シンポジウム 「大学の理系学部等における障害のある学生の支援」 講演記録 平成19年9月7日,中京大学 豊田キャンパス 第6回情報科学技術フォーラム イベント企画A-5 編集・発行:独立行政法人 国立特別支援教育総合研究所 はじめに この冊子は、平成19年9月7日に中京大学(豊田キャンパス)で開催されたシンポジウム「大学の理系学部等における障害のある学生の支援」の講演記録です。 国立特別支援教育総合研究所では、平成19年度から2年計画で、独立行政法人 日本学生支援機構との共同研究として「高等教育機関における発達障害のある学生の支援に関する研究」を推進しています。この研究では、支援の評価法の開発と並んで、高等教育機関教職員への啓発を大きな柱としています。そこで啓発事業の1つとして、第6回情報科学技術フォーラム(FIT2007)の中で開催された上記シンポジウムを活用して、佐世保工業高等専門学校の堂平良一先生に発達障害のある学生の支援についてご講演頂くこととしました。 堂平先生以外にも、視覚障害・聴覚障害・肢体不自由のある学生を受け入れた経験のある先生方にご講演頂きました。更に、日本学生支援機構 学生生活部 特別支援課長の谷川敦様には障害学生修学支援ネットワーク事業についてご解説頂きました。これらはいずれも高等教育機関で障害のある学生の支援に携わっている教職員に広く知って頂きたい内容ですので、講演内容を書き起こし、発表資料も挿入しながら冊子にまとめることとしました。 関係者各位におかれましては、大学の理系学部等における障害のある学生の支援に関する一資料としてご活用頂ければ幸いです。 謝辞 お忙しい中、原稿をご確認頂いた講演者の先生方にお礼を申し上げます。 平成19年11月 独立行政法人 国立特別支援教育総合研究所 教育支援研究部・主任研究員 渡辺 哲也 ☆情報科学技術フォーラムとシンポジウムについて 第6回情報科学技術フォーラム(FIT2007)は、社団法人 情報処理学会、社団法人 電子情報通信学会の情報・システムソサイエティ、並びにヒューマンコミュニケーショングループの3団体が主催し、中京大学が協賛して開催されました。このフォーラムは年に1回開催され、情報科学技術に関する研究発表のほか、技術動向の報告や研究者育成のためのイベント企画も併せて実施されます。シンポジウム「大学の理系学部等における障害のある学生の支援」はこのイベント企画の1つとして開かれました。 ☆シンポジウム「大学の理系学部等における障害のある学生の支援」開催要項 企画元研究会:電子情報通信学会 福祉情報工学研究会 会場:中京大学 豊田キャンパス 21号館1階2112号室 日時:平成19年9月7日午前10時-12時 ☆講演4の不掲載について 堂平先生のご講演については、当該学生の将来への配慮から記録の掲載を見送る判断をいたしました。どうかご了解下さい。なお、講演自体はご本人と保護者の了承を事前に得ています。 目次 はじめに「企画の趣旨」 渡辺 哲也(国立特別支援教育総合研究所) 講演1「視覚障害のある学生の受け入れについて」  鈴木 昌和(九州大学) 講演2「聴覚障がいのある学生の受け入れについて」 荒井 隆行(上智大学) 講演3「肢体不自由のある学生の受け入れについて」 鎌田 一雄(宇都宮大学) 講演4「発達障害のある学生の受け入れについて」  堂平 良一(佐世保工業高等専門学校) 講演5「障害学生修学支援ネットワーク事業について」 谷川 敦(日本学生支援機構) 講演者への質問と回答 はじめに「企画の趣旨」 渡辺 哲也(独立行政法人 国立特別支援教育総合研究所 教育支援研究部・主任研究員) <企画の趣旨> インクルージョンの進展に伴い、障害のある学生が一般の大学に進学する機会も増えている。しかしながら、障害のある学生の受け入れのために、大学として支援体制を整えているところはまだ少ない。また、理系の学部においては、実験があったり、数学・情報処理・化学のように専門的用語・記号を使う教科書が多かったりと、受け入れには文系学部とは異なる課題がある。このシンポジウムでは、障害のある学生を指導した経験のある理系の先生方から、受け入れの経緯や支援策などを語って頂くとともに、日本学生支援機構からは障害学生修学支援ネットワーク事業を紹介して頂く。これらの経験談・情報を通じて、理系学部の教員の方々に、障害のある学生の受け入れに関する知識を深めて頂く。 本日は、このシンポジウムにお集まり頂きましてありがとうございます。 障害のある学生の支援というと、これまでは障害児教育講座のある教育学部などが中心となってシンポジウムなどが行われてきました。しかし、障害がある学生が必ずしも障害児教育講座に進むという訳ではありません。それぞれの興味・関心に従って学部を選んでほしい。この電子情報通信学会は理系の学会ですので、理系の学部における支援に焦点を置いております。 まず背景として、1つはまだ障害のある学生の受け入れ支援対策を大学として整えているところは多くはないということと、もう1つ、理系ということに関して言えば、文字だけを扱う文系の学部‐年表とかあるいは地図などがあるのでそう言うと語弊がありますが‐、それに比べて、取り扱うのが大変な実験、あるいは専門的な記号などがある理系学部でどうやって対応をしているのかといったところを、実際に支援をしてきた先生方からお話を頂こうと考えました。 今日お話を頂く方は、必ずしも大学で障害児教育とかを学んできたという訳ではありません。しかし、実際に障害のある学生さんが来られたときに一生懸命対応してこられた。更に、その障害者支援というものを研究テーマの1つにまでされてきた先生方です。そういった先生方のお話を聞いて頂くことで、障害のある学生さんが研究室に入りたいと言ったときに,それは無理だと頭ごなしに考えるのではなく、なんとかやれるんだと自信をもって頂ければというのが一番の思いとしてありました。 今日は5人の先生方にお話をお願いしています。4人の先生方は,視覚障害、聴覚障害、肢体不自由、そして発達障害というそれぞれの障害のある学生さんを受け入れてきました。その先生方に、受け入れの経緯‐受け入れる前、そして受け入れてから大学とどう交渉してきたかとか、そういったことも含めた実際の出来事をお話して頂きます。そして最後の5番目に、日本学生支援機構の谷川先生から、今、この機構で進めている障害のある学生の修学支援ネットワーク事業というもの、その支援内容、あるいは支援メニューなどを紹介して頂く予定になっております。 講演1 「視覚障害のある学生の受け入れについて」 鈴木 昌和(九州大学 大学院 数理学研究院・教授) <講演概要> 講演者自身が九州大学数学科、及び大学院数理学研究科で視覚障害学生を受け入れたときの経験と、国際基督教大学で物理学科に視覚障害学生を受け入れたときとそれ以後の取組について、同大学の吉野輝雄教授から伺ったお話などを踏まえて、理系分野で視覚障害学生を大学で受け入れるときの課題について、人的な側面と技術的な側面、予算的な問題などを含めて話をする予定である。 1.はじめに おはようございます。今日はまず、数理学研究院の私がこの話をすることになった今までのいきさつを含めて自己紹介をさせて頂きます。講演要旨1)では事例的なことを述べずに、私が今までの経験から思ったことを、理系の視覚障害者を受け入れるときの色々なことを、技術的なことも含めて丁寧に紹介させてもらいました。その中で特に強調したいことが1点ございますが、それについて少し触れた後で、九大(九州大学。以下、同じ)で私自身が関わった範囲の事例を述べて、それから全体的な問題点等について少しおさらいした後で、ネットワークの必要性というところを課題として取り上げたいと思います。 2.自己紹介 [図1、ここから] 自己紹介 1995 数学科の全盲学生と出会い、LaTeX 文書の自動点訳ソフト試作 1996 九州大学数理学研究科で全盲の学生の指導教官 1996〜2007 数式を認識できるOCRソフトウェア開発の研究 → 数理情報処理システム研究グループ (InftyProject) 2005(年末)理系分野の視覚障害者支援のNPO設立 (sAccessNet) [図1、ここまで] 自己紹介ですけれども、私は数学をやっておりました。1995年、もう大分前ですけども、私が担当した訳ではないのですが、学部に全盲の学生がいました。数学の学生でした。この学生を受け入れた先生から相談を受けておりました。たまたま私がその頃、数学用のエディタ(の開発)に関わっていたものですから、LaTeXの文章を自動点訳するソフトができないかということで相談を受けて試作しました。大学院の学生を使って試作しました。これは学生に急いで作ってもらったものですから、公開するまでは至っておりませんが、ある程度使いました。 その全盲の学生は元もとトポロジーをやっていたのですが、大学院に進学するときに私のところに入学してきました。大学院では専門を変えて、情報処理をやりたいということでした。そういうことで私が指導教官になりました。そして、理系の視覚障害者を取り巻く環境というのが非常に難しいものであることを知りました。当時は、OCRが使われ始めた頃でした。文系の学生の場合、(教材が文章中心なので)比較的容易に文書にアクセスできるのですが、理系の場合は数式があるので、アクセシブルな文書が容易に得られないという状況で、私自身、非常に困ったわけです。そこで、一緒に数式認識の研究を始めようとなりました。 ちょうどその学生が入ってきたときに、2人一緒に進学して来ましたので、私も大学院の1年生になったつもりで、3人で情報処理の研究から、パターン認識の初歩から研究してシステム開発をしてきました。その後、彼が卒業した後も、数理情報システム研究という、複数の大学の研究者から成る研究グループを作って継続してきました2)。その中で色々、数学用のエディタとか、数式を認識するソフトウェアとか、あるいは視覚障害者が音声で数式を読んだり書いたりできるソフトとか、そんなものを開発したり、いろんな研究のデータベースの整備とか、そういうことをやってきました。つまり、視覚障害者支援を念頭においた数式情報処理システムの研究を進めてきました。 2005年の末に、開発したシステムを使って実際に支援活動を始めました。