付録F.常用漢字表送り仮名について

 

 昭和56年10月1日に内閣告示に,常用漢字表が示された.これは,法令・公用文書・新聞・雑誌・放送など,一般社会生活で用いる場合の,効率的で共通性の高い漢字を収め,分かりやすく通じやすい文章を書き表すための漢字使用の目安を示すものである.
 本会としては,この目安を準用し,以下にその基本の概略を示す.

(平成11年2月編集連絡会)

 

I 原則「内閣告示により許される範囲で,漢字を使用し,送り仮名も省略する」という方針に基づき細部の具体例においては,極力例外を少なくすることとした.

イ.「常用漢字表」に,その漢字の音・訓が示されているものは,後に定める以外は,努めて漢字を使用する.
ロ.送り仮名については,従来の「改定送り仮名の付け方」による.
II 具体例(常用漢字表にその音訓があるものを漢字と仮名とに使い分けるもの)
1. 代名詞(漢字で書くもの)
 彼,何,僕,私,我々
2. 副詞・連体詞(漢字で書くもの)
 必ず,少し,既に,直ちに,甚だ,再び,全く,最も,専ら,余り,至って,大いに,恐らく,必ずしも,辛うじて,極めて,殊に,更に,少なくとも,絶えず,互いに,例えば,次いで,努めて,常に,初めて,果たして,割に,概して,実に,切に,大して,特に,突然,無論,明るく,大きな,来る,去る,小さな,我が(国)
(仮名で書くもの)
かなり,ふと,やはり,など,よほど,すべて
3. 接頭語「御」は,後に付く語が常用漢字で使える場合には漢字で書き,使えない場合には仮名で書く.
〔例〕案内,調べんたつ,あいさつ
4. 接尾語は原則として仮名で書く.
〔例〕惜し,偉ぶる,弱,少なめ,私ども
5. 接続詞
5.1 接続詞5.2に定める以外は原則として仮名で書く.
おって,かつ,したがって,ただし,ついては,ところが,ところで,また,ゆえに,または
5.2 次の接続詞は原則として漢字で書く.
及び,並びに,若しくは,更に
6. 助動詞および助詞は仮名で書く.
〔例〕ない(現地には行かない。),ようだ(それ以外に方法がないようだ。),ぐらい(二十歳ぐらいの人),だけ(調査しただけである。),ほど(三日ほど経過した。)
7. 次のような語句を,( )の中に示した例のように用いるときは,原則として仮名で書く.
〔例〕こと(許可しないことがある。),とき(事故のときは連絡する。),ところ(現在のところ差し支えない。),もの(正しいものと認める。),とも(説明するとともに意見を聞く。),ほか(特別の場合を除くほか),ゆえ(一部の反対のゆえにはかどらない。),わけ(賛成するわけにはいかない。),とおり(次のとおりである。),ある(その点に問題がある。),いる(ここに関係者がいる。),なる(合計すると1万円になる。),できる(だれでも利用ができる。),…てあげる(図書を貸してあげる。),…ていく(負担が増えていく。),…ておく(通知しておく。),…てくる(寒くなってくる。),…てしまう(書いてしまう。),…てみる(見てみる。),ない(欠点がない。),…てよい(連絡してよい。),…かもしれない(間違いかもしれない。),…にすぎない(調査だけにすぎない。),…について(これについて考慮する。)
8. 例外として
「…できる」,「できる限り」は,仮名書きとするが,「出来心」,「出来高」,「出来上がり」は,漢字で書く.
9. 常用漢字表にはずれた漢字を用いたことば
9.1 仮名書きにしても誤解のおこらない次のことばは仮名で書く.この場合,仮名の部分に傍点をつけることはやめる.
以て→もって,此→この,之→これ,其→その,為→ため,等(ら)→ら
9.2 仮名書きにする際,単語の一部分だけを仮名に改める方法は,できるだけ避ける.ただし,漢字を用いた方がわかりよい場合はこの限りでない.
あへん煙,あて名,ちんでん池,ほうろう鉄器
9.3 常用漢字表にない漢字を用いた専門用語等であって,他にいいかえることばがなく,しかも仮名で書くと理解することができないと認められるようなものについては,その漢字をそのまま用いて初出時にのみふりがなをつける.
素,
10. 常用漢字表にあっても,仮名で書くもの
虞・恐れ→おそれ,且つ→かつ,従って(接続詞)→したがって,但し→ただし,但書→ただし書,外→ほか,又→また(山また山),因る→よる
11. 特定の語については,表記の慣習を尊重して,次のように書く.
〔例〕動詞の「いう(言)」は,「いう」と書く.
ものをいう(言),いうまでもない,昔々あったという,どういうふうに,人というもの,こういうわけ