第1章 インターネットを始めましょう



 電子メールは電話と違って、自分の時間の余裕のあるときに読んだり出したりできるので、外出時の連絡などにとても便利です。最近では、営業担当に端末を配布し電子メールでの指示・報告を行うことで、オフィスへの出勤は週に1回でいいという会社もあります。

 さて、モバイル・ワーキングのためには、軽くて小型のパソコンに、ソフトとしては電子メールソフトと簡単なワープロが必須条件です。その他に、営業のための積算データや製品一覧などは、適宜用途によって準備します。理想的には、そのようなデータなどはWWW化して、必要時に会社のWWWサーバへアクセスして見る方が、端末でのデータ更新などの手間が不要になります。


1.5 携帯電話・PHSやISDN公衆電話でモバイル・ワーキング

1.5.1 ディジタル携帯電話とISDN公衆電話を使うのがお勧め

 インターネットへのアクセス方法は、大きく以下の3通りくらいあります。

  1. 携帯電話やPHSで「普通のモデム」を使う
  2. 携帯電話やPHSで「専用アダプタ」を使う
  3. ISDN公衆電話を使う

(1)携帯電話・PHSで普通のモデムを使う

 上記の(a)あるいは(b)の方法、つまり携帯電話・PHSで普通のモデムを使う方法は、携帯電話あるいはPHSのイヤホン端子に専用のケーブルをつけてモデムをつなぐ方法です(図1-19)。この方法では、電話番号のダイアルはパソコンからではなく、携帯電話あるいはPHSからダイアルしなければなりません。つまり、以下のような手順になります。

  1. 携帯電話あるいはPHSでダイアルする。
  2. インターネット側のモデムが応答し「ピー」という音が聞こえる。
  3. パソコンのインターネット接続ソフトで「強制接続」を設定する。
パソコンのソフトによっては、このような「強制接続」の機能がない場合があります。その場合は、以下のような手順になります。

  1. パソコンのインターネット接続ソフトで通常の発信手順(ダイアル)を行う。
  2. 素早く、携帯電話あるいはPHSでダイアルする。
  3. インターネット側のモデムが応答し「ピー」という音が聞こえる。
どちらにしても、このような手順はかなりコツが必要です。うまくタイミングをとらないと、タイムアウトになったりします。さらに、イヤホン端子からの接続ですので、通信速度は2.4kbps位になります。ということで「普通の方」へは、この方法はお勧めできません。

図1-19 携帯電話・PHSのイヤホン端子にモデムをつなぐ

(2)ディジタル携帯電話で専用アダプタを使う

 これが、現在お勧めできる一番の方法です。ディジタル携帯電話では、専用アダプタ(データ/FAXカードなどと呼ばれます)というものが使えます。データ/FAXカードは、ちょうどモデムカードと同じような機能をもつもので、モデムカードの替わりにデータ/FAXカードをパソコンのカードスロットに差し込んで使います(図1-20)。データ/FAXカードでの通信速度の最大は9.6kbpsくらいですので、電子メールには十分です。9.6kbpsはWWWで絵の多いページを見るにはちょっと不十分ですが、テキストのみのページならば使用に耐えます。

 データ/FAXカードはモデムカードの替わりをするものです。ネットワーク側は固定電話のモデムアクセスと同じく28.8/33.6kbpsのポートにアクセスします。ネットワーク側のモデムは、受信したモデム信号を自動で判定して、9.6kbpsに速度を落として接続します。

 携帯電話の機種によっては、このデータ/FAXカードを接続する機能がない場合があります。また、データ/FAXカードによる通信を提供していない携帯電話の通信事業者もありますので、購入時に注意しましょう。データ/FAXカードはモデムよりもちょっと高めで、4〜6万円くらいです。

 携帯電話でインターネットアクセスするときは、電波が十分に強いところで使いましょう。電波が弱いと通信速度が4.8,2.4kbpsへと低下しますし、最悪の場合は通信が途中でとぎれます。また、車での移動中などは避けたほうがいいでしょう。移動中は使用電波が変わりますが、音声通信には問題なくてもインターネットのデータ通信では途絶になることがあります。

図1-20 専用のアダプタカードを使う

(3)PHSで専用アダプタを使う

 ディジタル携帯電話と同様に、PHSでも専用アダプタを使う方式(PIAFSと呼ばれます)が標準化されています。この方式では最大32kbps(実効29.2kbpsです)の通信が可能になりますので、固定電話の28.8kbpsと比較しても遜色のない速度と使い方ができます。

