The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers


グローバリゼーション

信越支部長 仙石正和

去る7月15日,新潟県の佐渡島で相川中学の生徒42名に本会主催の科学教室 「不思議がいっぱい科学の世界」が,多くの方々のお力添えで開催された(本 会のホームページ参照).優れた研究者による最新の通信機器を用いた実験を 含む講義に生徒の目がびっくりするほど輝いていたことを忘れることができな い.この時期同会場で,約450名参加の「回路とシステムおよびコンピュータ とコミュニケーション」に関する国際会議が開催されており,参加されていた 中国,韓国,日本の研究者にもこの科学教室に参加頂き"国際会議とは?"につ いて短時間であったがお話して頂いた.最初,中国,韓国,日本の研究者3名 にそろって無言で,中学生の前にお立ち頂き,中学生から3名の国籍を予想し てもらった.子供の直感はかなり正しいものであるが,驚いたことに予期に反 して3名共に外れた.外見からは全く国籍が判定できないことにびっくりし, グローバリゼーションが進んでいると改めて感じた.もし,使用言語が同じな ら同研究者達の国際会議についての考え方がほぼ同じであったので,更に区別 がつかなかったであろう.

 今日の情報革命は人類史上,4度目との説がある.1度目は5〜6000年前のメ ソポタミア文明時代の文字の発明,2度目は紀元前1300年ごろの書物の発明,3 度目は西暦1450〜1455年のグーテンベルグによる活版印刷の発明,そして4度 目は今日の情報通信革命である.情報革命はグローバリゼーションを伴ってい た.例えば3度目の印刷機の発明の際に起った様々な影響や変化について考え ると,印刷機によって,当初はラテン語だけであったが,ギリシャ語,ヘブラ イ語だけでなく英語をはじめヨーロッパ各地の日常言語の書物まで現われ広い 範囲に配付され,宗教革命を起し,教育制度にも大きな影響を与えたことは御 存知のとおりである.これは当時としては極めて大きなグローバリゼーション であったろう.「グローバリゼーション」の意味を,「世界が社会的に縮小する こと,及び一つの全体としての世界という意識が増大すること」と考えると,「 一定の基準を満たして国際社会の中に入れてもらいたいとか,自国(自組織) の他国(他組織)への影響力を高めたい」というような意味を持つ「インター ナショナリゼーション(国際化))との区別がはっきりする.情報通信革命に 起因するグローバリゼーションに対応するために,当然のことながら本会も 「国際化」を重要施策の一つにおいている.最近,本会も電子出版のトライア ルを始めた(本会ホームページのIEICE Online Journal参照).大いに期待し たい.


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