HCS研究会 2008年8月参加報告記

報告者: 高柳侑華 (静岡大学大学院情報学研究科)

報告

HCS2008年8月研究会は8月26,27日の2日間にわたり神戸大学六甲キャンパス瀧川記念学術交流会館にて開催されました.言語・非言語コミュニケーションということで,まさに私の研究している分野の研究会で,大変興味深くご講演を拝聴させていただきました.私にとって今回が初めての対外発表で,今まで外部の方にお会いする機会はなかったのですが,今回の研究会では文献で名前を拝見したことのある方が次々と現れて非常に驚きました.また,参加者は発表予定の人とその他に数人程度であると思っていましたが,最終的な参加者は70人以上ということで,予想以上の規模にも驚かされました.

私は多人数対話における発話タイミングと顔の向きの効果について発表しましたが*1,今後研究を進めていく上での指針となるご示唆を多数いただき,大変参考になりました.この場を借りてお礼を申し上げたいと思います.

今回の研究会では,アバターを用いたコミュニケーションやジェスチャ,発達心理学の分野など,自分の研究と関連する分野でありながら,直接的に自分の研究には関係していないためなかなか手を伸ばして勉強することが出来ない分野のお話を聞くことができ,非常に有意義な時間となりました.

様々なご講演がありましたが,特に印象に残ったご講演は武川さんの発表*2です.多人数対話という状況や視線方向に着目しているという点など,現在の私の研究とかなり通じることが多く,非常に興味深く聞かせていただきました.

また,招待講演の遠藤さんの発表*3では,目には「読む目」「読まれる目」があり,単純に感情を表出するものというよりは,自分の利益になるように「読ませる」ものであるというお話がありました.目というものは物を見るためのものであると考えていたので,「読ませる」という発想には驚きました.また,視線は他者の意図性がどこに向けられているかを伝えているだけであり,どのような心的状態で視線を向けているかまでは分からないということでした.我々のコミュニケーションにおいて重要な役割を担う視線ですが,それ単独ではコミュニケション・ツールとしては制約があり,他の情報と組み合わせる必要があるということで,目がもつ情報の複雑さや曖昧さを感じました.

どの方も動画であったり音声であったりというデータをふんだんに盛り込んだ発表を行なっており,人に理解させる発表の仕方を多数拝見できました.スムーズに話すことやどう話したら相手に伝わりやすいかということは練習や経験による部分があるためすぐに改善することは難しいですが,発表資料として動画を用意することはすぐにできることであるため,今後の発表では今回の研究会の経験を活かしていきたいと思います.

研究会全体を通して活発に議論がなされていましたが,現在の私には議論しているレベルが高すぎて,理解が追いつかないというのが現実でした.事前にどのような研究をなさっている方かを調べておけばもう少し深く理解できたと思われるので,そのことが悔やまれます.

最後になりましたが,プログラムの作成や会場設営等,今回の研究会開催にご尽力くださった全ての皆様にこの場を借りてお礼申し上げます.


*1 高柳侑華・竹内勇剛(2008). 音声対話の文脈性の認知における時間・空間構造の役割 電子情報通信学会技術研究報告, 108, 187, 7-12.
*2 武川直樹・峰添実千代・徳永弘子・湯浅将英・瀬下卓弥・立山和美・笠松千夏(2008). 3人のテーブルトークにおける視線,食事動作,発話交替の分析 電子情報通信学会技術研究報告, 108, 187, 31-36.
*3 遠藤利彦(2008). 感応する心―視線と表情が発するもの― 電子情報通信学会技術研究報告, 108, 187, 13-18.
Last-modified: 2020-12-04 (金) 06:04:02

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