電子化サービスや点訳サービスをするNPOを設立して3)、今に至っております。これが私の自己紹介です。 3.苦労したこと 忘れるといけないので一言だけ、講演要旨1)に書いてあることについて説明します。視覚障害者を受け入れた経験から、一番重要だと思ったこと、つまり一番苦労したことです。それは、部局ではなく、1人で受け入れたような形になってしまったことです。非常に色々苦労した経験でした。後で詳しく述べますが、部局として受け入れるということが、非常に重要であるということ。つまり、部局の責任者が積極的に動かないと、重度の視覚障害者の受け入れというのは非常に困難です。 それから、「特別扱いはしない」という言葉の意味。視覚障害者を引き受けたときに、色々ケアしないと対等にやれない訳です。そういうときに、特別扱いしないと言うのは、放っておくことになってしまいます。それによって、非常に困難な状況に陥ってしまうことが実際にありました。その辺りのことを後で詳しく述べます。 4.学部における支援 [図2、ここから] 学部における支援 - 九州大学理学部数学科での受け入れ:教養部数学科主任石川教授の尽力。学習院大学の事例を参考(飯高茂教授の助言)。 - 設備環境整備:パソコン、点字プリンタ、オプタコン、音声合成装置、ピン・ディスプレイ、専用の部屋。 - 講義担当者への指示:指導、試験、レポート… LaTeX を利用。学生には LaTeX 習得を指示 - 教科書等の点訳…点訳ボランティアLBC。 - 学部進学時の困難…3年次で留年。 [図2、ここまで] 九大での事例でが、私はその学生が学部に入っていたときは、実は知りませんでした。その当時の教養部数学科の主任の石川先生が尽力されていました。ちょうどそのときに学習院大学の飯高先生という先生のところに何人か全盲の学生が受け入れられていて、色々なことがなされていたんですね。数学科ではその助言を受けました。学科としてきちんと対応することが重要だ、学習院大学の場合はプリンティングルームという専用の部屋をちゃんと作った、と。その助言を受けて石川先生が、随分世話をされました。 設備環境整備 パソコンがないとどうしようもないということで、パソコンとか点字プリンタ、それから音声合成装置を使って文章を読む、それからピンディスプレイ、そういったものを用意しました。点字プリンタは非常に大きな音がするので、プリンティングルームを作りました。学生とのコミュニケーションにはLaTeXを使うという方針を初めから取ったようです。 講義担当者への指示 学生にはLaTeXを特訓(笑)…、習得をしてもらって、先生は色々な指示をLaTeXで書いて、生徒もLaTeXでレポートを返す。そういう形で授業をやっています。この方法は、数学の講義の場合はいいのですけれど、他の一般教育の講義までこれでやれる訳ではありません。石川先生がもう退官されていましたので、どういうふうにしたのか、詳しく知ることができませんでした。 教科書等の点訳 点訳ボランティアLBCという団体が福岡にもあります。ちょうどその学生が入ってくるよりも何年か前に、法学部に全盲の学生が入ったことがあって、その学生のために結成された点訳グループです。教科書等の点訳はそのグループに頼みました。学生が筑波大学附属盲学校出身だったものですから、附属盲学校出身の人達が使っている数式点訳を使いました。高校の数学の点字では大学のレベルの数学の点訳はできないものですから、ボランティアの人達が決めた専門書用の点訳ルールというのがあるのですが、それをこのLBC‐LBCというのはロー・ブレール・サークル(Law Braille Circle)のことです。設立のいきさつでこの名前が付いているのですが‐その人たちが勉強してくれました。その学生と知り合ったときには、非常に高度なスキルをこのボランティアのグループの人たちは持っていました。その人たちに頼んで点訳してもらいました。教科書1冊を点訳すると、大体3ヶ月かかります。2人か3人で点訳しますが、どんな優秀な点訳グループでも1冊を早くて大体2ヶ月、普通3ヶ月ぐらいかかります。 学部進学時の困難 九大の場合は1年半が教養部で、2年の後半から学部に移ってきます。そのときに引継ぎが必ずしもうまくいきませんでした。教養教育のときには石川先生が、授業ではなるべく声を出してしゃべるとか、そういったことを色々と担当の先生方に指示されましたのでうまくいっていたのですが、必ずしも引継ぎがうまくいかなくて、3年生に上がったときに、結果的にその学生は1年留年してしまいました。 5.大学院における支援 [図3、ここから] 大学院における支援 - 院生室不足:専用の部屋はなし、点字プリンタは倉庫室。 - 情報機器の一新:文部科学省に申請して、ほぼ満額回答。パソコン、80桁のピンディスプレイ、ブレイルライト、電子黒板(ゼミ用)、オープンブックシステム(欧文OCR+読書システム)、その他各種ソフト。 - 専門書点訳費用:2年分。 - 講義:同じゼミの学生と同じ講義を受講、レポートはLaTeXで提出。 - ゼミ:全員、毎回パワーポイントを使用し、事前にLaTeX版も準備、板書内容は電子黒板でコピー出力し、後で電子化。 - 無事、2年で修了し、リコーの情報通信研究所に就職 - 就職後、大学院での研究成果を国際会議(ATCM)で発表。ベスト・プレゼンテーション賞を受賞 [図3、ここまで] 院生室の不足 ちょうどその学生が4年生のときに私と知り合って、さっき言ったようないきさつで大学院に、私のゼミに入ってきました。4年生のときには専用の部屋をプリンティングルームを持っていたのですが、大学院の私の建物は部屋が狭くて、大学院生室が構造的に足りないような状況でしたので、専用の部屋はありません。だから点字プリンタは倉庫に押し込んで、そこで印刷してもらいました。 情報機器の一新 こういう申請書を書いて文科省に色々申請して、設備的なものは全て更新してもらいました。そのときには機器だけじゃなくて、専門書点訳の費用というのもかなり計上して認めてもらいました。ブレイルライトというのは、電子手帳ですね。教室に持って行って、教科書を読んだり、同時に書いたりすることができる電子手帳です。これが大活躍しました。1つ1つどういう機器をどういう目的で必要なのかっていうのを、受け入れ教官が丁寧に書くということが大事で、これを全部、1つ1つ理由書を付けて申請しました。日本の行政機関というのは、比較的こういうところは、ちゃんと理由付けして申請すれば、ほぼ満額に近い形で予算を認めてくれました。大学院に入るときもそうですけど、だいたい入学時からあるんですね。2年目、3年目っていうのはだめなんですけれども。 講義 講義は、同じゼミの学生がちょうどいたものですから、全て同じ講義を受けてもらって、レポートについては、先生方に情報が流れていたので、LaTeXを使って学生と色々とやっていました。 ゼミ 私のゼミでは、ほとんど全員、それ以前は板書とかやっていたのですが、それを一切止めて、パワーポイントまたはLaTeXを使うという形で、事前に電子文書を準備させて、渡した形でやりました。板書した内容は、後で再現できるように電子コピーを取ります。そのために電子黒板を買ってもらって、それでどんどんコピーしておいて、後で整理して、本人が自分で整理するという形、友人が手伝って整理するという形でやりました。大学院ですから丁寧に読むのではなく、少しずつ読むものがたくさんあったのですが、そういうのはほとんどLaTeXに打ち込んでコピーしました。LaTeXに打ち込むには、その電子化の費用をもらったので、アルバイトを雇ってやりました。 就職 その学生はリコーの情報通信研究所に就職しました。就職してすぐぐらいに、大学院で研究した内容を国際会議で発表して、ベストプレゼンテーション賞をもらいました。2人でやったんですけどね。目が見えなくても、ベストプレゼンテーション賞をもらうような結果で、まあうまく行ったのではないかと私は思っております。 6.実験系の場合 私の場合は数学でしたので、実験はほとんどありませんでした。学部内の実験もどうしたのか、実は知らないのですが、実験の場合は非常に大変だろうと思います。私は経験が全然ないので、色々友人に聞いて、国際基督教大学(ICU)でそういう学生を受け入れたことがある吉野先生を紹介して頂いて、お話を聞きに行きました。これは少し前の話です。その学生さんはICUの物理学科に入りました。そのときは学科で受け入れるかどうかという議論を随分されたようで、結果的にはその学生を受け入れるためのプロジェクトチームを作った。これが非常に良かったのじゃないかと思います。 非常に詳しいレポートがICUから残されています4)。冊子体になっていまして、1つずつの実験をどのように行ったのかという詳細な記録です。それだけじゃなくて、色々な教材をどのように準備したかとか、一緒に実験をした人のコメントとか、サポートしたときのコメント、それから財政面でどういう措置をしたかとか、非常に詳しい報告書です。これは非常に参考になると思います。特に理系の大学で視覚障害のある学生を引き受ける場合には、ぜひ読まれたらいいのではないかと思います。入手先はICUの吉野先生のところです。まだ残部があるようですので、必要な機関があればお問い合わせ下さい。ぜひ増刷するなりしてほしいです。視覚障害の方にも読んでもらいたいかな。点訳できるといいなと私は思っています。 7.課題 [図4、ここから] 課題 - 部局として対応することの重要性。 - プリントルーム等の部屋の確保、予算措置。 - ノート・テーカーなどの同学年学生による支援体制の構築。 - 教材準備の支援体制(学生、点訳ボランティア)。 - 講義担当者への助言。 - 学部と大学院での相違点。 - 大学では教科書・参考書のしっかりした点訳書の準備が極めて重要。 - 大学院では論文などを迅速に読む必要があり、点訳では間に合わない。 - 本人のスキル。 - 情報機器によるリテラシーのしっかりした能力を身につけることが重要。 - 支援ネットワークの重要性。 - 受け入れ経験のある大学でのノウハウの蓄積。 - 学内で情報・ノウハウの共有。 - 学生同士のネットワークの育成。 - 学習環境上の問題解決法。 - 進路(進学・就職)に関する情報交換、等々。 - ソフトウェア。 - 実用化されている理系文書処理用のソフトウェア。 1. 数式も認識できるOCR。 2. 晴眼者と視覚障害者がコンテンツを共有できる数学文書エディタ。 - 触読図制作の自動化・効率化…今後の課題。 - 望まれるハードウェア。 - 2次元的な図を表示できるピン・ディスプレイ。ドットビューは画面が小さく、高価。 - カード型の小型ピン・ディスプレイ。東大のポリマーを使った点字ディスプレイのプロトタイプ。 [図4、ここまで] ちょっと前後しますが、部局として対応することが非常に重要です。つまり部屋を確保することが絶対に必要です。そのための予算措置とか。理系の場合はどうしてもボランティアによる点訳だけだと絶対に足りませんので、色々な情報機器が必要になります。コンピュータが必要になるし、音声で読む機械、ブレイルメモ、ピンディスプレイも必要になります。そういったものを学生個人で負担することは不可能ですので、そういうものを部局として申請して獲得することが必要です。 それから、最も重要なのはノートテイカーだと思います。九大の場合は、それを用意することができませんでした。同じ学年の学生による支援体制の構築が、非常に重要だろうと思います。同じ授業を聞いた人が取ったノートが必要です。理系の授業の場合は数式をいっぱい使いますから、今でも必ず黒板を使います。しかも、数式を音声で読みながら書くという習慣が、日本人の場合はほとんどありません。私がその学生たちに講義したとき、初めのうちは気をつけて読んでいるつもりなのですが、話が進んでいくうちにどんどん飛んでしまった。結局そういう部分が出てきちゃうんですね。なので伝わらない。だからノートテイカーが必要です。グループでノートテイクすることが必要ですね。 その他にも(留意事項が)色々あります。大学院と学部で違いが非常に大きいのは、学部では教科書・参考書のしっかりとした点訳書が重要なのに対して、大学院では迅速に読む必要があるので、点訳では間に合わないという状況があります。それから理系の場合は特に情報リテラシーに関して、しっかりと能力を身につけることが重要だと思います。受け入れた大学にノウハウが伝わる仕組みが、まだあまりできていないと思います。これをしっかり構築していくことが重要じゃないかと私は思います。 最後に1つだけ。こんなもの(サマーキャンプの紹介)もあります(図5)。 [図5、ここから] 科学へジャンプ・サマーキャンプ - 対象:重度視覚障害をもつ中学生、高校生(大学生も可)。 - 日時:2008年8月22日(金)〜25日(月)。 - 内容: 1. 情報機器を活用したリテラシー研修。 2. 音声や点字ディスプレイによる理系文書読み書き体験(参考書、試験問題、啓蒙的科学読み物など)。 3. 視覚障害学生間の交流。 4. その他(触れる美術館・博物館など)。 - 参加者と引率者1人分の交通費・宿泊費…全額主催者負担。 - 主催:NPO法人「サイエンス・アクセシビリティネット」、等。 - 協賛:多くの視覚障害者支援関連団体、企業。 [図5、ここまで] 参考文献 等 1) 鈴木昌和, 理系分野における視覚障害のある学生の受け入れについて, FIT2007講演論文集, 2007. 2) InftyProject: http://www.inftyproject.org/ 3) サイエンス・アクセシビリティ・ネット: http://www.sciaccess.net/jp/index.html 4) 吉野輝雄他(共同編集)、"明日への大学"続編<ICUにおける一盲学生の物理実験・化学実験履修の記録>, 1986. 講演2 「聴覚障がいのある学生の受け入れについて」 荒井 隆行(上智大学 理工学部・教授) <講演概要> 過去に聴覚障がいのある学生を2名受け入れた経験から、その支援について述べる。1名は大学入学から修士課程まで6年間、もう1名は社会人入学で博士課程4年間(1年休学)の在籍であった。大学のサポート体制としては、講義における情報保障としてノートテイクや手話ボランティアの仲介等があった。教員にも協力を呼びかけ、黒板を向いて話さない、口はハッキリと動かして話すなどを徹底して頂くほか、場合によっては補聴器用のFMワイヤレスマイクの使用をお願いすることもあった。専門の講義では数式が多く登場することもあり、特に大学院になるとボランティアは理系学生が中心となった。 また研究室の中では、メンバーによるサポート(PC要約筆記を含む)が自然な形で行われ、チームワークにより国際会議を含む学会発表なども大きな問題なく対応できた。研究室のメンバーの「伝えたい」「分かりたい」という気持ちから、バリアフリーな環境が自然に築かれた。 1.はじめに 上智大学の荒井でございます。それでは聴覚障がい者の受け入れについて、ご説明したいと思います。私は過去に2名の聴覚障がいを持っている学生を受け入れたことがございます。今日の話は、主に大学のサポート体制、例えば講義における情報保障の問題、それから研究室における対応についてです。理工系の学生になりますと、やはり研究室での活動というのが1つの柱になりますので、その話もしたいと思います。 2.学生について 1名の学生は、学生Aとさせて頂きますが、2歳1ヶ月で難聴と診断されて、その後、2歳11ヶ月から4歳8ヶ月の間に繰り返し聴力の変動がございました。最終的に右耳95dBHL、左耳105dBHLの重度の感音性難聴となりました。 学生Bは、6歳のときに左右の聴力レベルが約60dBHL。その後、徐々に聴力が低下いたしまして、社会人ドクターとして入学されたとき、左右の聴力レベルが100 dBHLを超えておりました。このような2名です。 学生Bは、今申し上げましたように、社会人ドクターとして2001年に入学しまして、1年間休学を含め、4年間在籍しておりました。学生Aは学部へ入学して、1996年のことですけれども、それから6年間、修士課程を修了するまで上智大学におりまして、この丸印の付いているところが、私の研究室でこの2名の学生と密に接した時間になっております(図1)。2人とも補聴器と口話を併用し、日常会話ならばほとんど聞き取れ、それから学生の発話自体は非常に明瞭で、ほとんど問題ありませんでした。 [図1、ここから] 学生の在籍状況 <学生A> 大学入学(1996年)から大学院修士課程卒業まで6年間在籍 <学生B> 社会人入学(2001年)大学院博士課程に4年間在籍(そのうち1年間休学) 学生Aと学生Bの在籍期間が2年間かぶっている事を示す図 [図1、ここまで] 3. 受け入れにあたって まず受け入れにあたって、学生Aの場合は、入学を許可される時点で大学からのサポートが得られない可能性もあるということを告げられ、それを了承の上、入学をいたしました。学生Bの場合は博士課程の入学でしたので、受け入れ教員である私との話し合いで、本人が補聴器のためのアルゴリズムを開発したいということでしたので、研究テーマが一致するということで、受け入れを決めました。博士課程の場合には、必要な講義科目はほとんどありませんので、研究活動が中心になります。それで今日の話は、主に学生Aについてとなります。 学生Aが入学した当時の背景といたしましては、すでに他の学科に聴覚障がいを持つ学生が在籍しておりました。そして、ノートテイクなどのサポートを受けていました。当初は有志の学生団体が中心で、ノートテイクや手話通訳、ボランティアを斡旋していました。そこに大学が協力し、紙とペンの支給、ボランティアの募集窓口を設置するなどの協力体制ができあがってまいりまして、徐々に大学主導の運営へと移行していきます。 4.講義における情報保障 [図2、ここから] 講義における情報保障 - 教員への呼びかけ:「背を向けて話さない」、「口はハッキリと動かして話す」などを徹底 - 設備など:教員がマイクを持ち、FMワイヤレスシステムを通して補聴器へ音声を直接届ける - ノートテイク・手話ボランティアのサポート:ボランティアを募る(窓口:学生有志団体、学生部(当時)、学科・専攻事務室)但し、ノートテイクや通訳を保証するものではない [図2、ここまで] 講義における情報保障としては、まず教員に呼びかけ、背を向けて話さない、口をはっきりと動かして話すなどを徹底してもらいました。特に1点目の「背を向けて話さない」に関しては、黒板に板書をする際、黒板に向きながら話しますと、どうしても口元が見えないということで、話すときは「必ず前を見て話す」というふうに、徹底してお願いいたしました(図2)。 設備としては、後になってから学生Bのために、FMのワイヤレスシステムを大学に購入してもらいました。教員がマイクを持ちまして、この教室でも今、私はこのようにマイクを持っていますが、この他にそのワイヤレスシステム用のマイクを2つ付けるような形でマイクを持ちまして、ワイヤレスシステムを通して補聴器へ音声をダイレクトに届けるということが可能になりました。 それから、ノートテイクや手話ボランティアのサポートということで、ボランティアを募るわけですが、このボランティアを募るということは、同時にノートテイクや通訳を保証するものではないというところが、1つのキーになると思います。講義科目における学生の実感としては、一般教養に関しては、上智大学の場合に様々な学部があり、ボランティアを得られやすいということで、十分なサポートのもとで学習ができたと言っております。ただし、専門科目に関しては、理工系の場合には数式がたくさん出てまいりますし、それから専門用語が複雑になってまいります。本人が講義後に個人的に教員や先輩に聞いて学習するというようなことをせざるを得なかったようです。大学の支援は十分とは言えませんでしたが、学生Aは、周囲に助けられながら学生生活を乗り切りまして、本人の努力も大きく、なんと学科を主席で卒業いたしました。 [図3、ここから] 研究室での活動サポート - 音声、聴覚、音響などをテーマとする研究室:元もとそういうことに関心の高い学生が多い - 「伝えたい」「分かりたい」という気持ち:自然にバリアフリーな環境へ - PC要約筆記などのサポートも自然な形で - 積極的に手話を覚えようとする仲間も - ミーティング時や、研究指導において - 発言者はハッキリと発話 - 要点はノートテイク - 数字やアルファベット等には指文字も併用 [図3、ここまで] 研究室での活動はどうだったかと言いますと、私どもの研究室は、元もと音声、聴覚、音響などをテーマといたします研究室ですので、そういうことに関心の強い学生が多かったというのが特徴的かなと思います。