付録2 うまくいかないときのためのモデム・ISDN-TAの設定のコツ
インターネットアクセスの一番の難点は、モデム接続です。TAの場合もモデムと同様な原因が多いです。以下では、うまくいかなかったときのために、いくつかのチェック箇所を述べます。パソコンからモデム・TAを制御するコマンド(ATコマンドといいます)についての理解が必要ですので、モデム・TAのマニュアルをよく読んでください。
- モデムの音量つまみを回して、音がでるようにしてチェックします。ダイアルトーンというのは、電話機の受話器を挙げると聞こえるツーという音です。これが聞こえないのは、モデムがパソコンからATコマンドを受信していない場合がほとんどです。
- TAの場合は、「パソコンからデータ受信中」を示すランプ表示(TAのマニュアルを見てください)でチェックします。TAのトラブルは音が聞こえないなどのために、チェックがちょっと難しいので、まずモデムとパソコンでインターネットにつながることを確認して、その後、モデムをTAに替える方がよいでしょう。
- 単純なことですが、RS-232Cケーブルがつながっていないことがあります。コネクタがグラグラするときは、ちゃんと接続されていないこともあります。電話線もちゃんとつながっていますか? 電話線がつながっていないと、発信しないという賢いモデムもあります。
- パソコンの端子(WindowsのCOM1/COM2、Macintoshのモデム/プリンタポート)が間違っていませんか? 第2章と第3章で説明したように、ソフト(WindowsやConfigPPP)上で、接続した端子が指定されていますか? 特にカードモデムをつないだときは、カードモデム用の端子(COM3/COM4、カードモデムなど)になりますので注意しましょう。
- ファックスソフトが動いていませんか?ファックスソフトによっては、モデム・TAを占有するソフトがあります。インターネットのときは、ファックスソフトを外しましょう。
- モデム・TAに、単体でATコマンドを送ってチェックしましょう。Windows95では、「アクセサリ」の中にある「ハイパーターミナル」を使います。Macintoshでは、ConfigPPPで「ターミナルウィンドウ」をチェックして「接続」をクリックします。モデムとの間でATコマンドの送受ができます。モデム・TAに「AT(半角英数です)」の2文字を送って(リターンキーを押下します)、モデム・TAから「OK」が返るかチェックしましょう。
- パソコンによっては、モデム・TAとの速度が最大で9.6kbps程度の機種(例えば、NEC PC98の一部など)があります。上記のチェックで通信速度を変えて、OKが返るかなどのチェックをしてみましょう。ソフト(WindowsやConfigPPP)では、OKが返る最大の通信速度に設定しましょう。最大速度はマニュアルで調べるか、メーカに問い合わせてもわかります。
- パソコンによっては、モデム・TAの接続が特殊な形式を採用している機種があります。例えば、赤外線インタフェースを備えたパソコンでは、モデム端子を赤外線インタフェースで使用していることがあります。このようなときのモデムの接続方法は、マニュアルで調べるか、メーカに問い合わせましょう。
- ダイアルトーンが聞こえるまでの接続のトラブルは、パソコンとモデム間の問題です。インターネットプロバイダのサポートに聞くよりも、パソコンのメーカあるいは販売店のサポートに聞く方が確実でしょう。
- モデムがダイアルトーンの検出に失敗しています。ダイアルトーンにはいろいろな種類があるので、モデムが検出できないことが多いです。特に、PBX内から発信するときに、PBX固有のダイアルトーンを検出できないことが多いです。また、外国のモデムは日本のダイアルトーンを検出できないことがあります。
- モデム設定で、ATX3などを入れて、ダイアルトーン検出を無視するようにしていますか? 第2章あるいは第3章を見て確認しましょう。
- 電話線がつながってますか? LINEとTEL/PHONEを間違えていませんか? テレフォンスイッチで電話機側にスイッチしていませんか?
- アクセスポイントの電話番号は間違ってませんか?
