大学院博士課程の目的も,従来のような高度な研究者の育成ということにと どまらず,高度な専門的職業人の養成,すなわち,社会に出て先端的な技術開 発に携わることのできる人材の養成ということも新しく付け加えられた.その ため,共通基礎教育は学部で行い,より高度な専門基礎教育は大学院で行うと いう仕組みにもなっているし,またその上,学生に対しては,学業成績,研究 業績の程度によって修業年数をかなり自由に選べるようにもなっている.
例えば,学生が努力し,自らの判断でチャレンジしてくれば,最短,学部3 年,大学院博士前期(修士)課程1年,後期(博士)課程2年の計6年で博士 の学位(Ph.D.)を取得することもできる.したがって,学生は以前に比べれ ばいろんなチャンスが与えられているわけであり,自らの人生設計に従ってそ のチャンスにチャレンジしてくることが肝要である.要するに,教育の場も, これまでのように横並びの時代からパーソナルな時代へと変遷しつつある.
さて学会はどうかといえば,平成7年1月にソサイエティ制に移行後,現在, 四つのソサイエティのそれぞれが独自に運営されるようになった点が大きな変 革といえる.いわば学会のパーソナル化,分社化である.
現在,筆者は通信ソサイエティ会長としていろんな面を見させていただいて いるが,ソサイエティ運営委員会並びに幹事会の委員の方々の絶大なるボラン ティア活動によってソサイエティの運営が成り立っていることがよく分かる. その方々の労に報いるためにも,できるだけ早い時点でパーソナルでスマート な運営を軌道に乗せなければならない.
もう少し運営に慣れなければならないが,毎年1回のソサイエティ大会は, 同じ開催時期・会場にとらわれず,各ソサイエティそれぞれの事情によって開 催時期・会場を独自に設定し,できれば国際会議並の会場で行いたいものであ る.そのためには,資金調達の面もクリアしなければならないが,良い発表論 文集めの点も含めて,それこそ各ソサイエティ運営の手腕の見せどころであり, 学術面のみならず,学会にも経営センスが求められることにもなろう.そして, このようなことができるぐらいにまでなって初めて,より個性的な教育を受け た若い人材にもうける学会になるのではないかと思っている.