伝えたい、分かりたいという気持ちが非常に強く、自然にバリアフリーの環境が構築されていきました(図3)。研究室のミーティングでは、PC要約筆記などのサポートも自然な形で行われまして、積極的に手話を覚えようとする仲間も現れました。発言者ははっきりと発話する、要点は仲間がノートテイクをする。数字、アルファベット、あるいは固有名詞なども聞き取りが難しいのですが、指文字などを併用してコミュニケーションを行いました。 [図4、ここから] 学会発表のサポート - 口頭発表 プレゼンテーションは本人が行う。質疑応答時は、聴衆の質問内容を仲間が要約筆記 それを見ながら、本人が質問者に答えを返す。 - ポスターセッション 質問を画用紙に書いてもらったり,ジェスチャーを交えて会話をしたりすることで質疑応答 仲間のサポート(共同研究者と複数で発表)。 - 聴講 隣で要約筆記して「聞き取り」をサポート [図4、ここまで] 更に修士の学生などになりますと、学会発表というのがあるかと思いますが、学生Aはそれも見事に成し遂げました(図4)。口頭発表の場合は、プレゼンテーションは本人が行います。質疑応答が問題なのですが、仲間が出てきて聴衆の質問内容を要約筆記して、それを見ながら本人が答えるというようなスタイルを取りました。ポスターセッションになりますと、face-to-faceのやり取りになりますので、こういう大きな板の上に画用紙を乗せて、それを首から掛け、質問を直接その画用紙に書いてもらったり、あるいはジェスチャーを交えて会話をすることで、質疑応答を乗り越えました。1回は国際会議でも発表をいたしましたが、なんとかうまくいきました。共同発表の場合には、共著者のメンバーがサポートしながらポスター発表するというようなことも可能でした。レクチャーなどの聴講に関しては、隣で要約筆記するなど、聞き取りに関してサポートを行いました。 学生自身の研究は、「自分と同じ障がいを持つ人々に役に立つような研究がしたい」、こういう強い意志がございましたので、卒業研究は聴覚障がい者に対する聞こえの改善というテーマに取り組みました。そして大学院に進学しました後は、8ヶ月アメリカ留学も経験いたしました。現地の小学校でPCを用いたコミュニケーション能力を高める学習をサポートし、教材となったソフトウェアシステムを大学院で学びました。現地では健聴児も聴覚障がい児もいっしょに学ぶインテグレーション教育を目の当たりにし、構音時の‐発話時のですね‐音声器官の動きが分かるような、肌が透けて、中の舌の動きなどが分かるような、そういうトーキングヘッドを含んだ教材、これを使っておりましたので、これをぜひ日本にも導入したいということで、日本語化の研究をいたしました。それが修士論文となりました。 5.2人から得たもの [図5、ここから] 2人から得たもの 聴覚障がい者の視点やニーズに気づく - 聞き取りやすい音声への加工処理やその他の補聴処理等の研究 - 実験協力者としても貢献(存在意義) - 「評価者」として実験に参加 - 「刺激音」を試聴してフィードバック - 体験に基づくアドバイス、コメント - 自分たちの研究が社会の中でどのように役に立つのか実感 - 具体的なイメージが湧き、必要性を感じることができる - おのずと研究にも熱が入り、目的意識を持って取り組める [図5、ここまで] さて、仲間のサポートに関してお話してまいりましたが、反対に2人から得たもの、これも非常に大きく、他の学生も貴重な経験をいたしました(図5)。研究にも深みが増しましたし、聴覚障がい者の視点やニーズに気づかされるということも多くありました。音声を加工して、聞き取りの実験を行うということがあるのですが、補聴器のアルゴリズムを開発したり、その他の音声処理を開発する上で、必要な実験です。聴覚障がいを持つ学生が「評価者」として実験に参加し、刺激音を視聴してフィードバックを行う。2人から体験に基づく生のアドバイス、コメントをもらうことができ、自分たちの研究が、社会の中でどのように役に立つのかも実感できたようです。具体的なイメージが湧き、必要性を感じると、おのずと研究にも熱が入り、目的意識が高まるように感じました。このように研究室の仲間の温かい支援があったのは確かですけれども、同時に他の学生も聴覚障がいを持った学生たちから、大きなものを得たと思います。 6. 課題など‐当時を振り返って [講義保障制度] 講義保障制度の流れをまとめてみます。過渡期でもあったということで、大学も試行錯誤しておりました。1996年に学生Aが入学した当時、学生有志団体中心の運営が行われておりました。聴覚障がいを持った学生の在籍学科の協力、これは受付窓口、文書作成、経費負担、会議場所の提供等でした。大学の協力としては、文書作成、経費負担、紙の支給、ペンの支給というのがありました。それから1997年に窓口が大学‐これは当時の学生部ですが‐に移行いたしました。学生Aが卒業する2000年までこの体制が続いたのですが、2000年になりますと、1人になってしまった聴覚障がいの学生が大学院に進学するということで、窓口が学生部から「今度は専攻で対応してください」ということで、個別対応に逆戻りする。これに対して私と学生Aは、それは困るということで学校に対して要望書を提出し、学長と面談をしました。 [教育を受ける権利] この要望書がどういうものであったかというと、「教育を受ける上で適切な環境を得られる権利を求めて」というものでした。その学生Aの理想としては、1コマに通訳2名希望。受講者がノートテイクなどをするのでは、その学生の勉学に支障が出てしまいますので、やはり別の人を。ただし専門の科目になると「別の人」といっても内容が分からないと要約筆記はできませんので、ある程度は内容に精通している者。非常に難しい条件になりますけれども、「大学として」ではなく、「学科」や「専攻」という小さな組織に窓口が移ってきたということで、そういう意味では専攻の中でボランティアを募集するというのも、同じような科目を履修したことがあるような学生がおりますので良かったのかもしれませんが、どうしても見つからないこともありました。ニーズも限られておりますし、本人は友人にノートを見せてもらったり、先生へ個人的に質問をするということで、時間的にも精神的にも大変な負担になってしまいました。 [教職員全体の意識の向上] また、こんなエピソードがございます。卒業式のときに、総代だったこともありまして、先生の話や、送辞、答辞、これらの言葉を聞きたいという本人の強い希望がございました。そこで手話通訳ボランティアを探し、1名を確保できましたので、式場内での手話通訳用のスペースに関して大学へ相談したところ、担当者からは難色を示されました。交渉の末、最終的には許可されたものの、担当者による個人的な見解があまりにも違うということをこのときに実感いたしました。手話通訳のおかげで、学生Aも感慨深い卒業式を迎えることができましたし、理事長の言葉の中には「本学らしい」と手話通訳を歓迎するコメントもありまして、私も一教員として大変嬉しく思いました。交渉の難航ぶりが嘘のようでしたが、教職員全体の意識を高めていく重要性というものを感じました。 [大学の責務範囲] 多様化するニーズの中で、迅速な対応が求められています。学生にとっては今が大切であり時間は待ってくれない。どこまで大学として責務を負ったらいいかという問題が、課題としてあると思います。予算を含め課題は多いですけれども、できることから始めるしかないのでしょう。最低限、大学として「相談窓口」や担当などの組織化を進め、学生が「思い」を伝えられるルートを確保すること、支援へのシステム作りを学校として整備していく必要性を感じました。当時を振り返って、このように思います。 7.現在の支援体制 [図6、ここから] 現状の支援体制を表す模式図。 (詳しい内容は本文を参照) [図6、ここまで] 現在はと言いますとこのような体制になっております(図6)。学生総務担当副学長が全体を統括しておりまして、学生センター(あるいは学事センター、学科など)が学生からの相談を窓口として受けます。各部署は、常に副学長の管理の下に、例えばハード面の補助、必要なもの(紙、筆記用具、コピーカードなど)を配布したり、文書を作成したり、講義における配慮や願いの文書、マニュアルを印刷したり、こういった支援を行う流れとなっています。 同時に、学生センターの中にはボランティア・ビューローという組織がございますので、通訳者の募集などはセンター内のボランティア・ビューローに仲介してもらって、通訳者の募集をかけてもらう。掲示やメール配信で学生ボランティアを募ってアレンジしているようです。 同時にボランティア・ビューローでは、啓蒙活動として、ノートテイク講座、手話講座、車椅子講座などを行っておりまして、日頃から学生が、あるいは教職員がボランティアというものを意識する、あるいは学ぶ、そういう体制ができつつあります。ただしこれ、先ほども述べましたけれども、仲立ちをしてアレンジをしてくれるところで終わりでして、必ずしもノートテイクや手話通訳を保証するものではありません。そこまでいければ良いのですが、現在はまだ至っておらず、今後の課題となっております。 8.おわりに 学生Aがこんなことを申しておりました。「私のように、講義保障という概念を全く知らずに入学する障がい者もいる。私は、幸い2年上の先輩が道を開いていたので色々教えて頂くことができた。入学してきた障がい者本人が望む、望まないに関わらず、また、大学としてそのときはサポートが可能かどうかに関わらず、さまざまなサポート方法があることや、各種団体の存在など、情報を公開して頂けると嬉しい。」 入学後、支援を必要とする学生が2人に増えたということでボランティアも2倍必要となり、新たな問題も浮上しました。色々ありましたけれども、後年、卒業式で要望を出したり、あるいは制度が変わったときに学校に嘆願したりと、「講義保障」を知らなかった入学前とは違って、仲間と共に積極的に学校へも交渉してきました。