電子情報通信学会会誌

Vol.85 No.10 pp.716-719
2002年10月

山口 央 徳島大学サテライト・ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー
 E-mail akira@anal.chem.tohoku.ac.jp
三澤弘明 徳島大学大学院工学研究科エコシステム工学専攻
 E-mail misawa@eco.tokushima-u.ac.jp

DNA Chip Using New Detection Method.
By Akira YAMAGUCHI, Nonmember(Satellite Venture Business Labolatory of Photonic Nano-Materials, The University of Tokushima, Tokushima-shi, 770-8506 Japan) and Hiroaki MISAWA, Nonmember (Graduate School of Engineering, The University of Tokushima, Tokushima-shi, 770-8506 Japan).




新規検出技術を用いた次世代マイクロDNAチップ


■1.緒     言


 生命の設計図であるヒトゲノム中には現在3〜4万種類の遺伝子が確認されている.これら遺伝子の発現状況や遺伝子塩基配列の多型(変異)によって薬剤感受性や病気のなりやすさなどの個体差が生じるとされている.個人の遺伝情報を診断することで,疾患の発症前診断による予防治療や薬害事故の防止が可能になれば,従来のレディーメイド医療は,それぞれの患者に適したオーダメイド医療,及び予防医療へと大きく発展することになる.

 遺伝子の機能,発現は相互に関連しており,遺伝子診断においては数種類の遺伝子のみを集中的に解析するのではなく,数百から数万の遺伝子からの情報を網羅的に解析する必要がある.数千から数万の遺伝子解析をチップ上で一度に行うDNAチップ関連技術の開発が,オーダメイド医療,予防医療の進展におけるキーテクノロジーといわれるゆえんはここにある(図1).


図1 DNAチップの技術を用いた遺伝子診断と予防医療

 DNAチップに疾病因子である遺伝子のDNAを複数固定化し,患者から採取した試料を導入,その患者が発病しやすい疾病を特定する.また,DNAチップを用いて患者個々人の薬剤感受性について診断することも可能である.このように特定された疾病因子に特化した治療を行うことにより,無駄な投薬による薬害事故を防止し,患者の金銭的負担が軽減される.


 DNAチップとは,塩基配列の異なる複数のプローブDNAを固体基板上に配列させたものである(図2).このDNAチップ上に検体DNAを含んだ溶液を滴下すると,検体DNAは相補的な塩基配列を有するプローブDNAとハイブリダイゼーション(用語)反応により二本鎖を形成し,固体基板上に吸着する.したがって,どこのプローブDNA固定化部位に検体DNAが吸着したのかを測定することにより,検体DNAの塩基配列や量を一括して解析することが可能となる(1)


図2 DNAチップの概略

 DNAチップでは,塩基配列の異なる一本鎖プローブDNAを固体基板上に複数固定する.蛍光色素で標識した検体DNAをDNAチップに導入すると,相補的な塩基配列を有するプローブDNAとハイブリダイゼーション反応により二本鎖を形成し,固体基板上に吸着する.各プローブ部位からの蛍光シグナルを検出することで,検体DNAの塩基配列,量について解析する.


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