電子情報通信学会誌

Vol.86 No.1 pp.12-16
2003年1月

中村英夫 正員 日本大学理工学部電子情報工学科
 E-mail nakamura@ecs.cst.nihon-u.ac.jp

A Comfortable Life:Japan's Mobile-Phone Culture and Transit System. By Hideo NAKAMURA, Member (College of Science and Technology, NIHON University, Hunabashi-shi, 274-8501 Japan).


快適な暮らし−携帯文化と交通機関− 中村英夫




■1. は じ め に

――快適な暮らしにつながる二つの福音――

 元気と自信を喪失した日本.ここで「快適な暮らし」というタイトルは奇異に映るかもしれない.しかし,世界がうらやむ文化と暮らしを我が日本人は享受しているのである.携帯文化.一見,若者の文化のように思えるが,その中をのぞくと,多彩さ便利さに驚く.世界がうらやむ理由が知れるというわけである.せっかくの文化である.多いにその恩恵に預かろうではないか.そしてもう一つ.日本人が当たり前と思っているが,世界がうらやむものに交通機関がある.交通機関の何が素晴らしいのか.必要なときに必要なサービスを受けられるという量的な恩恵もある.しかし,最もありがたいことは,信頼できるということだ.約束や計画を立てる際に,鉄道の時刻表を見たら,我々はそのとおり運転されると信じる.この鉄道輸送の正確さこそ世界が賞賛する技術なのである.しかも,インフラを極限まで駆使して大量輸送を実現しつつ正確な輸送を実現している.そのノウハウは,世界が真似ようにもまねのできないものだそうだ.

 快適な暮らしにつながるこの二つの福音「携帯文化」と「交通機関」について再認識しよう.
 なお,執筆に際してNEC(株),(株)NTTドコモ,JR東日本(株),(財)運輸政策研究機構から資料を頂いた.関係者に感謝しつつ本論に入る.


■2. ついに加入契約者数が世界一に

 我が国の情報通信の伸びはすさまじい.中でも携帯電話関連での実績は顕著だ.平成14年の通信白書によれば,インターネット接続ができる携帯電話加入契約台数は3月末で5,193万台,世界一となった(図1).なんと,契約台数全体の72.3%にあたり,韓国が続く.3位のフィンランドは1/5以下だ.圧倒的にほかの国をリードしている.99年2月にNTTドコモがiモードを開発して以来,同業他社がこぞって追随した結果である.世界におけるインターネット人口でも2位に入った(図2).日本では,20〜30歳代の占める割合と伸びが目立つ.この年代の携帯電話によるインターネット利用を裏付ける.そして,この携帯電話とインターネットの融合こそが,世界に誇る携帯文化を生み出した.

図1 インターネット接続ができる携帯電話加入契約台数は世界一

図1 インターネット接続ができる携帯電話加入契約台数は世界一


図2 インターネットの利用者数は No.2

図2 インターネットの利用者数は No.2


 性別,学歴,趣味を問わず今日の若者は,ストラップを付けた携帯電話機で,電子メール,乗換案内,音楽のダウンロード,ゲーム,チケット予約,オンライン・バンキング,案内地図のダウンロードなどなど多彩なサービスにアクセスしている.しかも,携帯電話は動き回りながらいつでもどこでもこれらサービスを享受できる.パソコンと違い故障や不具合に困ることもない.



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