電子情報通信学会会誌

Vol.85 No.7 pp.496-503
2002年7月

藤田博之 東京大学生産技術研究所マイクロメカトロニクス国際研究センター

Optical MEMS Application to Communication Devices.
By Hiroyuki FUJITA, Nonmember (The Institute of Industrial Science, The University of Tokyo, Tokyo, 153-8505 Japan).




光MEMSの通信デバイス応用




 MEMS (Micro Electro Mechanical Systems, 日本ではマイクロマシンと呼ぶことが多い)技術の光通信ネットワークでの応用について,その可能性と現状を紹介する.まず光MEMSの概要を述べ,光通信ネットワークで利用が期待される部所を論じた.デバイスの実例としてMEMS光スイッチについて,多くのポート数へ拡張が可能な三次元MEMS光スイッチと,ポート数は限られるが安価な二次元MEMS光スイッチを紹介した.更に可動ミラーを組み込んだファブリペロー干渉計に基づく波長可変デバイスや,可変減衰器の研究例を示した.

キーワード:MEMS,マイクロマシン,光スイッチ,波長可変デバイス,可変減衰器,通信

 

■1. は じ め に


 多くの方が,マイクロマシン(MEMS:Micro Electro Mechanical Systems) という言葉を耳にしたことがあるだろう.しかし,実際に身の回りでマイクロマシンが働いていると聞くと,驚く方もまた多いであろう.皆さんが運転する車には,エアバッグが装備されていると思うが,衝突時にそれを膨張させる信号は,マイクロマシン技術で作った集積型加速度センサが発するのである.また,安価で高品質のカラー出力ができるインクジェットプリンタも,印字ヘッドはマイクロマシン技術で作られる.更に,プレゼンテーション用のビデオプロジェクタも,可動のマイクロミラーアレーで画像を表示するものが市販されている.

 このように直接目に触れないところではあるが,マイクロマシンの実用化は,著しい速さで進んでいる.今後,情報通信関係だけでも,データ記録装置,無線通信用デバイス,小型電源,光通信用デバイスなどに応用が期待できる.本稿では,特に光通信用MEMSについて,その特徴,光通信ネットワークでの応用可能性,個別デバイスの例などを解説する.誌面の都合上MEMS技術そのものについては触れないため,成書(1),(2)や解説論文(3)〜(5)を参照して頂きたい.



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