画などに関するアンケートへの協力のお願いをした。
発表者の方には、記録用の録音・録画を行うので不都合があれば発表ごとにお伺いする、というお願いをした。

7月27日 38名(うち視覚障害者2名、車椅子1名)
7月28日 27名(うち視覚障害者2名)
点字資料は2部を配付。手話通訳・要約筆記は実施しなかった。
7月28日の夜に新潟市内にて懇親会を行った。

WIT2008-20 pp.1-6
【利用者に適したポインタ操作代替画面走査法の選択支援】
重度肢体障害者のシングルスイッチと画面操作法によるコンピュータ操作に関する研究。
利用者に最適な画面操作法を少ない負担で選択するためのシミュレーション手法の提案。
走査レート統一や誤操作回数などの基準を揃えて操作時間・操作回数を比較している。
議論:
シミュレーション実験で操作時間の標準偏差が大きいのはなぜか?
回数を少なくする手法と時間を短くする手法は一致しない、利用者の好みを考慮すべき、
ハイブリッド法は操作が複雑、目的の作業との二重課題の競合の問題がある、
個人の運動能力や認知特性に合わせて操作方法を選択することが重要、など。

WIT2008-21 pp.7-12
【直流結合増幅眼電図を用いたポインティングデバイスの開発】
重度肢体不自由者の残存運動機能として眼球運動に着目したPC操作システムを試作。
眼球運動に伴う電位変化を計測、瞬目アーチファクト対策、電極配置のずれ誤差対策などを行う。
議論:
瞬目アーチファクト対策の中央値フィルタの次数はどのように決めたのか?
被験者数が1名だが個人性要因も検討すべきでは?
クリック操作はどう行うのか?
ドリフトは何に起因する変化なのか?
補正のために頭を回すのは負担ではないか?
斜め方向の操作も扱えるのか?など。

WIT2008-22 pp.13-18
【認知障害者の日常生活・就労支援を目的とした情報技術活用に関する研究】
高次脳機能障害者などの生活や職業訓練を支援するPDA用ソフトウェアの開発と携帯電話への移植。
システムユーザビリティスケール(SUS)による有効性評価。
議論:
携帯電話が圏外でも使用できるのか?
多様なニーズに対応するためのカスタマイズ性、テータの共有ができる、
現在のユーザは元々携帯に慣れた人が中心?など。

WIT2008-23 pp.19-24
【汎用コミュニケーションエイドVCAN/1Aのカスタマイズ支援システム】
後述するパネル討論の関連発表。VOCA(Voice Output Communication Aid)の開発。
個人の能力や環境・教育目的に合わせて幅広くカスタマイズできる。
障がい児に対するチームアプローチでの支援。カスタマイズ性の検証。
カスタマイズ支援ツールの試作報告。
議論:
VOCA音声に対する相手の反応にも注目すべき?
絵を作るのは別プロジェクトと連携している、
主語・目的語・述語の構文に対応済み、
写真やシンボル・イラストのどれを使うのがよいか?
チームでの議論を体系的に整理すべき?
一人一人の要求に応える教育の問題と、システムの普遍化を切り離して行うべき、など。

(パネル討論)
【地域連携による汎用コミュニケーションエイドの研究開発と知的障がい児・発達障がい児の教育支援】
工学研究者、養護学校教員、言語聴覚士、作業療法士のチームアプローチについて、
それぞれの立場から詳細を報告し、質疑応答。
工学者が専門家に利用法を教えてもらう。「子供に何が必要か」。
全てをVOCAでやろうとしないこと。
支援者が集まって話し合う場がVOCAの開発によって実現された。
ある機能が実現され学習が進むと新たな要求が生まれ、改訂につながる。
本人だけではなく周囲の人が一緒に使う、という状況も起こる。
児童にどんな操作・知覚ができるのか、何を学ばせるべきなのか、
趣味や嗜好を踏まえて専門家が計画を立てている。
教員は「どんな授業がしたいのか」を問われた。
異なる立場のチームだがお互いに妥協はしなかった。

WIT2008-24 pp.25-30
【視覚障害者用位置情報提供システムにおける案内情報提供方式】
視覚障害者の歩行を補助する位置案内システムの開発。
ユーザの嗜好を反映させるために適応ファジイ推論ニューラルネットワーク(AFINN)を使用。
地域ごとに学習する必要がある、といった従来法の問題を解決する提案。
議論:
北が上か進行方向が上か、といった好みもAFINNで学習可能?
目的は「知らない場所」「道案内」ではなく「現在位置を知らせること」。
階層分析法(AHP)も使われているがAFINNとの関係は?など。