(4) ISDN公衆電話からアクセスする

 携帯電話やPHSほど身近にある訳ではありませんが、ISDN公衆電話もモバイル・ワーキングには便利です。特にインターネットの電子メールは、いったん自分のパソコンにメールを一括転送します(詳しい使い方は5.6節で説明します)ので、次のような使い方ができます。

  1. ISDN公衆電話からアクセスして自分宛の電子メールを一括してパソコンに転送する
  2. 喫茶店でコーヒーを飲みながらメールを読んで返事を書く
  3. もう一度ISDN公衆電話からアクセスして返事を一括送信する
 最近はISDN公衆電話の設置台数が増えています。大きなホテルのロビーや駅などが狙い目です。接続方法は以下のようになります(図1-21)。

  1. パソコンソフトで回線種別をプッシュ回線(トーン)に設定する。
  2. ISDN公衆電話の下部にあるアナログ端子にパソコンのモデムを接続する。
  3. 電話機のメニューで「切替」ボタンを押して「アナログ端子」を選ぶ。
  4. テレホンカードを挿入する。(コインでもいいですが、テレホンカードの方が便利です。)
  5. パソコンから電話をかける。(電話機の受話器は挙げないことに注意してください。)

図1-21 ISDN公衆電話(一部ではグレ電と呼ばれている)

 ISDN公衆電話は回線品質がいいので、ほとんどの場合、アナログでも28.8kbpsの通信が確保できます。なお、ISDNの64kbpsを使うときは、ディジタルISDN端子にTAを接続し、「切替」ボタンで「ディジタル端子」を選びます。

 出張先などでアクセスするときは、あらかじめその近くのアクセスポイントの電話番号を調べておきましょう。また、電子メールがたくさん溜まっている人は、電話機の占有時間が長くなりますから、電話ボックスの多いところでアクセスするなどして、他の人に迷惑をかけないようにしましょう。


1.5.2 海外でも電子メールを読みたい

 海外出張中でも電子メールを読みたい、という方が今後はますます増えるでしょう。ここでは、いくつかの方法と状況を説明します。

  1. 海外でも使えるモデムを選ぶ : モデムには細かい規格があって、日本では使えても海外では使えないものがあります。あらかじめ、あなたのモデムが訪問国で使えるか、モデムメーカに問い合わせるなどで確認した方がいいでしょう。なお、ISDNのインタフェースは国ごとに微妙に違います。日本のTAは海外では使えないものと思ったほうがいいでしょう。

  2. 海外から日本へのアクセスでは通信速度を落とすなどの工夫が必要 : 海外から日本まで電話をかけると、距離が長く通信品質が低下していることもありますので、28.8kbpsの通信速度が得られないことがあります。モデムの初期通信速度を下げる、などの工夫が必要です。特にヨーロッパでは、電話線に課金パルスを重畳している場合があり、日本への電話では4.8kbpsくらいが限度になるケースがあります。また、接続時間が長くなりますので、モデムおよびソフトのタイムアウトを長くします。詳しくは付録2を参照してください。
  3. 海外でのアクセスを提供しているプロバイダを選ぶ : 上記のような原因もあって、海外から日本へ電話してインターネットアクセスを行うのはかなり難しいです。最近では、海外のプロバイダと提携して現地のアクセスポイントを提供しているプロバイダが増えていますので、そのようなプロバイダを使うことをお勧めします。例えば、KCOMではニューヨークでのアクセスポイントを提供していて、順次他の都市へも拡大しています。また、海外出張者用に「期間限定のアクセス」を提供する海外のプロバイダも出てきましたので、そのようなサービスを利用するのも手です。

  4. 電話のコンセントに注意 : ほとんどの方は、電源電圧(100Vあるいは200V)とコンセント形状が国ごとに違うことをご存知だと思います。電話のコンセントも国ごとに異なります。場合によっては、一国内で数種類のコンセントがあります。ホテルなどでは、順次国際標準のモジュラー・コンセントに変更してあるところが増えてきました。予約の際にモジュラー・コンセント付の部屋か否か、あるいはモジュラー・コンセントのあるビジネスルームがあるか否か、などを確認されるといいでしょう。アメリカはかなりモジュラー・コンセントになりましたが(配線が異なっていることがときどきあります)、ヨーロッパではまだ国ごとに異なるようです。国ごとのコンセントを標準のモジュラー・コンセントに変換するアダプタが手に入る場合もあります。現地のパソコンショップなどで売っていますが、もっと確実なのは訪問地の電話局へ行くことです。あるいは、ホテルのフロントに聞いて見ましょう。宿泊客用に用意しているホテルがあります。

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