■3. JUNETと電子メール

 世界的なネットワーク開発の流れの中で,1984年に日本の中で誕生したのがJUNET(Japan University(あるいは)UNIX Network)(5)というネットワークである.これは,1985年の電気通信事業自由化に向け,モデムの開発も進み,かなり性能の良い値段の安いモデムが出てきた84年の終わりごろ,その試作品を使わせてもらう機会があり,70年代から概念だけを垣間見ていたUNIXソースコードのモデムを使ったUUCPの機能を本当に使えるときが来たのである.その試作品で実験を開始したのが1984年の10月のことである.コンピュータの相互接続を電話を介してモデムダイヤルアップ接続をし,UUCPのプロトコルで行うという実験開始がJUNETの誕生である.最初JUNETは東工大,東大をつなぎ,更に慶応を加えた三つの大学をつないで実験を開始した.その三つの大学を電話回線でつなぎ,ファイル転送や電子メールのやりとりをできるようにしていった.

 JUNETで活動を進めていくうち,海外のUUCPネットワークであるUSENETとのニュースの接続,海外のUUCPネットワークのメールとの相互接続を実現し,実験の輪が徐々に広がっていった.海外との接続により高額な国際回線料金をどうするかなど,難しい課題は幾つもあったが,この実験をしていくために九州大学や北海道大学の先生方にもお願いして国内のネットワークを広げていき,大学を中心に短期間で日本全国に広まっていった.非常にたくさんの広がりが出てきた中で,電子メール,電子ニュースの二つのアプリケーションが発展した.一部ではファイル転送やuuxなど,実験やコマンドの実行なども行れてきたが,基本的には電子メールと電子ニュースの環境で発展を遂げてきた.

 JUNETが発展したことによって,大学に設置されているUNIXのコンピュータは相互につながり,日本のUNIXのエンジニアがJUNETで横につながったことで,いつでも新しい問題を考えるときにすぐにそれについてネットワーク上で議論することができるようになった.また,あるところでできたソフトウェアを全体で共有することができるようになった.この基盤ができたことにより,情報にかかわるコミュニティにとって,議論の場が提供され,新しいソフトウェアを共有する場所ができたということがJUNETの大変大きな貢献だった.それとともに,ARPANET,USENET,ほかのUUCPネットワークとの相互接続を急激に進められ,国際的な電子メールのやりとりもできるようになった.このように,研究者にとっては,国際研究環境として劇的な環境の変化をもたらしたのである.



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