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今こそ、今すぐ、一人ひとりが人材CPD
1.技術者の継続的、自律的な能力開発の習慣づけ

大学・大学院、企業、研究機関などでは、変化の激しい現代において、学生あるいは技術者がそれぞれ所属する組織の中で、自ら行動を起こすことにより実現すること、達成することがますます期待されています。社会からも、一人ひとりが基本的な行動原則を守り、技術の正当な適用と資質の向上が要請されています。従来の成果達成度評価一辺倒から、日々の行動や取り組み姿勢そのものを評価することによって、所属組織の活性化に結び付ける新たな挑戦が始まっています。技術士法では、継続的な資質向上に努めることが技術士の責務となっています。大学院では、いくつかの表彰や奨学金制度での評価基準を、授業科目の成績に止まらず幅広い活動を総合的に評価する傾向が拡がっています。

 学生員の皆さんには、学生から社会人(技術者)へと、シームレスな(継続的、自律的な)能力開発を習慣づけすることが、いま求められています。

 企業の若手研究者・技術者の皆さんには、自ら、新たな価値創造を通じて、社会からの信頼を高め、職業倫理を実践する習慣づけが、いま求められています。

2.技術者教育と技術者資格の必要性

現在、欧州、北米、アジアの3極を中心として、国際的に技術者資格の認証の枠組み作りが進行しています。北米では、IEEE等の継続教育プログラムがIACET(International Association for Continuing Education and Training)により認定されており、CEU(Continuing Education Unit)という共通の企画化された受講単位数の取得をベースに、受講実績がACE(American Council of Education)により記録管理されています。大学、学協会、企業の継続教育プログラムがCEUを単位として相互乗り入れできるため、米国に40万人いるといわれるPE(Professional Engineer)にとって利用価値の高いものとなっています。

 英国では、CEng(Chartered Engineer)の制度があります。業務実績ベースのインタビュー試験等により認定されますが、継続教育の受講を誓約させられます。同様な仕組みとして、ドイツのDiplom-Ingenieur、フランスのIngenieur-Diplome de・・があり、最近はEUR ING(European Engineer)の資格を取得することも多くなってきています。

 日本にはPE資格として技術士が制定され、2001年の改正技術士法の施行で漸く増え始めています。2001年改正のポイントとして、技術士として果たすべき責務として継続能力開発が謳われています。同時に、国際的な技術者資格の相互承認への対応としてAPECエンジニアやEMF国際エンジニアの認証が進められていますが、ここでも継続能力開発の認証要件が定められています。

 以上のような状況を背景に、日本工学会には、PDE(Professional Development of Engineers)協議会(2007年にCPD協議会に改組)が発足し、その活動と連携して電子情報通信学会でも2002年度からCPD部会(2006年に現CPD委員会に格上げ)を設置して、技術者継続教育の検討を本格的に開始しました。

3.電子情報通信学会における継続教育(CPD)の必要性

電子情報通信学会において技術者継続教育を重視する理由は、1)技術の進歩が速くなり、しかも国際的な活動が必要になってきている現在、電子情報通信技術の専門家としての能力を高めると共に、新しい分野横断の技術・知識を最新に保つ事が極めて重要である事、並びに、2)国際的な調達活動等で、応札者の技術力の客観的な証明としての資格的なものが重視されつつ有る点、等にあります。しかし、一般の企業内では全ての教育内容をカバーすることは困難であり、また、技術者個人にとっても自由時間の制約が大きく、効果的な能力(*)開発の場が少ない状況でした。

 このため、学会と産業界が連携して教育システムを構築すると共に、教育を受ける技術者のインセンティブとして、教育と連動した技術者資格的な制度を構築する事が必要と考えました。

(*).ここでは、能力(competency)を、“実践的にそれが証明されるべきであり、自己点検可能であるべき”とした観点から評価しています。

4.CPDの内容

CPDを具体的に進めるにあたっては、活動内容の認証、資格的ランクの設定、CPDポイントの設定、CPDポイントの登録、CPDポイントの認証等が重要な項目です。本学会は、電気学会、情報処理学会と連携して、電気電子・情報系CPD協議会を設置し、以下の様にCPDの仕組みを構築しました。

