通信ソサイエティマガジン
 
創刊のメッセージ
 通信ソサイエティでは新しい刊行物として通信ソサイエティマガジンを創刊しました.学会は今までには論文,技術報告,書籍,会誌(現在の学会誌)等で会員の皆様に電子情報通信分野の情報をお届けしてまいりました.論文,技術報告(以下論文等)は会員の最新の研究成果を皆様に提供しているため,発表,議論の場と情報提供の場の機能を同時に果たしていることになります.書籍は学問・技術を体系的にまとめたものです.

 これに対して,会誌は最新の技術動向の提供,学会活動の紹介を目的としております.本学会が担当している学問,技術分野は我が国産業ほとんど全てで応用されている広い分野です.このため会誌だけで最新技術動向の提供するのは困難になりつつあり,商業誌の方が対象分野を細分化して技術情報を提供しているケースも見られます.通信ソサイエティではこのような現状を考慮して,1年以上前から新しい雑誌,すなわちマガジン発行の検討を開始しました.マガジンはIEEEのソサイエティ誌をモデルとしておりますが,委員会ではそれにとらわれることなく,精力的に新しいコンセプトを議論しました.

 まず,通信分野を志す学生,通信分野に近い企業の技術者の方が,少々専門が一致していなくても理解できる内容とすることにしました.ただこれはレベルを下げるわけではなく,著者に論文と異なった書き方をお願いすることにより実現しています.内容としては,まず商業誌でも取り上げられる直近の話題について,専門家の立場から客観的に掘り下げて記事とすることにしました.次に,新しい技術について体系的に解りやすく解説あるいはサーベイとして,執筆者の方にはページ制約を厳しく設けずに,十分な内容をお書き頂く方針を採用しました.これにより読者から見ると物足りない,著者から見ると書き足りないことが無くなることを期待しております.

 また,純粋技術問題だけではなく,技術の国際標準化,更には社会的視点も融合した新しい分野についての論述も積極的に掲載する方針としました.これらの原稿については,従来学会が対象としていたような技術内容にオリジナリティがある論文とは別の,論旨の構成,主張等にオリジナリティがある新しい論文としての位置づけを明確にしています.更には,情報通信分野で優れた業績をあげた諸先輩に体験談をご執筆頂く,有名な国際会議に焦点を絞って,開催された会議の概要を詳細に紹介する等の新しい企画を盛り込みました.

 これらの論文,記事については編集委員会で企画することはもちろんですが,会員の皆様からの積極的な投稿も期待する方針です.更に,編集段階からプロの編集者と緊密に相談して,雑誌のイメージにあった編集を行うとともに,装丁も新しい雑誌に相応しいデザインを採用したつもりです.

 通信分野は大きな変革をとげようとしております.ブロードバンド,ユビキタス,放送・通信の融合等,数年間には環境の飛躍的変化が予想されます.この時期光通信,ネットワーク,無線等の従来の基本技術の開発はもちろんですが,これらの標準化も極めて重要です.更にはWebサービスの発展,コンテンツまで含めた新しい通信ビジネスの動向,関連する制度,法律等の変革,等技術者にも幅広い知識,見識が要求される時代となってきました.

 学会としても技術情報だけではなく,広い分野の情報を皆様にお届けして,会員相互の議論の場を設けることが重要な勤めと考えております.幸い学会には多くの分野で活躍する会員が多数います.これらの方のご経験を相互に交換することで,会員皆様の知識向上にお役に立てることを期待しております.マガジンを読むだけでも学会員でいる意味があると皆様に思って頂ける雑誌となることが,編集委員一同の最大の希望です.

2007年6月1日
初代編集委員長 酒井善則

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