電子情報通信学会誌 Vol.87 No.11 pp.912-918 2004年11月

伊藤康之 正員 湘南工科大学電気電子メディア工学科
本城和彦 正員 電気通信大学情報通信工学科
相川正義 正員:フェロー 佐賀大学理工学部電気電子工学科

Yasushi ITOH, Member (Department of Electrical & Electronic Media Engineering, Shonan Institute of Technology, Fujisawa-shi, 251-8511 Japan), Kazuhiko HONJO, Member (Department of Information and Communication Engineering, University of Electro-Communications, Chofu-shi, 182-8585, Japan), and Masayoshi AIKAWA, Fellow (Faculty of Science and Engineering, Saga University, Saga-shi, 840-8502 Japan).


Jisso技術を電気的にとらえる 伊藤康之 本城和彦 相川正義


abstract   “Jisso”とは日本語の実装(ジッソウ)という言葉がそのまま英語になったものであり,「広範囲な高密度実装技術」を意味する言葉として世界中で用いられつつある.Jisso技術はこれまで材料や機械的な側面からとらえられることが多かったが,今回は電気的な側面,特に高速・高周波の観点からJisso技術の現状の課題を明らかにするとともに,将来のJisso技術について展望する.
キーワード:実装技術,高周波,内部接続,パッケージ,集積化,多層配線,MEMS



■ 1. ま え が き

 Jisso技術のねらいは,

@
電子機器を取り扱いやすい,使いやすいものにすること
A
高集積・高機能・複合化された超小型半導体チップの特徴を生かす小型・薄型・軽量の電子機器を作ること

にある.例えば携帯電話を考えてみると,以前の無線機は大型で重く機能も単純であったが,最近の携帯電話は比較できないほど高機能・小型・薄型・軽量になっており,今では名刺サイズの携帯電話も販売されている.これらの電子機器の高機能・小型・薄型・軽量化は,電子機器を構成する電子部品及びJisso技術の飛躍的な進歩のおかげである.

 携帯電話やPentium IVのCPUを搭載したノートパソコンなど,小型・薄型・軽量だけでなく高速・高周波特性も要求される電子機器においては,これまでの材料や機械的な側面だけではなく,電気的な側面からもJisso技術をしっかりとらえていく必要がある.携帯電話が出現する以前の高速・高周波回路の分野では,正直いって実装技術が研究対象になることはほとんどなかった.実装技術はどちらかというとその場合場合に応じて対処するノウハウのようなものであり,共通的な技術として取り扱われることはほとんどなかった.しかし今ではBGA,CSP,MCM,SOP,SOC―どれがパッケージのソリューションなのか?アナログIC,高速ディジタルIC,RF IC,広帯域光IC,MEMS,―どこまで1チップが可能なのか?アーキテクチャをどうするのか?ICを混在させる場合,パッケージングをどうするのか?縦に横に三次元的に複雑に配線される多層基板の回路設計・シミュレーションをどうするのか?などなど研究課題が山積している.

 このような半導体ICの実装技術への要求にこたえるために,Jisso技術そのものを研究対象とする学会はもちろんのこと,それ以外の学会でもここ数年の間にJisso技術を積極的に取り扱うようになった.例えば高周波の分野では,米国IEEE MTTの論文誌で1997年から1999年まで毎年1回特集号が組まれ,内部接続及びパッケージング技術(1),集積化技術(2),多層配線技術(3) などのJisso技術の論文が集められた.またIEEE IMSの国際会議では,毎年Jisso技術についてのワークショップ,パネルセッション,レギュラーセッションが企画されてきた.一方,本学会の論文誌でも,1998年に「マイクロ波・ミリ波モジュール技術」の小特集号(4) でモジュール実装技術が紹介され,2000年と2003年にMEMS(Micro ElectroMechanical System)技術の小特集号(5),(6) が企画され,MEMSデバイスや材料関係が議論された.

 本稿では,これまで材料や機械的な側面からとらえられることが多かったJisso技術を電気的な側面,特に高速・高周波の観点からとらえ,Jisso技術をInterconnect(内部接続),Packaging(パッケージング),Integration(集積化),Multilayer(多層配線),MEMS(メムズ)の内容に分類し,現状の課題を明確にする.次に将来のJisso技術として,Jisso技術に特化したシミュレータ,ファウンダリサービス,及び製造サービスについて展望する.

 

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