Q15
ある本に,携帯電話と脳腫瘍との関係が日本で話題になった理由に,1996年4月の英サンデータイムス誌が「モバイル電話があなたの脳を料理できる」という大見出しで,ワシントン大学ライ博士らの研究結果「携帯電話の電磁波が脳細胞の遺伝子を傷つける」を紹介した記事だったと書いてあり,更に具体的に,アメリカの研究者は,わずか2時間ほどの照射で携帯電話マイクロ波は脳細胞のDNA切断を67%も増加させることを実験で確認している,とも書いている.大変ショッキングな記事であるが,DNA切断についてICNIRP 1998指針の解説文での説明は.


A:
関係のパラグラフの全文は次のとおり.

 「要約すると,マイクロ波電磁界は突然変異誘発的でなく,したがってこの電磁界へのばく露ががんの発生を起す可能性はないことを示唆する多くの報告が存在している.これとは異なり,最近の幾つかの報告は,1W/kgのオーダのSAR値レベルのマイクロ波電磁界ばく露でげっ歯類の睾丸及び脳組織におけるDNA切断が生じた可能性があることを示唆している(Sarkarら1994, Lai とSingh 1995, 1996).しかし,ICNIRP (1996)及びWilliams(1996)は,これらの研究には方法上の欠陥があり,それが結果に著しく影響した可能性があると指摘している」.



Q
16:
乳児の頭に相当する直径10cmの大きさの誘電体性の球へ電波を当てたとき,球の電波吸収度は1,000MHz近辺で最も高く,発熱が最大となるマイクロ波特有のホットスポット効果があるといわれる.このことの健康影響は?


A:
確かに球中心付近で吸収電力(正確には局所SAR)が最大となるが,数値的にはICNIRP1998指針が与える局所SARの限度値2W/kg (表5)を超えないので,安全であると判定できる.

 このホットスポット効果は1972年にKritikosとSchwanにより発表されたもので,図1(a)は彼らの報告にある図を描き直したもの.周波数1,000MHzで,電界強度50.0 V/m(表4の条件Gの指針値)の電波が半径5cmの球に x=−5cm側から当たったときの球内各点の局所SARの近似値を示す.球の中心 x=0付近でピークを生じ,その値は0.41 W/kgと計算される.この値は一般人の局所SAR限度値を超えていない.ゆえに健康影響はない.




    (a) 1 S/mの場合


      x(cm)

      (b) 1.4 S/mの場合


図1 球の導電率が(a)1S/m,(b)1.4S/m の場合の球内部のSAR分布

 

 この図は,球の導電率が1S/mのときのものであるが,周波数1,000 MHzでの脳組織の導電率が1.4S/mという最新のデータを使って計算したものが図1(b)となる.球中心と端部 x=−5cmで0.16W/kgである.


 

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