- あなたの電話の種類(NTTと契約した回線の種類、プッシュホンかダイアルパルスか)と、ソフト(WindowsやConfigPPP)での設定が合ってますか?なお、モデムをTAにつないでいるときはプッシュホンです。
- モデム同士の接続が終了すると、モデムは無音状態になります。いつまでもピーギャーしているのは、モデム同士がうまく接続できないためです。
- フロー制御を合わせます。第2章あるいは第3章で説明しましたが、ソフト(WindowsやConfigPPP)での設定と、モデム自体での設定(ATコマンドで行う)の両方を合わせることが必要です。両方とも、CTS/RTS(ハードフロー制御)、あるいはXON/XOFF(ソフトフロー制御)にします。
- モデムによってはCTS/RTSをサポートしていないものがあります。また、モデムケーブルによっては、CTS/RTS用の配線がないケーブルがあります。ケーブルを代えるか 、XON/XOFFにします。
- 端末とモデム間の速度を、モデム相互間速度とは独立にします。「モデム確立後に端末速度をモデム間速度にあわせる」というようなモードを使わないようにします。一部のモデムではデフォルト設定が逆になっていることがありますので、マニュアルでチェックします。
- MNP4あるいはV.42のエラー再送機能は、オートリライアブル・モード(エラー再送をトライして、ダメならエラー再送無しを選ぶモード)にしておきます。うまくいかないときは、MNP5やV.42bisのデータ圧縮を止めます。
図F2-1 モデム・TAではフロー制御の設定が重要です
- キャリヤ検出待ち時間と接続タイムアウトを60-120秒位にします。デフォルトでは、キャリヤ検出待ち時間が30秒、接続タイムアウトが60秒程度になっているモデムが多いです。キャリヤ検出待ち時間はSレジスタ(例えばS7)で、接続タイムアウトはソフトで設定することが多いです。
- 何回かフォールバックしてつながらないようならば、モデム速度を下げて、9.6 kbps位からスタートするようにします。V.34(28.8k)ではなく、V.32bis(14.4k)やV.32(9.6k)モードにします(例えばAT+MSコマンド)。どうせ28.8kで接続できないならば、14.4kからネゴシエーションを開始するようにしたほうが確実です。接続後に不安定になって切断しやすい、というときも、V.32bisやV.32にするとよいです。
- さらに、モデムによっては、通信速度のネゴシエーション回数の制限(3回とか)をする機種があります。つまり、そんなに回線品質が悪いならば、発呼し直して、品質のよい回線をつかんだ方がよい、という考えです。アメリカ製のモデムに多いです。このようなときも、低速からネゴシエーションするようにするとよいです。
- モデムの送信レベルの調整不良があり得ます。ひと昔前は、レベルが低くてNGになったことが多かったですが、最近はモデムの速度が上昇するにつれて、レベルが高すぎてNGというケースもあります。Sレジスタなどで送出レベルを変えます。
- PBXによっては、いったん外線発信番号(例えば0)を受信してから、次の番号の受信準備ができるまで時間がかかるものがあります。ダイアル番号の設定を「0,,03... 」というように0の後にカンマ「,」を入れます。カンマ1個で例えば2秒(モデムによります、マニュアルをみてください)のポーズが入ります。
- ポーズをうまく使うと、クレジットカード番号を使ったダイアルも自動でできます。また、カンマ1個のポーズ時間もATコマンドで設定できます。
- ホテルの電話がダイアルパルス式のときは、例えば「P0,,03...,,,,,T123...」とすると、ダイアルパルスでダイアル「P0,,03...」した後、「,,,,,」のポーズを取って、その後トーンに変わって「T123...」とクレジット番号がでます。
- モデムよりも、設定の間違いの可能性が高いです。インターネットプロバイダの方式(PAPとか)と合っているかチェックします。
- 「パスワードが違います」などのメッセージがでたら、ユーザ名とパスワードのどちらかの入力間違いの可能性があります。両方の文字を再確認します。半角英数になってますか?ユーザ名やパスワードでは、通常全角文字はつかいません。きちんと大文字と小文字が合っていますか? ユーザ名やパスワードでは、通常大文字と小文字の区別があります。
以下は、代表的なモデム・TAの初期コマンドの例です。ただし、すべてのインターネットプロバイダを試したわけではないので、あくまで参考としてください。なお、一般的な設定として、&F(工場出荷時設定)ダイアルトーン無視(X3)、着信しない(S0=0)、が入ってます。また、&Fでの設定値はモデルによって異なりますので、マニュアルで確かめてください。
(a)モデム
機種 初期化コマンド
SUNTAC MS288AF(V.34) : AT&FX3S0=0
Microcom ES II (V.34): AT&F&D0X3S0=0
(b)TA
機種 初期化コマンド
NEC AtermIT45 64 kbps同期: ATQ0V1X3$N1=1
NEC AtermIT45 38.4/57.6 kbps非同期: ATQ0V1X3$N1=0Q3
MN128 38.4 kbps非同期: AT&F$S8
MN128 64 kbps同期: AT&F&Q5$S12
MN128 128 kbpsマルチリンクPPP: AT&F&Q5$S12S172=1
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