1)活動内容の認証

技術者継続教育とは、教室で受ける講義だけを指すものではありません。大学・大学院、企業、研究機関など所属組織の本来的な活動である実務や業務成果、業務経験を評価し、学会や社会への貢献も評価する事としました。そのため下表に示すように、知識ポイント、実務ポイント、貢献ポイントの3領域と7活動区分を定め、多数のポイント対象項目を選定しました。

 電子情報通信学会では、CPDアクティビティポイントについて、認定資格ランクを踏まえ、適宜見直し等を行っています。見直し等の内容は、ホームページに掲載してご案内いたします。

【 CPDアクティビティポイント一覧 】

下表の所属組織とは、大学・大学院、企業、研究機関など共通に指しています。
尚、学生員向けの事例として、特に緑色部の項目を挙げています。

分  類
区  分
項  目
ポイント
(I)知識ポイント

(自分のための活動)
(1)知識研修

(参画,受講)
@学協会主催活動参画,受講(大会,研究会,セミナ,シンポジウム,講習会)                       (Hは受講時間)
H
A民間主催活動参画,受講(講演会,セミナ,シンポジウム,講習会)
3
B所属組織内研修,教育,セミナ参画,受講
5
C所属組織内OJT参画,受講
・インターンシップ
5
(2)知識修得 @資格取得・更新(専門分野;英検含む) [公的高度|公的基本・ベンダ系]
15|10
A自己学習(専門技術雑誌の定期購読) [学協会認定|民間専門](最大6|4)
2|1
(II)実務ポイント

(企業の本来的な活動)
(1)対外発表 @学会,研究会発表(専門分野)
5
A論文発表(専門分野;投稿,掲載,査読有無)
5
B著作,執筆活動(専門分野の書籍,教材;単独,共著,編著)
・学位論文や特に優れている特定課題研究報告書など
・専攻分野に関連した著書等
5
(2)実務成果

(本業での業務経験と成果)
@専門的開発・支援業務
・講義・演習等で特に優秀な成績を修めた(授業科目の成績),また,建築設計,その他の作品が,特に優れていた,などの成果
5
Aプロジェクトリーダ業務
・指導教員により指定された研究室内における独自活動(学部生指導等)
5
Bプロジェクトマネージャ業務
7
C特許出願・登録
8
D表彰を受けた業務上の成果(社内/社外,他薦/自薦)
・学会等で表彰された,コンペ等で表彰された,などの成果
10
(3)所属組織内付帯活動 @所属組織内技術指導講師(教育,講演,セミナ)
・指導教員により指定された研究室内における独自活動(学部生指導等)
5
A所属組織内成果発表(論文,報告,発表会)
・指導教員により指定された研究室内における独自活動(学部生指導等)
3
Bプロジェクトの企画運営,助言,指導(オーガナイザ,コーディネータ)
5
(III)貢献ポイント

(世のため,人のための活動)
(1)学協会貢献活動 @学協会活動への参画(JABEE,本部,ソサイエティ,支部)[委員長・幹事|委員・幹事補佐]
7|5
A委員会活動への参画(企画,運営,協力;論文査読も)[委員長・幹事|委員・幹事補佐]
7|5
B標準化活動への参画(国際会議,寄書作成,ラポータ)[議長・ラポータ・エディタ|会議参加・寄書作成]
7|5
C学協会主催講演会,セミナ,講習会講師,教材開発
7
(2)社会貢献活動 @教育(大学),研究機関,国家プロジェクトにおける活動参画[委員長・幹事|委員・幹事補佐]
・教育研究活動の成果として,専攻分野に関連した発表会やボランティア活動その他の社会貢献活動の実績が社会的に高く評価された,などの活動
7|5
A教育(大学),研究機関主催の講演会,セミナ,講習会講師
・ティーチングアシスタント等により,学内外での教育研究活動に大きく貢献した(研究又は教育に係る補助業務の実績),などの成果
7
B民間主催の講演会,セミナ,講習会講師(対一般市民)
5

2)資格ランクの設定

資格ランクは4ランクのうち、当面2ランクを設定しました。後半2ランクについては、呼称も含め将来検討するものとします。それぞれのランクの持つ意味合いは以下の通りです。

呼称(和文):<資格ランクが頭に付く>技術者(電子情報通信学会)
呼称(英文):<資格ランクが頭に付く>Engineer(IEICE)

