堀 田 英 一


 OMSレイヤ(のコネクション)とOTSレイヤ(のコネクション)の間には1対1の対応があり,OMSレイヤがOChレイヤの各信号に波長を割り当て(波長)多重化する機能を持つのに対し,OTSレイヤはその波長多重化された信号を光媒体に応じた物理インタフェースに適合させる機能を持つ.
このように,OTNではOCh と呼ばれる光パスを上位レイヤに提供するが,ディジタルラッパはOChにおける伝送フレームのフォーマットである(図3). データNE(ルータ等)の信号をそのままディジタルラッパのペイロードにマップし,オーバヘッドとFEC (Forward Error Correction)のためのデータを付加して光伝送網の内部を伝達する. 光クロスコネクトではオーバヘッドを読み取り必要な処理を行う.ペイロードにマップされる上位レイヤ信号としては,SDH/SONETフレーム,ATMセルストリーム,GbE フレーム等が想定されている(図3).FEC方式の採用により,信頼性の向上と誤り回復による遅延の減少を図り, 上位レイヤに対して透過性と信頼性の高い伝送機能を提供するものとなっている.


図3 ディジタルラッパ:OTN OChのフレームフォーマット



■3. 波長単位の経路制御技術 GMPLS

 1999年にIETFでMultiprotocol Lambda Switching という作業項目が提案された.これは,MPLS(2)の label switched path(LSP)と同様に光パスの設定管理をしていこうというものである(ここでlambda とは波長を表し,lambda switching とは波長によるスイッチの意味である).その後,Generalized Multi Protocol Label Switching(GMPLS)と呼び方を改め,活発に検討が続けられている(3).具体的には,動的に光パスの切換を行う装置である光クロスコネクト(OXC)の管理方式を,MPLSのトラヒック管理のために確立された技術を基に開発することを提案しており,以下の三つを目標としている.

@ 自動的に光パスの切換が行われるような光ネットワークにおいて,実時間で光パスの設定をするための枠組みを与えること.

A 上記を可能とするような多目的の新しいタイプのOXCの開発を促進すること.

B OXCとラベルスイッチルータ(LSR)からなるような複合ネットワークの管理とオペレーションのための統一的な意味モデルを与えること.

 更に長期的目標として,DWDMの多重化機能をIPルータに取り込むことを挙げている.ジェネラライズドマルチプロトコルスイッチングを適用するネットワークの一つとして,ITU-TのOTNを挙げているが,それに限定されるものではないとしている.また,GMPLSにおいては一つの波長の中に時分割多重される複数のディジタル信号の各々をサブラムダと呼び,波長とLSPの間に位置する多重化の単位としている.

 この作業項目では,IP over ATMにおいて制御プレーンがIPレイヤとATMレイヤに分離していることが,管理の複雑さ・コストの増大を招いていることを教訓に,MPLS対応ルータ(ラベルスイッチルータ)の制御プレーンとOXCの制御プレーンを統合することを提唱している.
OXC内のMPLS制御プレーンについては次の二つの可能性を挙げている.

 @ OXC内のMPLS制御プレーンはラベルスイッチルータのMPLS制御プレーンとは独立のものである.
 A この二つは一連のものである.

 ここでOXC内のMPLS制御プレーンの主な機能は光パスの設定や開放の管理を行うことであり,GMPLS網内の複数のOXCはこれに必要な情報を互いに通信し合いこの管理を実現する.前者の選択肢においては,ラベルスイッチルータMPLS制御プレーンを用いた管理システムとは独立に,OXC内MPLS制御プレーンを用いた管理システムが構成されることになり,管理の複雑さ・コストの増大を招くことが予想される.後者の選択肢においてはGMPLS網のための単一の管理システムを構成することができ,管理の単純化とコストの削減につながると予測される.

  後者の選択肢においては,光ファイバ,その中の光パス,及び通常のMPLSにおけるラベルパスのすべてがある種のラベルパスとしてとらえられることになる.その場合,光ファイバの中に,複数の光パスが含まれ,更にその中に複数のラベルパスが含まれるというネスト構造は,通常のMPLSにおける(ラベルスタックによる)ラベルパスのネスト構造の拡張としてとらえられることになる(図4).



上記のGMPLSは作業項目が提案され,要求条件や抽象的なレベルでのアーキテクチャが提案された段階であり,具体的な実現方式については現在検討中で, 種々のアプローチが提案されている(4),(5).文献(4)ではCR-LDP(Constraint-based Routing LDP)等を拡張して,GMPLSにおける光パスの設定をする方式を提案している.各OXCはMPLSコントロールプレーンを装備しているものとする.OXCにおける光パスの設定を,MPLSにおけるラベルパス設定方式,LDP(5),のある種の拡張におけるマッピングメッセージの通信により実現することができる.

MPLSネットワークにおけるLDP によるラベルパス設定手順の概略は以下のとおりである.



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