The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers


国際規格化活動の諸問題

規格調査会委員長 高木幹雄

 本学会に規格調査会が置かれており,その事業としては,専門委員会による国際標準規格の審議,当調査会標準規格の制定,用語の調査作成等による電子工学及び情報通信に関する標準化の事業が規定にうたわれている.

 国際標準規格の審議では,IEC(国際電気標準会議)の各TCに対応する七つの専門委員会(SC3D:電子部品のデータベース,TC46:通信用伝送線,TC49:周波数選択及び制御用圧電及び誘電体デバイス,TC86:光ファイバ,TC93:デザインオートメーション,TC102:移動用及び衛星通信用装置,TC103:無線通信用送信装置)が置かれ,国際標準規格の審議を行っている.規格調査会発足当初の標準化には,先端技術に対して学会による支援を必要としていたが,電子部品や半導体等の成熟してきた技術に対しては,国のIECの審議団体とJIS原案の作成団体を一本化する方針と審議文書配布や会議開催等の学会負担削減の観点から工業会への移管が進められ,現在は,先端技術であって工業会では取り扱い難い分野や複数の工業会にまたがる分野の専門委員会が残っている.

 IECでは,新規規格提案に対して投票したP-メンバー国の多数が賛成し,かつ,少なくとも4か国(ISOは5か国)から専門家の推薦がないと成立しないというルールがあり,TC100(オーディオ,ビデオ,マルチメディーシステムと機器)は例外として2か国で認められているが,TC49,86,93等の先端的な分野では4か国からの専門家が得られずに,新規提案が不成立となる場合が生じている.これらのTCからその数をTC100並に緩めてほしいという要望が出され,最近もドイツから改善の意見が出ているが,一向に改善されていない.そこで,いささか邪道ではあるが,IECのPAS(Publicly Available Specifications)を利用して,取りあえず認知させ,3年後に国際規格とすることを検討するという方策を筆者が国内委員長を務めているTC49ではとっている.そのためには,しかるべき審議団体の規格とする必要があり,賛成多数で専門家不足のため新規提案が採択されなかった場合には,電子情報通信学会規格にしてPASとして提案している.取りあえずは,IEC活動を活性化するためではあるが,学会から国際規格を発信する場としたい.

 学会と国際規格化活動について,IEEEのように学会規格を作ることが規程には記載されているが,上記のPASのための例外を除いて実績はなかった.IEEEのような技術者集団が規格を作って発信するという体質の違いによるものと思われる.しかしながら,TC46を改組し,SC46Fを設けてマイクロ波受動部品を扱うことになり,マイクロ波研究専門委員会の協力が得られることとなったので,本学会から国際規格発信の場となることと期待している.また,財団法人自動車走行電子技術協会からITS規格標準化(ISO/TC204)の一部を委託され,ITS研究専門委員会委員長中川正雄先生の下で委員会を組織して検討されている.

 これに引き続き,更に,国際規格化活動を活性化したいと考えており,会員各位の御理解と御支援をお願いしたい.


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