そういった意味でも、「このような学会で様々な先生方が、障がい者について取り上げて話し合われるということは素晴らしい」と申しておりました。私もこのような機会を設けて頂いたことに対して非常に嬉しく思うと同時に、今日お招き頂いたことを感謝して、私の発表を終わりにしたいと思います。ありがとうございました。 講演3 「肢体不自由のある学生の受け入れについて」 鎌田 一雄(宇都宮大学 工学部・教授) <講演概要> 肢体不自由のある学生2名を学部卒業研究(OM君)と、大学院博士前期課程(NM君)で指導した経験から、肢体不自由のある学生の大学での受け入れの課題などについて述べる。受け入れた学生2名は、ともに進行性筋ジストロフィーの傷病を持っており、車いすを利用していた。また、自立的移動は不可能であらゆる場面で支援者を必要としていた。2人には身体機能上の違いがあったが、研究室内ではさほど大きな差異はなかったと考えている。また、研究室で過ごした他の学生も、対応を特別なものとは考えていなかったと思っている。 ここでは、当事者間の個人的な関係、周囲の小さな組織との関係、および大学という大きな組織との関係に分類して課題を整理し、説明する。これらの課題には、単純な物理的な環境課題だけではなく、一緒に生活するという行為に対する人的な関係におけるバリアなども含まれる。 1.はじめに 宇都宮大学の鎌田でございます。肢体不自由のある学生の受け入れについて、お話をさせて頂きます。話の組立てですが、まず事例の概要です。私は筋ジストロフィーの学生2名を受け入れましたが、学部から入ってきた時点から全てフォローしている訳ではありません。1名は卒業研究、これはインフォーマルと言いますか、公式な所属は私のところではないのですが、実質的に卒業研究として受け入れました。それから通常の大学院生として受け入れました。このように2名を受け入れた訳です。その中での受け入れの課題等について、教員の問題、研究室全体の問題について、それから先ほども出ましたが、組織として‐例えば学科、学部とか大学全体というところ、私が感じた課題について説明をさせて頂きます。それから障害への対応としては、特定のその個人と組織というものとの関係みたいなもの。それから関連することについて話させて頂きます。まとめはここに少し書きましたけれども、個人の経験と組織の位置と書いてあるんですが、まさに先ほどの鈴木先生のご意見と同じでですね、蓄積が全然ないというか、そういうメカニズムが、組織としてほとんど作られていないというのが私の率直な感想です。 2.事例の概要 [OM君の事例] [図1、ここから] OM君(卒業論文指導) - 進行性筋ジストロフィー - 人工呼吸器・車いす - 生活は全介助 通学(車移動)は家族が支援 - 講義中も介助 - 発話可能、1スイッチ(親指)入力装置使用 - 卒業論文1年間+その前3年間のつき合い - 卒業後もつき合いが続いた [図1、ここまで] 2名の受け入れなのですが、最初、卒業研究、卒業論文の指導をしました筋ジストロフィーの学生なのですが、私の研究室に入ったときには、すでに人工呼吸器をつけていました(図1)。車椅子で、自分ではもう動けませんので、全介助でした。通学は全部家族が支援して、車で移動して研究室まで来て、という形です。3年の頃から私の講義を聞いたりしておりまして、学科の他の教員の講義も聞いてたんですが、講義中も全部介助ということで、実はお母さんと支援の人達がときどき入ってきて、介助されていました。人工呼吸器をつけていたんですけれども、発話は可能で、呼吸器のタイミングがありますが、かなりクリアな発声ができました。これは、筑波技術大学の岡本先生にお願いをして、音声認識ができるかどうか実験をやりました。そしたらかなりきれいにできるくらいの発話はありました。ただし、コンピュータの使用については、親指操作のワンスイッチだけで、入力装置は特別なものを使っておりました。 研究室での付き合いは、卒業論文で1年間だったのですが、その前、実は3年ぐらい付き合いがありました。それから卒業の後も付き合いが続きました。かなり長い間、色々とやりとりをしました。 [NM君の事例] [図2、ここから] NM君(修士論文指導) - 筋ジストロフィー 車いす 生活は全介助 - 講義中も付き添い - 発話可能、キーボード使用 - 研究生で半年+修士論文2年間+その前1年間 - 通学は家族が支援 [図2、ここまで] それからもう1人の学生なんですけれども、修士論文の指導で受け入れました。やはり同じように筋ジストロフィーで車椅子を使用していました(図2)。これは電動ではなくて普通の車椅子でしたが、自分で動かすことができませんので、全介助になっておりました。やはり講義中、家族の方が付き添い、通学も介助という形でした。発話は可能でした。通常のキーボードを使うことができました。しかし、身体との位置関係が非常に微妙で、これはシーティングも含めて色々と学生と検討しました。実はこの学生は、1年遅れて卒業した後に大学院への進学を希望していたのですが、急に9月末卒業になりまして、半年間、研究生として研究室で研究におりました。それから大学院の2年間、一緒でした。その前にも少し付き合いがありまして、合計で3年から4年ぐらいでした。全て家族が介助という形でした。 受け入れた学生2名は、同じような筋ジストロフィーなのですが、かなり障害の程度に違いがありました。また、障害の程度だけではなく、家族への支援とか本人への支援の環境も異なっておりました。そこは細かい話になりますので、省略させて頂きます。外部からの支援はかなり良好なものになっていたかなと思っております。 [OM君の受け入れ] [図3、ここから] OM君受け入れ時の課題 - 他学部学生の卒論指導(規則なし)に関わる事務的・組織的な対応と関連する処理 - 学科の講義を以前から聴講していた(既に支援者がいた) - 学生と介助者のための部屋 - 受け入れの合意を得るのは大変だった [図3、ここまで] 卒業論文の指導は、先ほども申しましたように、教育学部の学生だったので公式な形ではありませんでした(図3)。工学部情報工学科の私の研究室で卒業研究をしたいということでした。私は事前に話は聞いておりましたので、私自身は何も問題ないと考えておりました。あまり細かいことまでは申し上げられませんが、かなり大変でした。研究室に入ってきて卒業研究を実施するときの研究指導は私がするのですが、教育学部の担当の指導教員が卒業研究の単位認定を行いました。しかし、実質、私の学科で卒論発表をしました。ただ、4年生になる前、3年のときから少し情報工学科の講義を聴いておりましたので、他の教員とも顔見知りで、話もしておりました。実はその辺が、学科で受け入れるときには助けになりました。ここには書きませんでしたけれども、学科の中ではどういうふうな形態で受け入れるかで、色々意見がありました。 受け入れができるようになりましたが、1つだけ事務から意見がありました。工学部の事務から、事務にまず最初に相談してほしいと言われました。この受け入れ後からは、工学部での事務担当者が決まっておりましたので、その人に全部話をしました。そしたら事務で全て判断してくれて、あらゆる事務処理を支援してくれました。そういう意味では組織としてうまくしなければいけないということを、これで私は学習をしました。 [NM君の受け入れ] [図4、ここから] NM君受け入れ時の課題 - 突然の卒業で研究生として受け入れ - 教育学部から工学研究科(情報工学専攻)へ - 基本的には、一般学生と同じ対応と、特別な対応への配慮 - エレベータの定期保守:移動不可能な時間帯 - 建物内の一般学生からの支援 - 大学スタッフからの支援 [図4、ここまで] 次の大学院を受け入れた学生は、正式な私の研究室の学生、修士課程の学生でしたので、何も問題はありませんでした(図4)。入試のときは、ゆっくりですけれど筆記ができましたので、時間延長で試験を受けました。最初の卒業論文の学生とは少し時間的に差がありまして、少し重なっているところもありますが、こちらの大学院生のほうが後になっております。この学生と最初の学生はエレベータで移動しますが、この学生のときは平日にエレベータの点検がありまして、それが講義が終わって、部屋の移動とか研究室に戻るときに重なりますと動けなくなってしまいました。それから、身障者用のトイレが1階にありますが、講義室が2階にありまして、エレベータが止まってると動けないことになりました。これは色々話をした結果、1つは周りにいる学生が、車椅子ごと全部運んでくれました。それから事務とも話をしましたが、事務の方からは少し厳しい意見があって、保守契約の中での時間帯とかも絡んで難しいので、次の年度の契約時のときにはなんとかしましょうという話になりました。支援体制は、組織全体の、公のものは、あまり完璧なものではないのですが、周りの学生等には声を掛ければ、全部やってくれるという雰囲気がありました。学科の建物そのものが1つ独立したものになっておりましたので、そういう面も、色々な形で支援をしてもらいやすかったかなと思っています。 3.障害への対応 [研究室内] [図5、ここから] 障害への対応 - 研究室内(学生との関係) - スムーズな対応 特別なバリアなし - 学生は協力的であったが、障害学生・介助者からは、状況がわからないこともあった - 介助者が聞ける質問には限界がある - 学科内(他の教職員・学生との関係) - 受け入れ後は、スムーズな対応 - 特別なバリアなし 声をかければ支援・協力 [図5、ここまで] 実際に障害者との対応ということですが、研究室の中は、実は私は何も積極的には動きませんでした。こういう学生が来るからよろしくお願いしますと学生に言っただけで、あとはそのときの大学院の学生とか、卒研の学生等が全部やってくれました。研究室内では大きなバリアみたいなものはなかったようです。学生は協力的だったと書きましたけれども、実は学生側から見てるとこれで十分と思っていたみたいですね。ところが本人と支援している家族の方々からは、ときどき話もありましたし、後々からまた色々と話がありました。