WIT2008-25 pp.31-37
【視覚障害者用スクリーンリーダのフォネティック読みに関する研究 ~ 小学生の語彙を考慮した仮名説明単語の選定】
スクリーンリーダで仮名を正しく聞き取らせるための「仮名フォネティック読み単語」の検討。
小学4年生を対象に親密度評価実験を行い、「和文通話表」などの従来手法に対する代替単語を提案。
議論:
なぜ小学校4年生を実験対象にしたのか?
晴眼者と盲児の語彙親密度の違いはないのか?(学習基本語彙ならば問題ない?)
親密度を評定することと書き取りで了解度を調べることの差はないのか?など。

WIT2008-26 pp.39-44
【Webページ間の関係に着目した大規模サイトの構造化の調査 ~ 音声ブラウザ利用におけるアクセシビリティの検討 ~】
大規模Webサイトにおいて、複数のページがどのように配置されリンクされているかを、
アクセシビリティの観点から検証。2つの自治体サイトを対象に、
トップページからの分岐数やリンク数を調査。木構造から逸脱する冗長リンクの分析。
大規模Webサイトの構造に関するいくつかの改善提案。
議論:
対象としたサイトのアクセシビリティの善し悪しはどうなのか?実際にユーザが迷った例との対応は?
階層やリンクの意味や表記など定性的な検討も必要では?冗長リンクの分類が興味深い、など。

WIT2008-27 pp.45-51
【ネットワーク経由で電子楽譜から点字楽譜を生成する自動翻訳システム】
視覚障害者が用いる点字楽譜を生成するシステムの報告。
MusicXMLを入力し、楽譜表現の多様性を解釈し共通表現に変換。
さらに点字楽譜特有のルールを適用して出力。Webブラウザから使用できる。
評価の結果、翻訳性能は高いが点訳者の評価は必ずしも高くない。
議論:
点字楽譜のユーザ数は約200人?求められるジャンルはクラシック中心?
海外から積極的に利用する利用者がいる。
「点訳者の作業を支援する」「不完全でも点訳者不要で使える」の両方のニーズがある?など。

WIT2008-28 pp.51-56
【講義の情報保障におけるキーワード提示タイミングに関する基礎的検討】
遠隔情報保障センター実現に向けた取り組み。
手話通訳の映像と同時にテレビ会議画面に提示するキーワードの作成・提示について。
字幕用のキーワードには不要語が多く両立しない。
満足度の高かったキーワード提示事例を分析したが間に合っていたわけではない。
キーワード提示担当者が手話も読み取っている。
手話通訳者はキーワード提示を予想して手話を行い、指差しなど利用している。
議論:
通訳者本人がキーワードを出せないのか?(手が使えないので困難)
通訳者はすでに4つの画面を同時に見ており、負担が大きい。
通訳者の意見を代弁する字幕オペレーターが必要。
システムはいつ完成する?(研究としてなら提供可能)
複雑さを遠隔スタジオで吸収できるシステムを目指している、
学会よりも授業の方が予稿がないので予習しにくい、など。

WIT2008-29 pp.57-60
【立体映像を用いた遠隔手話通訳システムに関する研究】
奥行きを用いた手話表現もわかりやすく伝えたい。
赤外線方式の奥行きカメラと裸眼立体視ディスプレイを用いた実験。
テレビ会議システムで伝送するためのシステム開発。
議論:
立体視用に眼鏡をかけるとコミュニケーションが難しくなる。
2つのカメラはなぜ左右に配置?(冷却ファンの位置の制約)
スムーズに見せようと加工すればするほど不自然になる?
実験方法に起因する被験者の疲労の影響があった?など。

WIT2008-30 pp.61-66
【手話テキストからの手話文字SignWritingの自動生成】
手話の書記法SignWritingの作成を支援するシステムの報告。
計算機での入力に適した手話表記法を使用。
議論:
SignWritingの必然性は?日本ではどのくらい受け入れられている?
非手指動作の記述はSWMLでは単語単位になるのか?など。

(以上)

今後の研究会のお知らせ

第44回福祉情報工学研究会
日程 2008年10月22日(水)~23日(木)
会場 国立障害者リハビリテーションセンター
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