アソシエート技術者
(旧称:2級技術者)
電子情報通信技術者として基本的な知識を有し、技術の適用現場において特定の領域を担当できる専門的(初級)技術者
エキスパート技術者
(旧称:1級技術者)
電子情報通信技術者として専門的に高い技術を有し、技術の適用現場においてその責任者として担当者を指導し、的確な問題解決を図る能力を有する中堅的(中級)技術者
(上級技術者:将来検討) 電子情報通信技術者として専門的に深い知見と幅広い知識を有し、重要なプロジェクトの責任者に足る指導力と、主要な先端技術の発展に寄与できる能力を有する技術者
(特別上級技術者:将来検討) 国内トップレベルの能力と豊富な実務経験と見識を持ち、社会貢献活動にも実績を持つ技術者

3)CPDポイントの設定

それぞれの資格ランクを維持するために、所定の期間内に所定の活動ポイントを取得しなければなりません。当学会では、下表に示すように、3年間のポイント取得を評価基準としました。また、各資格ランクで最低限必要な分類別ポイント数を設けました。これは、若手の技術者では知識修得をベースとした研修の重要性が高く、一方ベテランの技術者では実務活動や学協会・社会への貢献活動を重視すべきと判断したためです。

 資格ランクの有効期限は3年間とし、3年毎に更新が必要です。但し、休職・異動等、止むを得ない事情でCPD活動ができない期間が生じた場合は、本人申請による1年間の有効期限延長を可能とします。その他、基準に満たない場合は、再び資格更新基準を満たした年度に、当該資格を更新できるものとします。

【資格ランクとCPDポイントの取得条件】

-
知識ポイント
実務ポイント
貢献ポイント
評価基準(取得/更新時共通)
アソシエート技術者
75ポイント以上
条件なし
条件なし
直近3年間のCPD活動による、知識ポイント75ポイント以上を含め、150ポイント以上の取得。
エキスパート技術者
条件なし
75ポイント以上
30ポイント以上
アソシエート技術者として、直近3年間のCPD活動による、実務ポイント75ポイント以上、および貢献ポイント30ポイント以上を含め、150ポイント以上の取得。
個別の活動内容に対するポイント数に関しては、導出根拠を科学的に明確にするためにAHP(Analytic Hierarchy Process)法を用いました。詳細は参考資料[意思決定支援ツールAHPの適用実例]を参照してください。この手法により、それぞれの活動の重要性と感覚的にも整合した配点ができたと考えております。なお、同じ名称の活動でも、その質の高低によるポイントの差が有ってしかるべきと考えられますが、当面はシステムの簡素化の為に、同一ポイントとして扱う事としました。また、別の学会が認証しているプログラムに関しては、相互認証する方向で検討中です。

4)CPDポイントの登録

CPD活動のポイントを登録するために、インターネットを介してホームページに登録するシステムを構築しました。このシステムは、会員各位の自己責任による登録を原則としていますが、場合により履修の証明を提出願う場合が有りますので、履修を証明する何らかの物を保管されるようお願いします。また、登録した内容に関して、登録証明書の発行も行います。詳細に関しては利用説明を参照してください。

5.認定資格の早期取得方法

掲記の資格ランクの評価基準を満たした場合、電子情報通信学会事務局に認定資格の取得を申請することができます。事務局は申請があった時点で、内容を確認し、CPD委員会に審査を依頼します。CPD委員会は申請内容の適正を確認し、理事会で承認します。その後は速やかに会長名にて資格認定書を発行します。従って、会員の皆さんは、今すぐにCPD活動を開始すると、直近3年間のCPD活動が評価基準を満たした時に、アソシエート技術者の認定資格を取得できます。また、学生員では学部4年からCPD活動を開始すると、最短で卒業後2年、もしくは修士課程2年修了時に、アソシエート技術者の認定資格を取得することが可能となります。アソシエート技術者資格を取得した後、引き続きCPD活動を3年間継続した場合は、エキスパート技術者の認定資格の取得も可能です。学生を直接、指導される先生方や、企業の若手研究者・技術者をマネジメントされる方々にも、CPD活動を是非奨励して戴き、支援して戴けるよう、期待します。

(ご参考)