大学の中の状況については、普通の学生はよく分かってないところがあったということが分かりました。それから支援者自身も、学生と同じようにはやはり分からない。そうすると、学生がしゃべってる内容で分からないところが時々あります。これは事務手続きとかその他色々なものです。研究そのものではありません。しかし、それをどのくらいまで聞いていいのか。もう少し質問したいときにどのくらい質問をしていいのか。その辺のところがよく分からないので、なんとなく質問しないままでいたという話を聞きました。しかし、全般的に研究室の中、あるいは学科全体の学生との間というのはかなりスムーズに行きました。 [学科内] [図6、ここから] 障害への対応 - 学部内(教職員・学生との関係) - 特定の個人はスムーズな対応 - 結構協力的であったが、組織としての対応にはつながらなかった - 大学(教職員・学生との関係) - 特定の個人はスムーズな対応 - 組織としての対応が整備されない - 「何処へ行けば、問題が相談できるか」に対する特別な支援・情報が貧弱 [図6、ここまで] それから学科の他の教職員との関係も、最初に受け入れるとき、1人目の場合は色々あったと申し上げましたけれども、2人目の学生についてはそういう話は全く出ませんで、スムーズな対応であったと思います。これは、障害を持っている学生、あるいは支援者がちょっと声を掛けると、大体なんでもやってくれる環境になっていたようです。私はその当時、全部を把握していた訳ではないのですが、色々話を聞きますと、そのような形になっていたようです。 [組織としての対応] こうお話をしますと、かなりスムーズに行ったんじゃないかと感じられるかもしれませんが、それはある意味で言ったら表面的なところです。やはり、個人的に非常に意識が高い事務スタッフ等は、個別に色々話をして、何か必要なことがあればやるからと、声を積極的に掛けてくれたり、色々としてくれたのですが、組織全体としてどういうふうにするかということについては、全くありませんでした。 組織としての対応に繋がらなかったというところも含めてかと思うんですけれども、卒論で対応した1人の学生は、もう小学校の頃から障害があって、大学へ入ったときにマスコミでかなり取り上げられました。誰もが知っている学生で、その言動といいますか、色々課題があるというのをマスコミが取り上げました。大学側は少し過敏反応に近いような形になっていた部分もありました。ただし、これは、実は組織に対するプレッシャーとしては、非常に良かったかと思います。しかし、もう少し組織全体としての対応が必要だったかなと思っております。組織の対応として整備されていない頃がありました。 もう1つは、先ほど申し上げましたように、どうしても一般の学生ほど情報が入ってこないので、全体のイメージ‐何がどう動いているか、どこへ相談すればいいのかというのが分からないということがありました。どこへ行けばどういう問題が相談できるのかという支援が非常に弱いものとなっていました。卒業研究、修士の研究等で2人と一緒にやりましたが、何か問題があったときは、学部の中で事務の方へ相談しました。しかし、それは組織全体として、うまく体制を作るというような形にはならなくて、対症療法的な形で、その問題が解決したらそこで全部終わってしまうというような形になっていたと思っております。 4.受け入れの波及効果 受け入れの波及としては、実は私の研究室へ受け入れた卒業研究の学生を被験者として、新しいテーマを別の研究室でやり始めたものもありました。研究テーマの領域拡大ということで、他研究室の役に立ったと思っております。また、それがマスコミに取り上げられて、その研究室は大きく新聞に取り上げられたということもありました。それから、先ほど申し上げましたように、障害を持っている学生が、大学で卒業研究や修士課程の研究をしていることで、マスコミの注目がかなりありました。地元紙ですけれども、かなり報道してくれました。そこには大学が見られているという意識はあるのですが、だからなんとかしようという大きな流れには、残念ながらなりませんでした。 5.就職について 就職ですが、これはもう組織としては対応できませんでした。今は就職支援室という組織ができておりますけど、当時はやはり学科、あるいは学科の中でも担当教員がという形が多くて、ましてや10年くらい前になりますけれども、障害を持っている人の求人はほとんどない状態でした。それでも、車椅子で普通に生活ができている人がいたらぜひ紹介してくださいという求人が企業から何件か来ました。しかし、こういう全介助の形の学生に対して、仕事ができるようだったらぜひ採用したいとは、残念ながらなりませんでした。大学院を修了した学生は、大学関係のところで採用して頂けるかどうか、個人的に色々話をしましたけれども、やはり難しいということになりました。 学部卒業の学生に関しては、本人が色々なところで売り込みをしまして、実際にはネット上の記事を何回か書いていたり、連載をやっていたりしていました。また、地元の企業で契約社員として、障害者から見た色々なシステムのインタフェース等の意見を出すということで、短期間でしたけれども仕事をしました。これは支援者の家族から聞いた話なんですけど、ハローワークですか? ハローワークに登録をしたいと言ったら、ハローワークは「それでは来てください。来て書類に書かないと何も動きません」という、非常に冷たい態度だったということで怒っていました。そういうこともありました。 6.組織的な対応へ [図7、ここから] 組織としての知の蓄積 ―個別事例を「共通知」に― - ナンシー・M・ディクソン著、梅本、遠藤、末永訳:ナレッジ・マネジメント 5つの方法ー課題解決のための「知」の共有ー、生産性出版(2003) - 個別的な事例における当事者の対応・努力が、より多くの人たちの活動に役立つようにするには・・・ - 当事者には初めての事例でも、組織には経験済みの事例とするために・・・ [図7、ここまで] 組織的な支援については、本当に大学としてはまだまだ貧弱で、全く進展がないのではないかというふうに感じることもあります。明確な進展が多くない状況かと思います。最後に、先ほどの鈴木先生のご講演と同じで、一人ひとりの関与したところでは、いろんな知見と言いますか、知識とか経験があります。しかし、それらが組織全体として共有できるような仕組みが全く考えられていないというところで、努力した人の知見などが活かされていない。努力の甲斐があったというふうに感じさせるものが何もできていないと思います。私の場合は、組織はなんとか動いてもらえたところもありました。しかし、私の言ったことを理解して、組織の中の特定の個人が、組織としてではなく、組織の中で、なんとか自分の役割の中でそれに対応するという形で動いてくれたことであって、やはり組織として対応していたということにはなっていなかったと思います。 最後に、当事者には初めての事例でも、組織としては経験済みの事例であるという形に、ぜひ受け入れを持っていきたい、もっていくようにしなければならないと思っております(図7)。以上でございます。 講演4 「発達障害のある学生の受け入れについて」 堂平 良一(佐世保工業高等専門学校 一般科目数学・准教授) <講演概要> 本講演では、担任として発達障害のある学生A君と係わった私の体験談と現在行われているA君に対する支援とその効果について報告する。 A君は少し変わっているが理工系の学校ではよくいるタイプの学生である。ただ、実験レポートなどの文を書くことが非常に苦手であった。そのため、レポートの提出が滞ってしまうこと、またそのことを周りから注意されることで自尊心が傷つけられ、ストレスが増幅し、その結果、パニックを起こすようになった。原因の1つがレポートにあったので、適切な学生に彼の学習支援を依頼し、レポートが書きやすい環境を整えるなどの対応を取った。結果として1度留年はすることとはなったが、以前のようなパニックを起こすことは少なくなった。 発達障害のある学生を理解できれば対応策は案外簡単なのかもしれない。しかし、本人の意思を尊重しつつ、保護者や教員、クラスメイトを含めた周りの共通理解を得ることが難関の1つであるように思う。 参考文献等 1) 松尾秀樹,“高等専門学校における取組の実際(支援体制の現在と今後),”高等教育機関における発達障害の学生支援ケースブック, 特殊研報告書B-210, 国立特殊教育総合研究所, 2007. 2) 「高等専門学校での特別支援教育推進事業」(佐世保工業高等専門学校), 文部科学省平成19年度「新たな社会的ニーズに対応した学生支援プログラム」. 講演5 「障害学生修学支援ネットワーク事業について」 谷川 敦(独立行政法人 日本学生支援機構 学生生活部 特別支援課・課長) <講演概要> 平成18年5月1日現在で日本学生支援機構が調査した「大学・短期大学・高等専門学校における障害学生の修学支援に関する実態調査」の結果によれば、1人以上の障害のある学生が在籍している学校は約6割あり、そのうち、障害のある学生が学校に対し支援を申し出て、なおかつ学校が支援を行っているという学校は、約4割あることが明らかとなった。こうした背景については、今後調査が必要であるものの、高等教育機関における障害学生の受け入れ体制は、先進的な取組を進めている大学がある一方で、全体としては十分な体制が整備されているとは言い難い状況にある。 そのため、日本学生支援機構としては、各大学等のネットワークを構築し、障害のある学生の修学支援体制を整備するため、研修、相談事業、研究促進の3本柱として「障害学生修学支援ネットワーク事業」を実施しているところである。とりわけ、全国を11地域ブロックに分けて、先進的な取組を行っている大学を「拠点校」として、全国の大学等で、障害のある学生の修学支援を担当している職員等からの相談に応じる「相談事業」を昨年10月から開始したところである。 こうした取組等を通じ、各大学等における障害学生の受け入れの促進に取り組んでまいりたい。 1.日本学生支援機構について [図1、ここから] 日本学生支援機構の発足 - (特)日本育英会 - (財)日本国際教育協会 - (財)内外学生センター - (財)国際学友会 - (財)関西国際学友会 統合 ⇒ 独立行政法人日本学生支援機構 (独立行政法人日本学生支援機構法による) [図1、ここまで] ご紹介に預かりました日本学生支援機構で特別支援課長を拝命しております谷川でございます。