本学会が進めるべき重要な施策として,電子化,国際化,そして社会化があ り,これらはオープン化という言葉に総括されよう.社会化は私の勝手な造語 であるが,本学会が対象とする技術の社会的基盤性に鑑み,社会の様々な面で の交流を深め,活発化することを指している.
電子化,国際化についてはもちろん,社会化の面でも例えば,中高生に対す るエレクトロニクスや情報通信の手ほどきが有志によって進められ,学会とし て実効を挙げている.
さて,ここで取り上げたいのは,国際化の重要な柱である英文論文誌のこと である.末松元会長等が昭和 50 年ごろ当時の編集幹事として英文論文誌の発 行を提案されて以来,編集関係者の多大な努力により英文論文誌は着実に成長 してきた.この間の経緯は,前篠田庄司基礎・境界ソサイエティ編集長により 本会誌5月号(900 号記念特集号)に記載される予定である.
1998 年度の英文誌論文掲載総数は 1,120 編を数え,和文論文の 1,111 編 を上回る勢いである.これらの会員の研究成果は,国内に止まらず,海外でも 広く読まれて欲しいものである.これについても学会としての対策が常に検討 されてきた.一方,韓国や台湾をはじめとするアジア諸国からは論文投稿も活 発であり,ソサイエティによっては,アジアからの投稿数が国内のそれを凌駕 している.こうした状況を背景に,発展途上国の研究者・技術者に現地の価格 感覚で英文論文誌を購入して頂く方策も検討中である.
以上は学会という組織体としての対応であるが,論文執筆者個人としても英 文論文別刷を海外の同じ分野の研究者に積極的に送ってはどうだろうか."そ んなことは言われなくてもやっているよ"ということであれば結構であるが, 各論文を 50 人に送るとすれば,年間延べ5万人以上の外国人の目に触れるこ とになり,欧米も含めた海外からの論文投稿等との間にも良いフィードバック 効果をもたらすこととなろう.
他方,IEEE に目を転ずれば,アジア地区(region 10)の会員数はこの2年 間で 14% の伸びを示している.こうした勢いの IEEE との協調的競争もあり, 学会活動も御多分にもれず,というより先陣を切って,グローバリズムを受容 し,その荒波を超克していくことは時代の要請といえよう.