技術士資格取得者向けCPDの換算方法

 参考情報として、日本技術士会のCPDと本学会のCPDの対応表を下表に示します。将来、技術士の資格を取得した場合、CPDを通じて技術士としての資質の向上に努める責務が生じます。今から本学会のCPD活動を進めて、技術士資格を取得する場合に必要となるCPDに換算できるので便利です。尚、技術士CPDの詳細は、日本技術士会の当該HPをご覧ください。

電子情報通信学会
技術士会ポイント換算
分  類
区  分
項  目
ポイント
(I)知識ポイント

(自分のための活動)
     
(1)知識研修

(参画,受講)
   
@学協会主催活動参画,受講(大会,研究会,セミナ,シンポジウム,講習会)
(Hは受講時間)
1P/時間 1P/時間
A民間主催活動参画,受講(講演会,セミナ,シンポジウム,講習会) 3P/件 1P/時間
B所属組織内研修,教育,セミナ参画,受講 5P/件 1P/時間
C所属組織内OJT参画,受講 5P/件 1P/時間(年間20Pを上限)
(2)知識修得  @資格取得・更新(専門分野;英検含む)[公的高度|公的基本・ベンダ系]

15P/件|10P/件

20P/件|10P/件(資格毎に20Pを上限)
A自己学習(専門技術雑誌の定期購読)[学協会認定|民間専門](最大6|4) 2P/件|1P/件 1P/時間(年間10Pを上限)
(II)実務ポイント

(所属組織の本来的な活動)
          
(1)対外発表   A論文発表(専門分野;投稿,掲載,査読有無) 5P/件 3P/時間(学協会での発表)
2P/時間(学協会以外での発表)
A論文発表(専門分野;投稿,掲載,査読有無) 5P/件 1P/時間
B著作,執筆活動(専門分野の書籍,教材;単独,共著,編著) 5P/件 3P/時間(学協会図書:件当り40P上限)
2P/時間(上記以外の図書:件当り40P上限)
(2)実務成果

(本業での業務経験と成果)
    
@専門的開発・支援業務 5P/件 2P/件(小規模開発業務)
5P/件(中規模開発業務)
10P/件(大規模開発業務)
10P/件(コンペ等技術力競争で受注した業務
Aプロジェクトリーダ業務 5P/件 10P/件(中規模開発業務)
Bプロジェクトマネージャ業務 7P/件 20P/件(大規模開発業務)
C特許出願・登録 8P/件 40P/件(基本特許)
20P/件(周辺特許)
D表彰を受けた業務上の成果(社内/社外,他薦/自薦) 10P/件 20P/件(学会、協会の表彰)
20P/件(国土交通省の局長表彰)
10P/件(国土交通省の所長表彰)
10P/件(民間団体、社内表彰)
(3)所属組織内付帯活動   @所属組織内技術指導講師(教育,講演,セミナ) 5P/件 2P/時間
A所属組織内成果発表(論文,報告,発表会) 3P/件 1P/時間(その他で計上)
Bプロジェクトの企画運営,助言,指導(オーガナイザ,コーディネータ) 5P/件 1P/時間(その他で計上)
(III)貢献ポイント

(世のため,人のための活動)
      
(1)学協会貢献活動    @学協会活動への参画(JABEE,本部,ソサイエティ,支部)[委員長・幹事|委員・幹事補佐] 7P/件|5P/件 3P/時間(JABEEの審査)
2P/時間(上記以外)
A委員会活動への参画(企画,運営,協力;論文査読も)[委員長・幹事|委員・幹事補佐] 7P/件|5P/件 3P/時間(JABEEの審査)
2P/時間(上記以外)
B標準化活動への参画(国際会議,寄書作成,ラポータ)[議長・ラポータ・エディタ|会議参加・寄書作成] 7P/件|5P/件 1P/時間(年間20Pを上限)
C学協会主催講演会,セミナ,講習会講師,教材開発 7P/件 1P/時間(その他で計上)
(2)社会貢献活動   @教育(大学),研究機関,国家プロジェクトにおける活動参画[委員長・幹事|委員・幹事補佐] 7P/件|5P/件 2P/時間|1P/時間
A教育(大学),研究機関主催の講演会,セミナ,講習会講師 7P/件 3P/時間
B民間主催の講演会,セミナ,講習会講師(対一般市民) 5P/件 1P/時間(その他で計上)

以上

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