どうぞよろしくお願いいたします。まずもって、独立行政法人日本学生支援機構でございますが、ご存知ない方もいらっしゃるのではないかと思いまして、どういう組織なのかについてご説明いたします。 最近何かと話題となっている独立行政法人は、独立行政法人通則法に基づいて各独立行政法人ごとに法律を定めて独立行政法人が設立されております。日本育英会と聞きますとよくご存知の方も多いかと思いますが、ここにありますように、日本学生支援機構は、日本育英会等の5つの団体を統合して、平成16年4月1日に発足しております(図1)。 仕事としましては、奨学金の貸与の事業、留学生の事業、学生生活支援の事業により大学等を総合的に支援しています。その中で私のおります特別支援課は、新しい仕事として初めて立ち上がった課でございます。それ以外の仕事というのは、育英会が持っておりました奨学金事業、日本国際教育協会等が持っていた留学生事業、あるいは文部科学省で持っていた事業、そういったものを全部統合して日本学生支援機構で仕事をすることになったのですが、高等教育の特別支援教育に関しては、文科省も持っておりませんでしたし、この5つの団体でも持っていなかったということで、全くゼロからスタートし、この4月で4年目を迎えたということでございます。 2.障害学生の修学支援に関する実態調査 [図2、ここから] 障害別障害学生数(障害学生数:4937人) 視覚障害:510人(10.3%) 聴覚・言語障害:1200人(24.3%) 肢体不自由:1751人(35.5%) 重複 :93人(1.9%) 病弱・虚弱:877人(17.8%) 発達障害:127人(2.6%) その他:379人(7.7%) 計:4937人(100.0%) [図2、ここまで] 特別支援課が立ち上がりまして、まず何をすべきかと色々やってきた訳でございますけれども、まずもって高等教育機関において、障害のある学生というのはどれぐらい在籍しているのかというデータが実はございませんでしたので、2年前の平成17年度に初めて調査をさせて頂きまして、2回目の調査である平成18年度のデータをこの5月に発表させて頂きました1)。それがこちらのデータでございます(図2)。対象は大学、短期大学、高専でございまして、大学院も入っており、学生総数は約300万人でございます。300万人の学生のうち、障害のある学生さんは約5,000人、全体に占める割合は0.16%であることがわかりました。障害種別にみますと、視覚が510人、聴覚・言語障害1,200人、肢体不自由が1,751人となっております。先ほど堂平先生からお話がありました発達障害につきましては127人という結果でございますが、この発達障害に関しましては、疑われるという学生は含めないデータを取っています。医師の診断書のある者ということに限定して調査をしています。 [図3、ここから] 障害学生在籍状況(回答校数:1167校) 0人(在籍なし校):497人(42.6%) 1人在籍校:182校(15.6%) 2-5人在籍校:273校(23.4%) 6-10人在籍校:108校(9.3%) 11-20人在籍校:64校(5.5%) 21人以上在籍校:43校(3.7%) 計:1167校(100.0%) [図3、ここまで] 次に在籍学生数別に分類してみたものでございます(図3)。そうしますと、障害のある学生さんが1人もいないという学校は497校で、全体の42.6%。1人は182校というようにだんだん減っていく訳でございまして、2人から5人在籍しているという学校までで、全体の約8割を占めるということになっております。4割の大学等におきまして、障害のある学生がいないという回答になっておりますけども、そもそも受験者がいるのかいないのか、そういった背景等については、実はまだわからないところで、今後こういったことも含めて調べていければと考えてるところでございます。このように数値で示してしまいますと、非常に数値だけに囚われてしまいがちでございますけれども、そもそも大学へ進学するかどうかということは、本人の意思だろうというふうに考えておりますし、どこの大学を選ぶかということも、その本人の意思だということでございますので、結果として全ての大学に障害学生が1人以上在籍するという結果はありえるとしても、必ずしも1人以上の学生が全ての大学等に在籍することを目指すものではない、と考えております。 [図4、ここから] 障害別支援障害学生数(障害学生数:2256人) 視覚:367人(16.3%) 聴覚・言語障害:799人(35.4%) 肢体不自由:722人(32.0%) 重複:36人(1.6%) 病弱・虚弱:199人(8.8%) 発達障害:46人(2.0%) その他:87人(3.9%) 計:2256人(100.0%) [図4、ここまで] 障害のある学生さんのうち、全ての障害のある学生さんが支援を受けているという訳ではありません。大学等に対し学生さんの方から支援を申し出まして、それに対して学校がなんらかの支援を行っている学生‐これを私どもでは「支援障害学生」と呼んでいるのですけれども‐その数であります(図4)。そうしますと、約5,000人の障害のある学生のうち2,256人、約半数ぐらいが学校に支援を申し出て、学校から支援を受けているという結果になっております。これを右側のほうを見て頂きますと、視覚障害と聴覚障害は非常に支援率は高くなっているということになっております。 [図5、ここから] 支援障害学生在籍状況(回答校数:1167校) 0人(在籍なし校):699校(59.9%) 1人在籍校:179校(15.3%) 2-5人在籍校:205校(17.6%) 6-10人在籍校:43校(3.7%) 11-20人在籍校:27校(2.3%) 21人以上在籍校:14校(1.2%) 計:1167校(100.0%) [図5、ここまで] 更にこれを学校数別に見ますと、支援障害学生が1人もいないという学校は約6割でして、1人の学校は179校となっております(図5)。障害学生が在籍している大学等は0人以外の学校数でございますので、そちらは57.4%ありました(図2)。そのうち学生が支援を申し出て、支援を行っている大学は40.1%あります(図5)。ということで、障害学生が在籍しているけれども学生が支援を申し出ず、支援を行っていない大学はその差となる17.3%あるという結果になっております。この実態調査の結果報告書は、お配りさせて頂きましたピンク色の冊子になりますが、まだ2回目ということで、まだまだ調査したいことも沢山あるのですが、参考にして頂ければ幸いでございます。それから、今後はこの調査を通しまして、これから初めて障害のある学生を受け入れる大学等も増えてくるのではないかというふうに考えておりますし、また、現在受け入れている大学等においても、新たな障害種に対応していかなければならないということも予想されるというふうに考えております。また、発達障害に関しましては、今後、大きな課題になるのではないかというふうにも考えております。 3.支援機構の取組 [図6、ここから] 日本学生支援機構の取組 支援について大学等間で情報共有されていない 標準化した情報を支援機構が提供 1.はじめて障害学生を受け入れるにあたって 入学準備から入学後の様々な場面で必要な支援体制や方策を時系列にわかりやすく解説 2.障害学生修学支援メニュー 必要な支援をメニュー形式で情報提供 3.障害学生修学支援のためのFAQ 基本的な疑問にQ&A形式で解答 [図6、ここまで] このような実態調査の結果を踏まえまして、日本学生支援機構として、どういうことに取り組んでいるかということでございます。初等中等教育の場合は、教育委員会があって、そこから指示・命令という形がありますけれども、大学等の場合は、そういう形になっておりません。障害学生の支援は各大学等が独自に取り組んでいるわけであり、先ほどからいろいろ先生方のご報告がありました。大学の中において、個々の先生の取組によるところが大きく、大学としての蓄積はなかなかされていないというようなご指摘もあったかと思いますけれども、日本国全体としてもそういった蓄積はされていないと思っております。そのため、初めて大学で障害学生を受け入れたときに試行錯誤する。ということで、私どもとして、ある程度標準化したものを大学等に提供して、それを参考にして頂いて、大学の方で体制を整備していくものがあれば良いのではないかということで、この1から3の3つのものを、これまでの3年間で作ってきたところでございます(図6)。これから紹介します3つは、全部ホームページに載っております4)。 [初めて障害学生を受け入れるにあたって] まず1つ目の「はじめて障害学生を受け入れるにあたって」2)は、左側の方に目次がございますけれども、こうしたそれぞれの項目ごとに応じて、具体的にどのようなことに注意して進めていけば良いかということをまとめているものでございます。 [障害学生修学支援メニュー] それから「障害学生修学支援メニュー」3)。これは廊下の方にお配りさせて頂いておりますけれども、入試などの項目に分類し、更にそれが障害種別ごとに分類されております。その中で、最低限必要なものはどれか、標準的に整備しておく必要があるのはどれか、できればこれは整備しておいた方が良いのではないか、というランク分けをしてまとめたものでございます。ある程度の参考でございますので、それぞれの障害種、学校の状況に応じて考えて頂くものでございます。例えば視覚障害の場合、入試の時には問題の点訳が必要などの項目が示されており、その項目をクリックしますと、具体的にはこういうような体制が必要で、支援内容はこういうことが必要でしょうということを、もっと詳細にまとめている画面が出てくる、という内容になっております。 [FAQ] もう1つ。FAQでございますが、これは一般的に質問の多いような内容につきまして、質問形式でお答えをしているというものでございます。 [障害学生修学支援ネットワーク事業] [図7、ここから] - 全国11ブロックに「拠点校」を位置付け - 拠点校・協力機関・JASSOがネットワークを構築 - 相談事業、研修事業、研究促進事業を展開 [図7、ここまで] 肝心の「障害学生修学支援ネットワーク事業」でございますが、これは全国の各大学等のネットワークを構築いたしまして、連携を図ることで、大学等における障害のある学生の修学支援体制を充実しようということで、平成18年度、昨年度からでございますけれども、大きく3つの柱でネットワーク事業を構築しているところでございます(図7)。この3つの柱は、研修、相談事業そして研究促進事業でございます。 この事業では、全国を11のブロックに分けて、そのブロックで先進的な取組を行っている大学等を拠点校として位置付けております。現在はこちらにございますとおり、宮城教育大学、日本福祉大学、筑波大学、同志社大学、関西学院大学、広島大学、福岡教育大学、この7校に拠点校になって頂いております。その拠点校をサポートする機関として、独立行政法人の国立特別支援教育総合研究所と筑波技術大学に協力機関としてご協力頂いているところでございまして、私ども機構は事務局として運営しているところでございます。 筑波技術大学のことをご存知ない方もいらっしゃるかもしれませんので紹介させて頂きますと、昭和62年に聴覚障害者と視覚障害者のために、国立の3年制の短期大学として創設されまして、平成17年の10月に筑波技術大学に改組されております。現在は短期大学と併設されておりまして、短期大学生が全員卒業するまでは短期大学の学生も在籍していることになります。学部としては、聴覚障害者であるということが入学資格である「産業技術学部」と、視覚障害があることが入学資格である「保健科学部」の2つがありまして、履修上の配慮を行った高等教育を展開しております。 [相談事業] 先ほど3つの柱ということを申し上げましたけれども、この中で、とりわけ昨年の10月から全国の大学等で障害のある学生の修学支援を担当している教職員からの相談に応じる「相談事業」を開始しているところでございます。相談できるのは各大学の教職員の方々ということになっておりますが、自分の該当するブロックの拠点校に限らず、どこの拠点校に対しても相談できるようになっております。現在まで拠点校に対しまして、様々な相談が寄せられておりますけれども、機構としましては、そういった相談を単に事務処理するということではなくて、参考になる情報等につきましては、FAQ形式等によりまして大学等に情報提供し、ご活用して頂ければというふうに考えているところでございます。こちらは各拠点校で、こういった障害の相談に応じることができます、ということを一覧にしているものでございます。 4.最後に 最後になりますけれども、高等教育機関における障害学生への受け入れ体制。それは先進的な取組をしている大学もある一方で、全体としてはやはりまだ整備されていない、十分整備されているとは言いがたい状況があるのではないかというふうに考えております。また、実態調査の結果を踏まえまして、具体的な背景ということについても調査させて頂いて、今後、受け入れが促進され、受け入れている大学を支援していくことができるように取組を進めていきたいと考えているところでございます。ご承知のとおり、財政が非常に厳しい状態でありますけれども、初めて概算要求として機構の中の特別支援課の調査研究経費を盛り込むこともできました。文部科学省としても、高等教育として初めてだと思いますけれども、障害のある学生の特別支援に関する概算要求がなされましたので、12月に査定になりますけれども、ぜひ予算を獲得して、今後の高等教育における障害学生修学支援の充実が図られることを期待しているところでございます。私からは以上でございます。 参考文献 1) 平成18年度大学・短期大学・高等専門学校における障害学生の修学支援に関する実態調査結果報告書, 日本学生支援機構, 2007. 2) はじめて障害学生を受け入れるにあたって, 日本学生支援機構, 2006. 3) 障害学生修学支援メニュー, 日本学生支援機構, 2006. 4) 日本学生支援機構 学生支援部 特別支援課Webサイト:http://www.jasso.go.jp/tokubetsu_shien/index.html 講演者への質問と回答 ■荒井先生へ 【質問】 支援が大学から専攻の担当に移ったことについて、それは良くないことだと言っておられましたが、根拠がよく分かりませんでした。結局、専門の支援は専攻の人がやるのが良いとも言っておられましたが、どちらの方が良いとお考えでしょうか? 【回答】 当時、大学としての窓口が消失し「専攻での個人対応」に逆戻りするような状況にあり、該当学生の精神的負担も大きかったように見受けられました。例えば、講義内容が理解できる同じ専攻の学生にボランティアを依頼するなど「支援」に関して各部署と連携を図ることは大切だと思いますが、「大学」として相談窓口などの組織・体制を整備すべきと考えます。 ■堂平先生へ 【質問】 発達障害者の就労支援について展望をお聞きかせ下さい。 【回答】 残念ですが現在のところ大変厳しい状況にあると思います。まずは本人に障害者手帳を取ってもらうことから始めないといけないのではと考えています。障害者手帳は「精神障害」という名称になるので「発達障害」とは異なるイメージになるので若干の抵抗はありますが、障害者手帳があれば障害者雇用枠での採用に可能性があるように思います。 ■谷川先生へ 【質問】 厚生労働省・経済産業省との連携はどのような状況でしょうか? 【回答】 日本学生支援機構が、直接厚生労働省など他省庁と連携して行っている取組は、現時点ではありません。 文部科学省などの省庁が進めている施策については、内閣府が作成している「平成19度障害者施策 の概況」(障害者白書)中、「第1編 参考資料 平成19年度障害者施策関係予算の概要」を参照して頂ければと思います。これらの施策は、基本的に各省庁で進めているものでありますが、施策により各省庁間で連携して取り組んでいる施策もあるようです。 【質問】 内部疾患のため、定期的(月2回程度)に病院で注射を受けなければならない情報工学科の学生を現在抱えています。薬の副作用のためか、注射を受けた後1日程度体調が悪いようで、実験の履修が難しい状態です。内部疾患を抱える学生への具体的対応について何か良いアイディアはありませんでしょうか? 【回答】 日本学生支援機構の取組の1つに、「障害学生修学支援ネットワーク」による「相談事業」がございます。これは、大学・短期大学・高等専門学校に勤務する教職員に対し、本事業の拠点校が相談にお応えするものです(申し訳ありませんが、本機構がお答えしているものではございません)。現在、宮城教育大学、筑波大学、日本福祉大学、同志社大学、関西学院大学、広島大学、福岡教育大学の7校が拠点校がとなってご協力頂いておりますが、どの大学に相談されても構いませんし、複数の大学に相談することも可能です。なお、これらの拠点校は、それぞれ相談に対応できる障害種が異なっており、病弱(内部疾患等)に対応できる大学は、宮城教育大学、筑波大学、同志社大学、広島大学、福岡教育大学の5校となっておりますので、本機構のホームページから、所定の「拠点校への相談申込票」をダウンロードし、必要事項を記入の上、メール又はFAXで希望する拠点校へお申込頂ければと存じます。 ☆障害学生修学支援ネットワーク‐相談事業URL http://www.jasso.go.jp/tokubetsu_shien/sodan.html 詳しくは、本機構のホームページをご覧頂ければと存じますが、この他にも、各大学等でお役に立てるよう用意した情報がございますので、ご活用頂ければ幸いです。 ☆障害学生修学支援情報URL http://www.jasso.go.jp/tokubetsu_shien/index.html ■ご存じの先生へ 【質問】 授業中、赤色のチョークで重要な部分を強調すると、見えないと学生から言われたことがありました。色覚障害のある学生への支援に関して、何かヒントがあれば教えて頂ければと思います。 【回答1】 筑波技術大学の岡本です。色覚障害については、JIS X 8341シリーズにウェブコンテンツの規格があります。その中には、色だけに頼って情報を提供してはいけないなど、チェックリストの具体例が載っております。それから本シンポジウムの企画元である電子情報通信学会の福祉情報研究会が中心になって作った「論文作成・発表アクセシビリティガイドライン」があります。そこに、電子プレゼンテーション作成時に望ましい色やフォント、文字の大きさについて記載されております。それらは授業のときにもおそらく参考になるものだと思っておりまして、こういった大学での講義のマニュアルにも取り込んでいって頂きたいと思っています。 ☆日本工業標準調査会URL(ここからJIS規格を検索できる) http://www.jisc.go.jp/ ☆福祉情報工学研究会URL http://www.ieice.org/%7Ewit/ 【回答2】 ソフトバンクモバイルの明石と申します。カラーユニバーサルデザイン機構というNPO法人(略称CUDO :クドー)があります。こちらの活動に、実際に色弱の研究者が参加されていて、色覚の多様性だとか、そのからくり、プレゼンテーションのバリアフリーに関しても、ホームページでかなり詳細に公開しておりますので、そのへんをご参考にされるとかなりよろしいかなと思います。板書のチョークの色に関しても、色弱の方でも識別しやすいチョークというのも実際出てるようです。あと、こういう学会の発表なんかでよく赤のレーザーポインタとか使われますけど、それは色弱の方で見えない方がいるそうなので、できれば赤ではなく緑のレーザーポインタを使うと非常に良いかなということです。 ☆カラーユニバーサルデザイン機構URL http://www.cudo.jp/index.html シンポジウム「大学の理系学部等における障害のある学生の支援」講演記録 編集・発行: 独立行政法人 国立特別支援教育総合研究所 教育支援研究部 生涯教育担当 〒239-8585 神奈川県横須賀市野比5-1-1 http://www.nise.go.jp/ 発行月: 2007年11月